酒田斎場の構造を担当しているM先生が、東北芸工大の授業にも関わっているらしく、2月24日にオープンセレモニーが予定されている月山志津温泉の「雪旅籠の灯り」に行くとて、私の運転で現場を出たのは、午後1時前だった。
鶴岡から旧櫛引までは、曇り空の中、小雪が舞う程度だったのが、旧朝日村落合に入る辺りでは道路が圧雪になり、車の駆動を4WDに切り替えた。国道112号線は、土曜日の天候どころでは無く、ライトを着けても対向車が雪煙の中から、ぬっと顔を出す最悪のコンディションだった。ようやく国道から志津温泉へと左に折れると、両側の雪の壁の道路で、風も収まるかと思いきや、道路と壁の境目が見えないホワイトアウトになり、ソロソロと車を進める。車中での会話はモンゴルの雪やゲルの話から、「今年は雪旅籠を作るのに余所から雪を運ばすに良かったですね。」と軽いのだが、途中何度も車を停めて、凍ったワイパーの氷をたたき落とす作業が入る。気温は-6℃で風があるため、温風をデフに回してもフロント硝子がみるみる凍る。
無事に志津温泉に着いた時には、内心ほっとしたのだが、帰りも同じ道を辿るとなると億劫だ。さりとて寒河江に出て国道13号線に回る気力もない。
雪旅籠造りは、学生達総勢60名が3-4日泊まり込みで、作業に当たっている。M先生を予約した旅館に降ろし、車を降りて作業風景を撮す。あっと言う間に、身体は雪だらけになる。
近距離でも、雪の為にこんな写りだ。こんな中を帰るのだ。
学校毎、グループに分かれて作業に当たる。雪旅籠は最初のミーティングで大体を把握し、それぞれが個性を出して行う事になる。
現場は、吹雪の中でも笑い声が絶えない。M先生は「手伝ってくれるのは大歓迎。」と言うのだが、はっきりと返事はせず、出来上がったら見に訪れる約束はした。
まずは、入り口から内部を掘り進める作戦らしい。あまり雪が降ると、雪旅籠の屋根の雪下ろしも、やらねばならぬ時もあると言う。
ちょっと離れると、人の形まで見えなくなる雪の中、燃料ランプを点滅させながら山を下りてきた。
米の粉ドライブインに着いたのが3時半頃、思えば朝から何も食べていなかった。夕食までの腹の足しにと、満々ラーメンの食券を買った。店の女性に「少なめに」と告げたら、満々ラーメンは大盛りで、小さいのが良いなら普通のラーメンにしたら良いとアドバイスとおつりを貰う。湯気の立つラーメンも人の心も温かい。