曹達記

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さようなら、コロコロイチバン!連載のポケスペ

2025-02-22 23:02:00 | ポケスペ
2025年2月21日、ポケスペ公式Twitterアカウントから衝撃の発表があった。
2025年3月以降、コロコロイチバン!(以下コロイチ)での掲載を取り止め、web連載に完全移行するというのだ。


この発表には驚いたのだが、一方で予感させるものはいくつかあったと思ってもいる。
これまで頑なに最新章をweb掲載してこなかったのに、2024年になってwebでの月遅れ掲載を始めたのがその最たるものであった。
更に月平均発行部数が20000部を割っていて、雑誌の将来そのものが怪しかった。極めつけに1月発売号が明らかにこれまでより薄くなっており、雑誌としての危機的状況が明白であった。
ゆえに、こういう結果に至ったことはやむを得ないし、プラスになる側面もあると自分は考えている。
そこで、これを機に自分の思うコロイチ連載での利点と問題点を整理し、web連載に向けた展望を記載していこうと思う。



コロイチ連載でのメリットと軛

まず、紙の雑誌媒体でのメリットは「あらゆる世代の目に触れる機会が多い」「付録という形でグッズが出しやすい」「紙なので消去されず残る」「〆切がタイトなので守るインセンティブが働く」ことである。これはあらゆる紙の雑誌に言えることなので、コロイチ特有のメリットとは言い難い。
自分の見るコロイチの雑誌としての特徴は、小学生向けギャグ漫画が多めであることと、付録の多さである。雑誌のサイズからして学年誌の引き継ぎという側面があり、ゆえに付録が多い構成なのだと個人的には思う。(2025/2/22 事実誤認のため一部修正)

ただ、ポケスペという作品にはコロイチという雑誌のカラーがあまり合っておらず、作品の魅力を制限する必要があったと思う。いわば、「軛(くびき)に繋がれた」状態にあった。その側面について以下で詳述する。

そもそもポケスペの魅力として自分が挙げるのは、ゲームからの独自解釈と良質なバトル、更に多面的な視点から話が進む群像劇としてのシリアスなシナリオである。これらの要素はギャグ漫画多めのカラーとはあまり合致しておらず、明らかに浮いていた。特に連続性の高いシナリオが月1で展開されるのは、低学年層にとって厳しいものであったと思われる。

更に小学生男子向けの雑誌として、「女性キャラの活躍を多く出しにくい」という側面もある。これもまた、それまで女子図鑑所有者が主役の一員であったポケスペの作風と食い合わせが悪かった。露骨なのがホワイト・ムーン・盾シルドミリアの扱いで、バトルでの活躍はほぼなかった。ムーンに至っては手持ちを6体揃えられず、その反省からか以降の2人は物語の初めから手持ちを揃えているという有り様。
ダブル主人公が基本線なのに、男子図鑑所有者にばかり活躍が寄ってしまう事態は、話のバランスを著しく悪くしていると思う。仮に通巻版で追加するにしても、その書き下ろし作業だけで時間がかかってしまい、更に遅延してしまう。

そして紙媒体であるがゆえの最大の制約が、毎月載せられるページ数の制限である。
学年誌時代は3号それぞれ14P程度あり、月に載せられるページ数は合計42Pあった。それがコロイチ単独になると25Pであり、単純計算で4割の減少だ。ポケモンファンでの縦断連載が消滅した14章以降、このページ数の減少は相当な痛手になっており、作品のクオリティを損なう事態にまで至っている。
ページ数の減による問題はこれだけではない。ゲーム本編の世代交代が3年に早まった影響で、XY以降ずっと最新の章が通巻版に載せられない問題が続いているが、それをページ数の減が助長しているのである。
3年でコロイチが確保できるページ数は25×12×3=900程度であり、それにより描きたいことが十分に描けなくなった結果、ポケスペは通巻版で後から補完することを前提にして歯抜けの内容を載せている。しかしそれは、通巻版が内容の不足している章に到達した際に、書き下ろしの時間を取らなくてはならないことを意味している。
現に、コロイチ単独の連載章であった14章に到達する65巻は、未だに発売の目処が立っていない。13章ラストから14章への繋ぎをどうするのかという問題もあるのだろうが、これまで書き下ろしのあった通巻版はほぼ確実に発売日の遅延が起きていたことを鑑みると、14章の補充に必要な書き下ろしに準備を要している側面も大きいだろう。
これで通巻版の発行が遅れると更に追い付けなくなってしまうことは明白なので、ページ数の軛は非常に大きな問題だったと考えている。

おまけに、コロイチは小学館の各種雑誌の中でも特に宣伝が弱かった。精々おはスタの1コーナーでの宣伝がある程度であり、インターネットにおける宣伝では論外の一言に尽きる。
以前↓のようにポケスペの宣伝について怒りをぶつけた記事を書いたのだが、

ポケスペの情報公開体制への諸々の怒りについて - 曹達記

2023年ももうすぐ終わろうとしているが、今年のポケモン関係の出来事で一番心を揺さぶられたのがポケスペ剣盾編からSV編への移行である。この件について、自分が改めて不満...

goo blog

そもそもコロイチ掲載の漫画は全般的に宣伝が何もない。現状のポケスペですら作品公式アカウントやサイトがあるだけ恵まれている、と言える悲惨さである。
勿論、担当編集や漫画家個人の技量に依る部分もあるのだろうが、ポケスペ公式アカウントの運用は「コロイチの漫画として標準的な宣伝でよい」と思っているようにしか見えない。
インターネット以外でも、柱の予告文がいい加減だったり次号予告でなにも書かなかったりと、誌面での宣伝すらもいい加減な姿勢が多く見られた。
改めて、このような宣伝姿勢については強く非難したい。

