
秋田県は、本当に風力発電の施設が多い。山の稜線にも海側にも、その数は多い。しかも秋田県には自社で風車を作っている工場もある。別の意味合いからも先進地なのだろう。

秋田市新屋に到着する。小雨の中、説明を受ける。

洋上風車かなと期待して行ったが、陸上のしかも随分と古い風車だった。聞けば日本の風車の先駆けである山形県立川町の翌年に、2基の実験用の風車を建てたのが始まりらしい。
この場所には大小併せて10基の風車があった。

管理者は秋田ウィンドパワー研究所である。
・補助金もない時代に設置し、古い物は16年を経過した。
・震災前の売電価格は9円/kwhで、経営は苦しかったが、東日本大震災後には22円/kwhになり、安定する。
・故障も多い。一番危険なのは雷被害。落雷を直接受けることもあり、避雷の流れが計画通りなら良いが、ずれた場合はブレードが裂けたり、ローターが壊れたりする。ローター部分は修理で4~5000万円かかったが、国内の業者が行えるようになり2000万円台で済むようになった。大型のクレーンも費用も大きい。修理が高額な為、あらかじめ予算を計上し積立金によりメンテも行う。落雷は直接だけでなく、近くに落ちた雷が地面を伝わって被害を受ける場合もある。秋田市の別の風車では、通常の電線で送電をしていたら落雷に遭い、水道管などを伝わり被害が増大した。
・砂による被害も大きい。飛び砂によりブレードの先端がボロボロになる。ボックスの中に砂が入りブレードを風向きに合わせるギアボックスの摩耗も多い。ヨーロッパの風車は一定方向から風が吹くのが多いが、秋田では少なくても3回/日~5回/日と、頻繁に向きが変わる。
・当初の計画は日本での資料が不足していた為にデンマークのを参考にした。最近のデンマークでの情勢は、大型の地上設置の風車を廃止し、洋上に切り替える傾向にあり、現在41%になっている。個人経営の農場脇に設置する75kw程度の風車には制限はない。大型の風車も地域を限定してまとめてきているようだ。
・計画する時に注意しなければならないのは、コンサルタントが出した数値である。そのままでは経営は成り立たない。もっとも有効な風速は7m/hだそうで、それに近い数値を提出してくる。実際は振り幅が大きく、風が弱くても回らないし、強ければ回転を中止させねばならない。7.1m/hで提出されたものを6.9m/hに打ち直して経営に取り組んだが、なかなか軌道には乗らなかった。年々風が異常になっている。強風も多い。不安定要素を元に計画しなければならない。
・鳥獣のアセスは、現状が判らずに想像で打ち出している所が多い。2年間に渡り、週1の割合で調査した。結果は2羽の事故があった。カラスとノスリだそうだ。

設置当初は物珍しさもあって、風車をライトアップした時期もあった。最近は風車の数が増え、照らすことはないそうだ。風車のフェンスの隣に秋田市の都市景観賞の記念碑があったが、これはどうなんだろう。酒田市でも山形県でも、これは選ばれないと思う。

ブレードのさきと中央が赤くペイントされていた。見学者達は可愛いと、酒田でランドマーク代わりに色を付けたらと言っていたが、恐らく景観審議会で許可が下りないだろう。

秋田市の年間の雷注意報は、100件を超えると言う。1年の1/3は雷に注意と言うことだ。酒田も同様に雷は多い。最近の新しい風車は避雷針の箇所が増えていて、上手に落雷を逃がすことが増えているそうだ。風車の開発も日進月歩である。
山形県では震災以来、知事の肝いりで「再生可能エネルギー」に取り込んでいる。単に風力発電を設置するだけでなく、風車の開発も県内の企業がやっていけたら良いのにと思う。海外の製品はメンテや故障で倍以上の経費がかさむ。地元でそれが行えれば、一石二鳥だと思うのだが。

ぬかるみに足を取られ転びそうになること1回、ヤブ蚊に襲われること2回。途中まで雨に濡れたが、親切な方に傘をかして貰う。そして貴重な意見が聞けたと感謝する。
風車の耐用年数は、EUでは16年ほど、日本ではFIT(再生エネルギー固定買い取り価格)に併せて20年と見込んでいる。この秋田ウィンドパワー研究所でも、そろそろ新しい設備を導入する計画を立てている。現在よりも大規模な大型風車を検討しているそうだ。洋上も検討するのかしら。