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建築家 坂茂(ばんしげる)の設計による田沢湖駅舎である。秋田新幹線の開通に伴い、新築されたもので、完成当時にJIAの見学会と、板氏の講演会も同時に行われた。
第1印象の構造で驚いた。コンクリートの柱に木造の屋根が載っているように見えたのだが、構造設計の異端児のような板氏は、とんでもない事をここでも使用していた。
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柱に見えたのはコンクリートの杭である。それを地面からキャンテ(片持梁)で独立して建て、鉄の梁ウエブのみでつないでいる。木造に見えるのは意匠の集成材で、屋根全体の鉄板がフランジなのである。
板氏は特異な構造設計の持ち主で、家庭用Fax用紙の芯が固い段ボールなのに気がつき、これで建物は造れないかと考え、紙の教会を設計した。同じく紙ではドイツの万博の時の日本館の設計で、この固い紙を用いた。ただ、ドイツでは紙の建物の許可は下りなくて、内部にPCのコンクリートを入れたようである。この紙の芯を用いて、仮設住宅を造る発想も豊かである。サイズの違う芯を重ねて入れることでいっぺんに運べ、運送のコストも低く抑えられるとする考えである。
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これが15年も前の建物とは思えない新しさである。
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建築を囓っている者には分かるのだが、低コストで見せ場を造るのに、舌を巻いた。
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現在運行中の秋田新幹線こまちの車両に変わって、新しいE6系が登場する。色は違うが東北新幹線のはやぶさの車両に似ている。
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2階に上る階段には、ハングル文字が描かれていた。「IRIS」アイリスか。そう言えば田沢湖もロケ地の一つだった。最初は海外ロケや爆破のシーンが凄くて、面白そうと見たが途中で飽きてしまったドラマだった。このドラマのお蔭で、田沢湖を含め秋田には大勢の韓国の旅行者がやってきたそうだ。2階のホールはそのパネル展が開かれているようだ。