鶴岡市五十川では、毎年この時期に河内神社に能と歌舞伎の奉納をする。
新緑と桜の花の下をくぐって、神社へ向かう。
一の鳥居をくぐり。
二の鳥居をくぐって、石段を登る。
急に見えるが、楽な階段だ。左に見えるのは、小峰神社。
すでに、舞台は始まっている。
にも関わらず、伝承館に入る前に、奥の神社を撮す。
山戸能は、山形県指定無形民俗文化財に指定されている。
演目は式三番かと思われる。
面を着けている翁は、国家安隠、天下泰平を祈り舞う。物語性はなく、能にして能にあらずと呼ばれる古いタイプらしい。
次は、番能「春日龍神」
山城の国(京都府)栂尾の明恵上人が唐天竺に渡ろうと暇乞いに春日明神を訪れる。宮守の老人は驚き、上人に日本を去ることは神の意志に背くことと止める。しかし上人は霊地や仏跡を巡拝するためだからと答える。老人は、「春日山は釈迦が説法をされた霊鷲山で、入唐渡天が無用である」ことを告げる。さすがに上人もこれはご神託と思い、老人に名前を聞く。老人は、春日神社の使者で時風秀行と名乗り、「入唐渡天を思いとどまれば、釈迦の誕生から入滅までの一代記を見せよう。」と言い、姿を消す。
春日山は奈良の神聖な場所だ。今で言うパワーポイントで、昨年の夏を思いだし、懐かしいなと思う。
山戸能は、河内神社のお祭りで献納される。いつも思うのだが、舞台の上で役者さん達が一生懸命演じていても、その囃子や地謡が聞こえないほど、客席後ろで行われている酒盛り宴会のざわめきが大きい。祭りなんだもの酒飲みは仕方がないさと思われるのだが、役者さん達は可哀想だ。客が舞台の前の方に寄って、かぶりつきで見るしかないと思う。
さて、一度幕が降りて、次は山五十川歌舞伎となる。能のお囃子の人達は舞台を降り、三味線と浄瑠璃の2人となる。
歌舞伎が始まると、伝承館の中はガラッと変わる。能の時はあんなに騒がしかった宴会が鳴りを潜め、酒の肴を役者に替える。
足利直義公
高武蔵守師直
桃井若狭之助安近:演目は仮名手本忠臣蔵「大序 鶴ケ岡社頭兜攻めの場」である。
塩治判官高貞
客席の奥で呑んでいる住民も、昔は役者だったのだろう。演目のあらすじを知っているもので、次のシーンで「そいつは○○するから、気をつけろ!」だの、「成田屋!」と声を掛けるのが本名を叫んだり。もう・・・・ったら。面白い。その都度客席から笑いと歓声が上がる。
櫝から次々と兜を取り出す。この中に、新田義貞の遺品の兜があると言う。それを美人と誉れ高い塩治判官の妻の顔世御前が検分役として登場する。
これが例の兜。ちっちゃい。
では、帰るぞ! ははぁ~~。m(__)m
この2人の間には、因縁が。
「そいつは、横恋慕するぞ!悪い奴だぞ、気をつけろ!」と声が掛かる。
きゃつ(高武蔵守師直)は、恋文を他の人の女房(塩治室 顔世御前)に渡すが、彼女にぽいと捨てられる。
そこをやって来て止めるのが、若狭之助。
「なに邪魔すんねん。」
悪態雑言を浴びせられ、若い若狭之助はカッとなって刀の柄に手を掛け斬ろうとするも、「還御!」と叫ぶ声に怒りを抑えながら、この日は過ぎた。う~ん、そうか忠臣蔵か。
なにこれ、綺麗! 地元民にしか配られないみたいだけど、縁起物なんだろうな。
石段を降りて、駐車場へ向かう。
マンホールに農集と書いてあった。
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平成12年に行われた出羽庄内の伝統芸能から
出羽からの祈りと再生1 黒川能と高寺八講
出羽からの祈りと再生2 蕨岡延年
出羽からの祈りと再生3 黒森歌舞伎
出羽からの祈りと再生4 岡野 弘幹氏と森 繁哉氏(舞踏)
想像する伝統芸能 平成13年:舞台は撮影不可
庄内では主立った物ですが、他に隠れた芸能はあるはずです。山形県内に広げると、数は俄然多くなります。寒河江の慈恩寺の門の舞台が見てみたいなと思います。
おまけ