11月21日、建築士会女性委員会の秋期研修会が、山形市の悠創の丘の悠創館で行われた。講師は東北芸術工科大学の準教授三浦秀一先生で、昨今の地球温暖化を食い止めるには、建築家としてどんな事に取り組んでいかねばならないかを、海外の事例も含めて講演された。一口にエコロジーを名乗っているメーカーの胡散臭い話にも気を付けるようにと、グラフなどの数値を例に出して並べてみるのだが、全国大会の時の田中裕子氏のニセエコロジーの話にも繋がり、興味深いものだった。聴講していた人間は、女性部主催ともあって女性建築士が多かったが、男性建築士も一般の聴講者も多く、目からウロコと言うか、今までの謎が解けたと言う感想もあった。大方レジメ通りに話は進んでいくのだが、海外から見た日本の危うさ、先進国は2050年迄に二酸化炭素80%削減しなければならないのに、それに逆行している政策には、驚かされた。
日本は食料の自給率も41%ほどしかない。エネルギーの自給率に至っては4%とも言われている。世界の石油資源はあと40年、日本はその4%の中で未来を考えなければならない所に来ているのだ。住宅に於いて、一番CO2を出しているのは、夏の冷房ではなく冬の暖房で、もっとも高いのは電気の蓄熱式暖房機が突出している。発電時に熱エネルギーを電気に変える際に冷却水で50%、煙突からのロスで10%、送電のロスで5%、住宅で有効に利用出来るのは全体の35%でしかない。その電力をヒートポンプ方式(エアコン)で暖房するならまだ良いのだが、直接熱に変える従来の電気暖房は、同じ灯油を使った暖房の倍近いCO2を放出する計算になる。電気温水器もまたしかり、他のエネルギーを用いる物に比べて、格段のCO2を出す。しかも、日本の政策の間違いと取り上げられたものに、重油を用いた火力発電があげられる。過去の石油の高騰時に、諸外国ではCO2排出の比較的少ないLPG等にとって変わった時期に、石炭へ変更した事があげられる。酒田にも石炭の火力発電があり、酒田港の貨物の大半を担っている事実に、ちょっと心が痛む。深夜電力だから安いよと、自分たちの手が汚れないクリーンエネルギーだと宣伝している後ろでは、こんなドロドロが見え隠れする。
同じく電気を使う方法でも、太陽エネルギーを用いた太陽熱温水器、太陽光発電は、途中のロスの少ない分、CO2の削減には有効である。一時期流行った太陽熱温水器は、一部の悪質な業者へのトラブルで一気に人気が衰えた。太陽光発電についても、そのデザイン性のなさや、発電の買収制度がネックとなり、1棟あたり200万円ほど掛かる設備投資を、20年でペイ出来る出来ないと好評を得ていない。車や電気製品にエコポイントが着くのなら、住宅やこれらの設備にもポイント制や高額な電気の買い取り制度を設けなければ、先は見えないと言うことなのだが。
では、どんな事が最もCO2削減に役に立つのかと言うと、バイオマスエネルギーと呼ばれる薪やペレットを用いる方法だ。「薪を燃やせば煙やCO2が出るじゃない。」と、一般人は考える。しかし植物を燃やすのは、植物が成長する時に吸ったCO2を、元に戻しているだけで、決してマイナスにはならないが、プラスマイナス0の、ニュートラルカーボンと呼ばれている。間伐を進め、森林を守ることが、植物の生育を高めCO2の循環を促すことは誰でも考えられる事だ。山形県内に多く見られるナラ枯れ被害も、山の手入れを怠ったからと言われている。ヨーロッパの先進国で進められているように、太陽熱とバイオマスのコンビネーションが、これからの時代に必要なのだ。
さて、それでは住宅を造るときのCO2の排出量を比べてみよう。KgCO2/㎡は、木造(447)、鉄骨造(733)、鉄筋コンクリート造(720)で、鉄骨造が最も多い。鉄骨を製鉄加工する迄に多量のエネルギーを必要とするからだ。木造でも基礎などに鉄筋やコンクリートを使用するので、0にする事は出来ないが、なるべく木材を使用する事で省エネになる。建物からの熱損失を抑えることでさらに燃費は抑えられるのだ。壁に断熱材を多めに入れる事は勿論、窓も木製のサッシを用いて三重にすると、アルミサッシシングルの1/5の熱貫流で抑えられるのだそうだ。結露もしない寒い地域に住む者にとっては嬉しい事である。
まぁ、そんなこんなで抜粋を書いてみたが、オーストリアの映像も含めて、面白い講演会だった。ペレットストーブについて、やまがた木質ペレット利用研究会事務局長の阿部さんには、作る材料の違いでカロリーや灰の量が変わることを、実物を見ながらの講義も面白かった。