ここまではコロイチ連載の各種事項について指摘したが、次にWeb連載での展望について述べる。

Web連載で変わるであろう点

まず、ページ数の制約が解除されることは大きな利点である。先述したコロイチ連載時の問題点の中で、一番大きなものだと考えているのがページ数だ。学年誌時代と言わないまでも、せめて月35Pは欲しい。これだけあれば3年で1000Pは確保できるし、先行版単行本も7巻は出せる。
もっと欲を言えば、月60Pぐらい描かないと通巻版での書き下ろしはなくせないと思うのだが、さすがに厳しいだろう。
そこまで行かなくとも、とにかく月に出すページ数を増やすことが、尺不足の問題を解決する最良の手段であることは間違いない。第一にそこを解決するよう取り組んでほしい。

また、雑誌のカラーに合わせたストーリーの制約もなくなる。
スカーレットは元々コロイチらしからぬ女子主人公の扱いなので、ストーリーが大きく変わることはないだろうが、それでも本来の作風をより深めることができるだろう。
さらにSVはポケモン原作において初めて「人間の死」を取り扱った作品でもあるので、終盤における各種展開(無論、ポケスペとしての改変はあって然るべきなのでやるかは分からないが)をコロイチでやれるのか微妙なところもあった。そこの問題も解消されたと言える。

そして、Web連載に全面移行することで、本誌購入組が感想をすぐに書けないという問題も解消される。コロイチは人気の雑誌では決してないため、本誌購入者が非常に少ない。
ゆえに本誌購入組は感想を大っぴらに書きづらく、ある程度ぼかして書く習慣が根付いてしまった。剣盾編の時期よりはマシになったとはいえ、盛り上りに水を差していたのは事実なので、これが解消されれば連載そのものの盛り上がりが加速度的に進むと思う。

このようにメリットは大きいと考えているが、懸念点もある。

〆切が緩いWeb連載では、掲載をいくらでも先送りできてしまうことがまず一つ。以前Web連載していた11章については、2018年2月から1年以上の休載をしていたため、同じことがSV編で起きないか危惧しているのだ。
何事もそうであるが、〆切がしっかりしていればそれに向けて仕事を終わらせる思考に向かうものである。それが緩いと、いくらでも話をこねくり回す時間が作られてしまう。先生方の年齢や通巻版の遅れを鑑みて、〆切はなるべく守って話を出すようにしてほしい。

もう一つは、Web連載の広まりはSNSに大きく依存していること。特に日本人利用者の多いTwitterが、株を持っている人間の行いのせいで大変不安定になっていることが懸念の最たるものだ。
Twitterではポケスペ関係のコミュニティが形成されているが、他のSNSではイマイチ作れていない。もしTwitterが突如動かなくなってしまったら、どのように更新を告知するのか。代替手段をちゃんと考えているのか不安である。
そして、Web連載は本来のターゲット層である小学生へのアプローチも難しい。コロイチの発行部数は既に危険水域に達しているので、コロイチのままなら子供へのアプローチが確保できるとは思わないが、それ以外の雑誌に移籍するという手はなかったのかと思いはする。
どうもこれまでのポケスペ編集担当の態度からは、マーケティングリサーチをしているのか疑問符がつく以前に、そういう次元ではない意識の低さを感じている。
今後一般の目に触れる紙の雑誌という「保険」が消滅するため、より一層広報のやり方に工夫が必要だと思うので、今からでもちゃんと考えていて欲しい。何年文句を言っても改善する兆しが見えないゆえ、無駄な希望かもしれないが。

更に、グッズの展開はより絶望的になった。
ただでさえグッズ展開に恵まれないポケスペであるが、付録という形で僅かなグッズはあった。しかしWeb連載の漫画は付録をつけるのが不可能で、精々単行本につけるしか手段がない。ここはポケセンで発売する等の方法を考えてほしいのだが、そもそも株ポケのポケスペに対する態度の冷淡さからして、現実的には不可能である。
まずはあの冷淡な態度を何とかすることからスタートしなければならないが、それもまた編集担当の度量次第になっているわけで、前途は多難だ。

最後に

自分としては、コロイチでの軛に対して否定的な意見を強く抱いている。その内容については先述した通りなので敢えて繰り返さない。
ただ、2010年に学年誌が休刊になった際に、ポケスペを拾ってくれたのは事実だ。リアタイ読者ではないので恩義は特に感じていないが、人によってはそれを強く感じていることもあるだろう。
それに、自分もかつてはコロコロコミック本誌の読者だったから、コロイチがそれに近い層を狙っている以上、カラーがそうならざるを得ないことはよく分かる。
なのでコロイチの方針も理解しているし、それに合わせなくてはならなかったのも仕方ないと感じている。
むしろ、他の雑誌に縦断連載できていれば、そのような軛から逃れることもできたはずなのだ。不幸だったのは、14章以降縦断連載をやれなくなったのに、それに対する対策を何らしてこなかった編集担当の失策により、軛による歪みが強く出るようになったことである。
だから、先に挙げた軛はコロイチが悪いというより、コロイチ一本に絞らせた編集担当の責任がほとんど全てだと自分は思う。

今にして思えば、SV編スタート時に連載の告知が遅かったことも、もしかしたらいきなりWebへの全面移行を行う予定の名残だったのかもしれないし、それを行わずに1.5年近く連載を続けていたのはコロイチ側の温情だったのかもしれない。先行版単行本の背表紙からコロイチの文字が消えたのも、移籍を前提としていたのだろう。
だから、今としてはこうして自分の意見を吐き出してコロイチへの感情を整理し、ポケスペ28周年を向かえたい。

最後に、15年間ポケスペに連載枠をあげてきたことについて感謝の意を捧げて、本稿の筆を擱かせていただく。

記事をお読みいただきありがとうございました。
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