JAZZを聴きながら ふたたび

恥も顧みないで再々開、よろしければお付き合いを

他人の言い合いも蜜の味

2007年09月13日 | g-i

人間というものは、いずれ何処かに悪魔を飼っているもので、「他人の不幸は蜜の味」的感情は時折表れるものです。
例えば、友人S君が、奥様にやり込められる姿を私は何処かで楽しんでいる風がありますし(S君、ごめん)、誰かがギャンブルで大負けしたと聞けば「バカだねえ~~~」と言いながらほんの少し喜ぶようなところもあります。芸能人のスキャンダラスな話を面白く思うのも、まさにそれでありましょう。

先日から読み始めた平岡正明氏の『毒血と薔薇 ~コルトレーンに捧ぐ』は、コルトレーン四十回忌追悼と銘打たれてこの夏に発刊された本です。
平岡正明氏といえば、雑誌『ジャズ批評』創刊巻頭記事「ジャズ宣言」(1967年発刊)発表以来、ジャズ批評家として活躍されていますが、学生時代は「共産主義者同盟(ブンド)」の一員として60年代安保闘争に係わり、その後も新左翼の雄として活動もされていました。
ですからでしょうか、その批評活動はジャズに留まらず、革命・犯罪・空手、あげくは落語・歌謡曲にまで活躍の場を広げて行かれました。
私も幾つかの著書を読ませていただきましたが、私的には好きな評論家の一人であります。

今回のこの『毒血と薔薇 ~コルトレーンに捧ぐ』を買ったのは、当然、書き下ろしの文章である第一部「毒血と薔薇 ~コルトレーンに捧ぐ」を読みたくてでありましたが、
この本にはもう一部、今回書き下ろしの章があります。それは、第四部「寺島靖国をぶっ壊す」なる文章です。

寺島靖国氏といえば、こちらも吉祥寺のジャズ喫茶「メグ」のオーナーであり、第一線で活躍されるジャズ評論家でいらっしゃいます。

他人のジャズ書の書評に、「ジャズ・ファンには二種類あって、この人みたいにはすっかいに聴く人と私のように真っ直ぐに聴く人間がいるんだ」と書くジャズ喫茶店主の神経って、どうなってるんだ?
嫉妬だ。俺のジャズ論に対する寺島の言辞は、ことごとく、吉祥寺の一角に彼が所有するアメチョコ細工のジャズ幻想をぶっ壊されるプチブルの不安である。

なる、平岡氏著『昭和ジャズ喫茶伝説』に対する西日本新聞に載った寺島氏の書評に対しての痛烈な批判から始まるこの文章。

平岡氏の寺島氏に対する嫌悪は、基本的にこの西日本新聞の書評に始まったらしいのですが、『スイングジャーナル誌』で寺島氏が連載されている「寺島靖国 日常生活する」の2006年3月号の文章で、この件に関して再度の投稿があったことにさらなる嫌悪感をもたれ、以後、スイングジャーナル誌上で壮絶なバトルを繰り広げられたのでありました。
今回の第四部「寺島靖国をぶっつぶす」なる文章もトータル44ページに及びます。


SJ.2006.3月号

・・・・・・・・ここで、話は戻るんですねぇ

お二人にはたいへん申し訳ないのですが、私はこの論争を楽しんでいる感があります。他人の不幸も蜜の味かも知れませんが、他人のもめ事もほんのり蜜の香りがしてしまうんです。
さらに、もめ事の魅力だけでなく、どちらも現代を代表するジャズ評論家でいらっしゃるわけですから、お二人の言い合いもまた、じつに内容のある言い合いに思えてきて楽しいのです。
奇しくも『毒血と薔薇 ~コルトレーンに捧ぐ』の後書きに、「東京大学のアルバート・アイラー」の菊地成孔氏が「平岡先生。お言葉ですが、先生は寺島先生をぶっ壊す事は出来ません。なぜならば」という文章を寄せ(何故菊地氏が出てくるかは、二人の論争に「東京大学のアルバート・アイラー」に関してのこともあるもので・・・詳しくは同書をお読み下さい。)

前略
「ぶっ壊す」か何か言われちゃって「何だか先生方楽しそうだなぁ。モダンジャズ批評界は良いなぁ」と思うわけです。ですから巻き込まれて良い迷惑だとか、仲良くやって下さいなんて言う気は毛頭ありません。とことんやってやってやりまくって下さい。
中略
寺島先生は、年下の平岡先生を「平岡(おとう)さん」と呼び、平岡先生は「寺島」と呼びます。今度会ったら「おい靖国!」と呼んでみるのは如何でしょうか。

そうだ!やれやれ!けっこう内容あるし楽しいぞ!

やっぱり私は不謹慎極まりないゲス人間でありますね。

さて、今日の一枚は、スインギーな白人バイブ奏者、テリー・ギブスです。
ギブスの魅力というと、ミルト・ジャクソンとは対照的な、ちょっとメタリックな音にきこえる、そこだと思います。

ピアノレスのこのアルバムは、ケニー・バレルのギターとギブスのバイブのマッチングが、なんともいえない心地よさを与えてくれる、私的にはギブスのベスト盤だと思う一枚です。
卓越した技巧もさることながら、そこから生まれる豊かなアドリブをお楽しみ下さい。

TAKE IT FROM ME / TERRY GIBB
TERRY GIBBS (vib) KENNY BURRELL (g) SAM JONES (b) LOUIS HAYES (ds)

1.TAKE IT FROM ME
2.EL FATSO
3.0GE
4.PAULINE'S PLACE
5.8 LBS., 10 OZS.
6.GEE, DAD, IT'S A DEAGAN
7.ALL THE THINGS YOU ARE
8.HONEYSUCKLE ROSE



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2 コメント

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67camperさん (バブ)
2007-09-15 10:51:51
TBありがとうございます。

黒人しか聴かないとか言うヤカラが昔いまして、そっとこのアルバムをかけたら、「いいじゃん」って(笑)

けして黒っぽくないと思うんですけど、良いものは良いんですよね。
バレルとのコンビ、名盤だと思います。
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GIBBSの最高傑作 (67camper)
2007-09-14 05:29:03
バブさん,こん○○わ。
このギブス良いですよね。

結構古い人で、エマーシーにも録音がありますよね。このインパルス盤は60年代ですがメンバーも素晴らしいし,自分もギブスのベストと思います。

ブルージーなバレルの参加が一番嬉しいですね。
ホーンがなく地味ですが一押しの名盤と思います。

TBさせてくださいね。
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