私の大好物は、カニである。子供の頃から、母方の祖父が川で捕まえてきたモクズカニが、定番のご馳走だった。ちゃぶ台の上に、お盆に天こ盛りになったカニを、ただモクモクと言葉も発せずに食べ続けるのが、至福の時間だった。
川ガニが我が家に届かなくなったのは、祖父の死が大きく影響していたが、それにも増して田んぼの脇の川がどんどんコンクリートで整備され、生き物が棲めなくなったのと同じ頃だと言えよう。カニと言えば川ガニしか知らなかったのが、海でも色々な種類の物が獲れる事が判り、カニの種類によって味がまったく変わることにも気がつき、益々カニ好きに拍車がかかって行った。毒のある物以外は食べてみたいと今でも思う。
しかし・・・・。
これはなんぼなんでも無理だろう。
タスマニアキングクラブと言う世界最大のカニだそうだ。横歩きではなく、前進して移動すると言う。こんなのと海の中で遭遇したら逃げるしかない。ちゃんと逃げられるだろうか。海の中でワタリガニに出会った時、相手は小さいにも関わらず、ハサミをもたげて威嚇しながら私に向かってきた。(餌だと思ったのか、んなことないだろう。)武器のない人間など立ち向かっても勝ち目はない。小さなカニでも爪に挟まれると血が出て痛い。こんな大きな爪なら、か弱い私などひとたまりもない。あれれ、話がどっちが食べられるのか逆転してしまった。
いつだったか、Andiさんとカニの話になった時に、金槌で叩いても、なにで突っついても甲羅が割れないカニがあって、とうとう食べることが出来なかった友人の話をうかがった。まさか、そんなことは・・・と思っていたが、この写真を見ると、世の中は本当に広いと実感した。
ちなみに、この写真のカニは、現在水族館で飼われているそうだ。