6日午後から発生したソフトバンクの通信障害は、世界11カ国でほぼ同時に発生していたことが判明した。異例の大規模障害の詳しい原因は分かっておらず、利用者に衝撃が広がりそうだ。ソフトバンクは今月19日に上場する予定で、ソフトバンクグループ(SBG)から携帯子会社として独立を目指す直前のトラブルとなった。投資家へのイメージダウンも避けられそうにない。

 「ソフトウエアに何らかの不具合が起きたとしか言えない」。ソフトバンク関係者は6日夜、原因についてこう繰り返した。交換機を製造したスウェーデン通信機器大手エリクソンの広報担当者もロイター通信に対し「一刻も早く問題が解決するよう取り組んでいる」と語った。

 ソフトバンクは2006年、英ボーダフォンの日本事業を買収し、携帯電話市場に参入した。当初は競合他社に比べてつながりにくいなどの指摘が一部であったが、基地局の増強などを進め、通信品質を高めていた。それだけに、今回の障害については利用者から「上場直前にこんなトラブルがあるなんて」と落胆の声が上がった。

 親会社のSBGはソフトバンクの上場で調達する資金により、人工知能(AI)やロボットなど、今後成長が見込める分野への投資を加速する方針だ。ソフトバンクは国内の通信事業に専念し、安定的に利益を生み出す役割を担う。だが、今回の大規模障害が上場時の株価などにも影響する懸念がある。

 また、次世代の移動通信規格「5G(ファイブジー)」の商用化が20年から始まり、通信業界はモノとモノがつながるIoT(モノのインターネット)が本格化。自動車の自動運転や遠隔医療など、異業種と組んだ新しいサービスの提供も期待されている。

 新サービスを展開する上でも「通信の安定性確保と、いざというときのバックアップ体制は必要不可欠」(アナリスト)。通信システムの脆弱(ぜいじゃく)さを露呈したソフトバンクにとって、原因究明と再発防止が喫緊の課題となる。利用者や投資家に対し、社会インフラとしての信頼を回復しなければ、SBGの今後の長期戦略にも影響を与えることになりかねない。