春、植木鉢の周辺に、小さなカマキリを見つけた。うまく育ってくれよと見守ってはいた。カマキリや蜂は、自然の中の警察官のようで、害虫を退治してくれる。害虫にもそれぞれ事情はあるのだろうが、人間の立場で葉っぱや花を食い荒らすのは、やっぱり害虫なのである。
秋になって、あのチビ助のカマキリは、かなり大きな身体に成長していた。立派なメスである。人間が触れてもどうってことないが、近くに昆虫が寄った時の頭のかしげ具合は、やっぱりさすがだなと思う。こちらに顔を向けているのは、手前の花に茶色の蝶々が止まっているからだ。花に引き寄せられる虫を捕るには、やはり花のある辺りでの待ち伏せ作戦が功を奏するだろう。
その雌よりも一回り小さな雄がやってきた。この男女の距離はまだ遠い。事の顛末を知る人間には、この出会いが切ない。まだ産卵するには早いんじゃないのと声を掛けたいのだが。
ちなみに、止まっているのは青紫蘇の葉で、後ろに見える赤いのは2mを超える蕎麦の茎である。荒れ地にでも育つとされる蕎麦だが、栄養豊富な場所で育つと大木になる実験結果である。