・たとえば、何かの機関を作って、
「老人のお守り何時間お願いします」とか、
「子供を預かって下さい、何時間」
「夕食何人分。予算はこれくらいで」
などと申し込むと、
応じられる人が申し出る、
というようなことは、実現しないだろうか。
パーティ出張料理という商売ができるくらいだから、
労力出張というのも考えられると思うものだ。
私がこんな夢を見るのも、
働く女たちが、それぞれ個別的に、
職場と家庭の維持に苦労し、
その苦労や知恵が、
ちっとも有機的に社会に発展してゆかないのが勿体ない、
と思うものである。
また家庭にいる妻たちの、
ありあまる活力やキャリアを埋没させておくのも勿体ない。
家事は特技であるから、
奉仕せずに報酬を求めればよいので、
そんな形で、女が女の応援ができないものだろうか。
私は身近の娘が、
いつまでも自分の家庭の中にだけ、
とじこもっていてほしくない、と願うあまりに、
こんなことを思っている。
おいしい料理の腕があるなら、
その愛情を分かちひろげてほしい。
自分の子をお守りするついでに、
よその子も。
家庭は夫と妻で支え合い協力して経営してゆくものであるが、
夫婦の力にあまることが現代では増えてゆく。
女どうしの助け合いが、
これから必要になるのではなかろうか。
働く女と専業主婦の輪がうまくかみあい、
お互いに補い合い、助け合うことができれば、
と私は夢みている。
それから、
独身で働いている女性たちの暮らしにも、
私は夢がある。
私は、女性は自立すべきだと思っていたから、
その身近の娘を、大学時代からアパートへ住ませた。
卒業して就職したときも、
その町のアパートで一人暮らしをさせた。
親元や保護者の家から通わせると、
炊事洗濯をつい人に頼るので、
まるで亭主関白のようになってしまう。
そんな暮らしを若い女がしていて、
ロクなことになるはずない。
世の親は若い娘を一人暮らしさせておくと、
監督不行き届きで危ない、と思うらしいが、
あれは、むしろ、親元においておくほうが危ない。
業務上横領の罪を犯して、
男に貢いでいたハイ・ミスの女たちは、
たいてい、親元にいた人たちである。
男と旅行してきても、
親は気づかないことが多い。
そんなわけで、
私はその娘に生活力をつけるべく、
ずっと一人暮らしをさせていたのだが、
何分にも、サラリー自体がひどく安い。
男女共学の大学で同じように四年間学んでいながら、
男子のサラリーと女子のサラリーとでは、
ずいぶん差がある。
二、三ヶ月たつと娘は音をあげて、
「どうしてもやっていけないから、
アパートの家賃だけでも援助してほしい」
といってきた。
その時、私はアメリカであるという、
ルームメイトを思い出し、
女の子二人で暮らすとか、
三、四人で暮らすとかの方法はとれないものか、
と考えた。
家賃だけではない、
生活費も光熱費も、折半したら、
うんと安くあがるのではあるまいか。
女の子は一人暮らしを楽しんでもよいし、
条件となりゆきで女どうしが住む、
ということを試みてもよいように思われる。
経済的な利点のほかに、
一人暮らしに疲れた女には、
とても大きな心のなぐさめになりそうな気がする。
もちろん、それも個人的事情により、
お互いが大人として成熟した個体でないと、
共同生活など出来ないだろうけど。
もしこれがうまくいけば、
身内と暮らすより、もっと快適な、
人間らしい家庭になるかもしれない。
女と女、女どうし。
(次回へ)