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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

#184 江川の助っ人一発病

2011年09月07日 | 1981 年 
   

プロ入り後しばらくの間、江川はマウンド上では意識的に無表情を装って淡々と投げるだけで喜怒哀楽の無い鉄仮面と言われていました。好投してもKOされても試合後に理路整然と投球を振り返る姿にファンもアンチも物足りなく思っていました。そんな江川が3年目になって変わりました。彼本来の打者を捻じ伏せる投球が蘇るにつれて表情が豊かになり感情を表すようになりました。

「球がよくキレてスピードが乗って三振の山を築いていると、自分の投球にポーと酔っちゃいます。この前の阪神戦がそうでした」2~3回の5連続を含め3回迄で6奪三振。いったい幾つ三振を奪うんだとネット裏がザワザワしだした途端、"ダメ害人" と酷評されていたオルトに軽々と勝ち越し3ランを被弾。自分の投球に酔った代償なのだ。

江川は外人に一発を喰らうケースが多い。「完全に力負けです。同点になって心理的に追い込まれたこともありますが、冷静さがもう少しあったならあの一発は避けられたかもしれません」「(外人選手に)ムキになるというか、自分のストレートが通用するかを確かめてみたい気持ちがムクムクと湧き上がるんです。変化球で緩急をつければ楽に討ち取れると頭では分かっているのですが」「打たせてとるのも投手の醍醐味かもしれません。でもボクは速いボールで勝負できるうちは速球で勝負していきたい。そう思ってくれているファンも多いと思うし、それで勝てれば言うことないのですけど」 オルトに打たれる直前に珍しく江川がマウンドの上で大きく笑った。佐野を会心の速球で三振に討ち取った時だ、その直後に劇的一発を浴びて落胆の表情に一変する。笑顔にファンは喝采し、落胆する姿にアンチは歓喜する。江川は間違いなくプロ野球界を面白くしているのだ。



江川の外国人選手に対してムキになる傾向はその後も直ることなく続きました。6年後のシーズン途中にボブ・ホーナーがヤクルトに入団しました。ホーナーはドラフト全米1位でアトランタ・ブレーブスに指名されマイナーを経験する事なくメジャーデビュー。その試合で本塁打を放つなどして新人王を獲得後も順調に成長しブレーブスの四番に納まりました。1986年オフにFA宣言したものの年俸高騰を嫌うオーナー達の結託によってメジャーから締め出されて日本に来ました。阪神戦で3連発を放ってホーナー熱で日本中が湧き上がった時に江川と対戦しました。結果は3三振。全盛期を過ぎて往年の速球は影を潜めていたがホーナーと対戦する姿は、かつての助っ人相手にムキになって投げていた頃の江川でした。

江川の自惚れさのエピソードを同学年の阪神・掛布が語った事がある。オールスター戦でベンチに隣り
同士で座っていた時に江川が「やっぱりプロって凄いな、高目のボールを空振りしないもんな」と掛布に
真顔で言ったそうです。高校・大学を通じて本気で投げた速球は、ヒットどころかファールにされた事も
なかったのでプロも大した事ないだろうとタカを括っていたそうで、謹慎期間に登板した2軍戦で名前も
知らない選手にも打たれて「このままじゃヤバイ」と気持ちを引き締めたと聞かされた掛布は「コイツは
次元が違う」と思ったそうです。野村克也氏も好投手ほど自惚れ屋が多いと言ってましたが江川も例外
ではなかったようです。



プロ入り最初に打たれたのがスタントンで、逆転3ランがラインバックとデビュー戦から外国人選手とは
浅からぬ縁があったようで・・まぁ若菜にも一発喰らってますけど。

      

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