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さくらますの学校が開かれる会場に着いた。山形は大火に遭わなかったのか、古い蔵が多い町である。その蔵を使った町作りも行われているが、今回の会場も蔵の中だった。路地を通って、奥へ奥へと進む。
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一部2階が載ってはいるが、殆ど吹き抜けで構成されていた。
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グランドピアノも置かれている。本棚もあり、様々な事に使われている様子だった。
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岩手のPSの会社を訪問した時に、その建物がドイツのバウハウスを彷彿とさせるのに驚いた。その建物を設計したのが、女性建築家の彦根アンドレアさんだ。ドイツ生まれで、大学を卒業して日本で最初に設計したのが、このPSの建物である。建築に関する想いが伝わってくる講演だった。
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岩手のPSとは何ぞやとお判りにならない方もおられよう。岩手県八幡平市にあるパネル式暖冷房のピーエス株式会社のことである。東北自動車道路の松尾八幡平で降りると、すぐにこの会社がある。広大な敷地(森)の中に社屋と研修棟2棟が配置されており、その大きな会社に似つかわしくない、気をつけないと見落としてしまうゲートと看板が立っている。
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舗装されていない林道のような道を走り、開けた場所に来ると、この社屋が見えてくる。鉄筋コンクリートの2階建てで、手前が事務所で奥は吹き抜けの工場になっている。建設してから22年が経ち、事務所の前に植えた木々は大きく育ち、夏には日光を遮り、冬は葉を落として日光を取り入れると言う、自然を使った室温のコントロールも行っている。
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室内の事務所側も吹き抜けがあり、世界中の植物や木々が育っている。窓枠が青いのは、空と調和を取る為で、大きな窓の下には、PSの製品のパネルがあり、室温を快適に保っている。
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2階の吹き抜けの回りの手すりにも、このパネルが使用されている。
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植物たちは、育ちに育ち、毎年天辺をカットしなければならないそうである。何故室内でも根腐れを起こさずに成長するかと言うと、植栽部分の土が外部と繋がっているからだそうで、恐らく根の部分はすでに外部にも侵出しているだろうと考えられる。
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この青いパネルもまた冷暖房用のパネルである。
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この可愛いパイプも、暖房パネルである。タオルを乾かす為と、コーヒーカップの保温にも利用されている。暖める為にわざわざ作ったのではなく、室内の熱交換で出た余熱を利用するためだそうだ。
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このパネルの熱源は、地中熱を利用している。パネルの冷房時には空気中に含まれた水蒸気が水となる。その水はビオトープを作って自然に還元している。この自然と環境を考慮した建物の設計は、アンドレアさんが大学を卒業し、日本に来て最初のプロジェクトだったそうだ。
講演会では、このPSの他、今まで手がけられた住宅を見せて頂いたが、基本的には高断熱住宅だった。ただ、日本のハウスメーカーの面白くも何ともない立方体ではなく、開口部は大きく、外壁が入り組んでいたり、局面を帯びたりと、まったく自由に設計されていた。木材の使い方も外観も、我々よりも和式ではと思えるほど、日本にマッチした住宅が多かった。これで良いんだと、ちょっと安堵した。
講演はアンドレアさんの人柄が良く出ていて、非常に面白かった。先日の東京での3人の講師達の講演よりも面白かったのではと言うのは、今回参加した我々の意見である。