昨年の春に行われた普段着の茶会で、正客としてお出で頂いたSさんに、今度はお招きを受けて第2回の「普段着の茶会」が催されることになった。「今度は着物で行かないとね。」なんて、軽い約束めいた話になっていたので、タンスから着物を引っ張り出して見る。何が何でもこの時期は単衣だろう。私の夏帯はあまりに姐御風だし、色だけでも青いのにするかと、並べてみた。半襟は着いてない。着物の衿も折れてない。準備不十分で悪戦苦闘しているのに、仕事の携帯は鳴る鳴る。焦りと汗でダクダクになりながら着付けをした。ああなんて事だ。昔はあちこちに補正のタオルやらを入れないと形が整わなかったのに、今じゃ帯の長さが足りないのだもの。どんだけ太れば気が済むのやら。
と、まぁ、自己採点65点の着付けで、大急ぎで出かけた。人工の路地を通って待合いの部屋に入る。眞正庵さんは清楚な着物姿なのだが、他のメンバーは洋服のままなのだ。そう言えば一緒に入ってきたKさんも洋服だった。あんなに着物にしようねと言ったのに。当日は暑くて汗を拭きながらのお茶会で、本当はそれが正解だったのだが。
亭主のSさんは、奥様も娘さん達も裏千家で、「普段着のお茶会」なんてとんでもない。正真正銘、正式で固められたお茶会だった。待合いであられの入ったお湯を頂き、茶室にはいると床の間とお道具を拝見し、席に着くとご挨拶が始まり、懐石料理のお膳が一人一人に配られた。向こう付けにご飯と汁物が付いていた。すると亭主が漆の朱塗りの杯とお酒を持って現れた。本式の懐石料理には日本酒も付くのだそうだ。ほんのちょっぴり頂いて、ご飯椀の蓋を開けると、2口か3口で食べられるほどの量が長細く盛られていた。お汁は、赤と白味噌仕立ての汁にカラシの載った茄子が入っていた。向こう付けは鯛の昆布締めで、どれも美味しい。奥様達の手料理と伺ったが、料亭並みの味である。お代わりをと、おひつが回され、盛るのにも作法があるのだと言う。3品で充分にお腹が一杯になったのに、煮物、焼き物、白あえ、お汁も品が代わり、次々と料理が運ばれてくる。まるでフレンチのフルコースのようだ。一口吸い物、漬け物、栗と蟹、最後に炒ったお米の入ったお湯で締めになった。どうしようかと思うほど、満腹になった。
一度席を立ち、待合いに戻り、お茶の準備が出来るのを待つ。待合いの掛け軸には月が表わされ、屏風には見事な達筆で、勿論読めなかった。お茶室の用意が整うと、先ほどのように一礼して入る。床の間には尾花や吾亦紅の花が生けてあった。お菓子と濃茶を頂く。濃茶を飲んだ跡に紙で桜の花びらになるように模様を着けた。これは以前、眞正庵さんの所で教えて頂いた。次に薄茶に入る。お茶菓子といい、花といい、お茶碗にしても、秋を感じさせ心憎い持てなしだった。お道具も見事だが、お茶碗の中に酒田の山居倉庫や千石船六角灯台が描いてあったのに驚いた。釜は山形の鋳物だそうで、新庄で作られたお茶碗もあった。漆塗りの棗には松虫が螺鈿で細工してあり、こんな風に一つ一つ集める楽しみもあるのだと知った。お茶の世界の深さには限りがない。
と、まぁ、自己採点65点の着付けで、大急ぎで出かけた。人工の路地を通って待合いの部屋に入る。眞正庵さんは清楚な着物姿なのだが、他のメンバーは洋服のままなのだ。そう言えば一緒に入ってきたKさんも洋服だった。あんなに着物にしようねと言ったのに。当日は暑くて汗を拭きながらのお茶会で、本当はそれが正解だったのだが。
亭主のSさんは、奥様も娘さん達も裏千家で、「普段着のお茶会」なんてとんでもない。正真正銘、正式で固められたお茶会だった。待合いであられの入ったお湯を頂き、茶室にはいると床の間とお道具を拝見し、席に着くとご挨拶が始まり、懐石料理のお膳が一人一人に配られた。向こう付けにご飯と汁物が付いていた。すると亭主が漆の朱塗りの杯とお酒を持って現れた。本式の懐石料理には日本酒も付くのだそうだ。ほんのちょっぴり頂いて、ご飯椀の蓋を開けると、2口か3口で食べられるほどの量が長細く盛られていた。お汁は、赤と白味噌仕立ての汁にカラシの載った茄子が入っていた。向こう付けは鯛の昆布締めで、どれも美味しい。奥様達の手料理と伺ったが、料亭並みの味である。お代わりをと、おひつが回され、盛るのにも作法があるのだと言う。3品で充分にお腹が一杯になったのに、煮物、焼き物、白あえ、お汁も品が代わり、次々と料理が運ばれてくる。まるでフレンチのフルコースのようだ。一口吸い物、漬け物、栗と蟹、最後に炒ったお米の入ったお湯で締めになった。どうしようかと思うほど、満腹になった。
一度席を立ち、待合いに戻り、お茶の準備が出来るのを待つ。待合いの掛け軸には月が表わされ、屏風には見事な達筆で、勿論読めなかった。お茶室の用意が整うと、先ほどのように一礼して入る。床の間には尾花や吾亦紅の花が生けてあった。お菓子と濃茶を頂く。濃茶を飲んだ跡に紙で桜の花びらになるように模様を着けた。これは以前、眞正庵さんの所で教えて頂いた。次に薄茶に入る。お茶菓子といい、花といい、お茶碗にしても、秋を感じさせ心憎い持てなしだった。お道具も見事だが、お茶碗の中に酒田の山居倉庫や千石船六角灯台が描いてあったのに驚いた。釜は山形の鋳物だそうで、新庄で作られたお茶碗もあった。漆塗りの棗には松虫が螺鈿で細工してあり、こんな風に一つ一つ集める楽しみもあるのだと知った。お茶の世界の深さには限りがない。