DVDのゴジラ1954年度版を返却しに行った際、ゴジラシリーズの中から1984年度版を片手に掴み、邦画のコーナーが何処にあるのか探しまわった。このTSUTAYA酒田店に入ったのは、過去1-2回ほどだろう。何が何処にあるのか、皆目検討がつかず、DVDを借りた記憶もない。もし借りる場合でも、買い物の途中に北店に寄るぐらいで、TSUTAYAが漢字で蔦屋と書くのも知らないほどの付き合いだったのである。
邦画のコーナーに、渡辺謙の「はやぶさ」を見つけてゴジラのDVDの上に重ね、数歩歩んだ所で三國連太郎遺作の「利休」をさらに重ね、疾風のごとくにレジへ進んだ。本屋で言う平積み、ましてや名俳優の遺作となれば、駄作になる訳がない。その考えは大当たりだった。
数コマ画面を観て、これは凄いと改めて時間を取って鑑賞することにした。千利休の話だから茶の世界、小道具から茶室まで、良い物があるのは当たり前だが、茶室などの建物に建築家の中村昌生氏が関わっているのに驚いた。中村昌生氏とは酒田市にある遊心館(茶室を含む木造の施設)の設計者であり、山形の山寺にある芭蕉記念館茶室も彼の手によるものである。平たく言えば、その筋の第一人者なのだ。
映画も素晴らしいが、こんな高名な建築家をスタッフにする監督とは、誰なのかとクレジットを見たら、勅使河原宏だった。作品の前半にイサムノグチと蒼風に捧ぐだったか、テロップが入っていたので、まさかまさかと思っていたら、やはり土門拳記念館の庭の設計者だった。その名前でも判る通りに華道家なのだが、映画監督としての才能も優れている。天はこの人に二物も三物も与えたようだ。1964年、安部公房原作の「砂の女」の映画監督だった。それならば仕方がない。
映画そのものも面白かったが、御茶の点前、茶室の造りでは、巻き戻しや一時停止をしながら勉強が出来る代物だった。「得しちゃった!」と笑う自分がいた。