某会合の後、女子2名で「雪国」を飲みにケルンへ行った。
冬の西風を防ぐための風除室を開けると、ドア越しにカウンターの中のマスターが見えた。ラッキーと思い、まっすぐカウンター席に陣取った。初めて雪国を飲むと言う彼女と会話をしながら、マスターの優雅な手際を見ていると、グラスの縁にレモンの切り口をなぞり、その水分に砂糖をまぶしていく。シェーカーは、これで足りるのかと思うほど数回振るだけである。グリーンチェリーを沈ませたグラスに注ぎ入れて、目の前に並べられた。
「優しい味だね、美味しいね。」と言いながら平らげると、次のオリジナルカクテルを注文した。
私の頼んだ「ルビーの誕生」は柑橘系の味がした。でも本当はライチの味が強いのだそうだ。
甘いのではなく、ちょっとすっきりした物をと、彼女が頼んだのは「プチシャトー」
マスターを一緒に画面に入れたかったのに、顔が映っていない。
「これはアルコールがきついよ。」と言われて、味見をさせて貰ったら、確かにきつかった。
グラスの中の濃度の濃さにより、飲み物の層が上下に分かれる。普通にシェイカーからカクテルを注ぐとこの層が混じってしまう。それを防ぐのに、氷の固まりを先に入れ、その氷の上に静かに注ぎ、後で氷を抜き取ると言う繊細な作業を見ることが出来た。こんなカクテルの本式の飲み方は、下の層を残すのだそうだ。「雪国」のグリーンチェリーまで食べた私はどうなるのよ。
そんな事を教わりながら、「雪国」や「プチシャトー」のグランプリの話を伺ったのだが、驚いた事に、マスターの井山さんはアルコールを飲まないのだそうだ。
「そうなの、マスターはお酒は飲まないの。」と笑いながら話しかけてくれた女性は・・・。
酒田生まれで、京都で舞妓をしていた冨久君さんだった。カウンターの中にいて、仕事を手伝っている。
近々、ケルンには多分「雪国」の取材だろう、NHKがやってくるそうだ。酒田は名物がないと良く言われるが、こんな文化的な大人の名物があったのだと誇れる気分になった。