瀕死のオンシジウム、オンシーが子株をつけた。
咲き終わりで、しわしわお肌のオンシジウムをスーパーの花屋で500円で買ってきたのは、この6月17日だ。
となりに並ぶ咲き始めの娘達は一鉢2800円だった。
脅威のディスカウントぶりを怪しむよりも、けなげさに惹かれ(ほんとは安さに惹かれ)買って帰ったのだった。
そのバレリーナのようなかわいい黄色い花はそれでも半月ほど咲き続けてくれた。
ワンコイン以上の幸福を与えてくれたのだ。
それからオレの介護生活は始まった。
オンシーに恩返しだ。
まず花の枝をきり、本体を解体した。
別に虐待したわけではなく、混み合った株を分けて住みやすくしたのだ。
そしたら何と16センチくらいの鉢に3つの株が、あろうことか黒いビニールポットのまま3個詰め込まれていたのだ。
虐待発覚!
ショックを受けたオレは児童虐待ホットラインに電話をしかけたくらいだ。
それくらいひどい扱いだったのだ。
こみあう根っこ達はまるで纏足状態。
直ちに素焼きの鉢を買ってきて3つに分けた。
水苔を敷き詰め、栄養ドリンクを2本づつ突き刺し、毎日水をやり介抱したのだ。
変化があったのは10日ほど前だった。
ん?なんか緑のとげが出てきたぞ。
そのうちだんだん大きくなってきた。
しわくちゃばあさんの根本から子株がでたのだ。
オレは涙し、植物の素直さに感動した。
植物音痴なオヤジの好意に応えてくれたのだ。
3月まで住んでいた新潟からの連れ子、チランジア(エアプランツ)2名にも子株ができた。
この子らの特長は根本から子が出るのではなく、中央突破だ。
チラ族はどうやらこの灼熱の新天地、名古屋が気に入ってくれたようだ。
なんだか自分がこの土地になじんだかのようでうれしい。
子どもはいい。
未来を感じる。
自分の未来が少なくなってきたからこそわかることがある。
でもオレはこんなにカラダを張って子を育てることが果たしてできるだろうか。
「そんなんきまってるやん」(あたりまえ、の意)
というオカン族の声が聞こえる。
オヤジはまだまだ勉強中だ。
嗚呼、ボタニカル!