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公会堂2階の講堂に入る。この席は全て埋まる。我々は比較的前の方に座ったのだが、なかなか前が見えない。
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来賓のご挨拶が続く。人の隙間から前を覗く動作を繰り返す。
いわて大会のテーマは「建物再生、温故知新。古きを訪ねて、新しきを創る。」と題して始まった。
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基調講演は、東京大学生産技術研究所教授の腰原幹雄氏。単に木構造と言う建築に囚われず、土木や木質、森林や環境に至る幅広い講義だった。実に面白い。
現在、木造建築は別の意味で注目を集めている。建築基準法が出来た1950年より以前に、木造建築は造られてきた。所謂、真壁貫の在来工法である。それが基準法の洋風筋違い工法に取って代わる。まぁ、学閥の争いで旧工法が負けた訳だが、日々進化するRCやS構造の工法とは違い、古い木造はそれだけで学ぶ事が多い。耐震を問われれば、破壊された方が次回からの勉強にもなる。台風、雨水、雪にも敏感に反応する。体験してこそ、工法は進化する。
さて、木造の歴史を見てみよう。古い物が文化かと言われれば、そうでもない。竪穴式住居や高床式建物は文化ではない。東大寺の建築が世界最大でも無い。法隆寺五重塔は、見かけよりも部材が小さい。民家が造られる頃から、文化の香りがしてくる。日本の木造建築の7-8割を占める在来工法は、何かと悪者扱いや手抜きだと言われている。昔は山を見て木を見て年月を掛けて住宅を造ったが、現在は無理に乾燥させた木材で、補強金物を用いて建築する。S造の金物は接合金物だが、木造の場合は補強に過ぎない。昔のような継ぎ手仕口の技術ではない。それが欧米では2x4+合板になり、パネルプレハブになった。ログハウスとなると、実に効率の悪い建築となる。
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板倉準三や前川国男などの近代建築になると、木材を使ったモダンな建物へと変わって来る。木材は組積、フレーム、HPシェルとなった。
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社会システムが変わると、山の森林資源が見直されてきた。基準法が変わり木造大断面が登場する。従来は平屋建ての学校建築が多かったが、楼閣、物見櫓、2階建て以上と進歩を告げる。燃え代設計をした部材で、オーストラリアでは10階建てまで建築されるようになった。ただし、日本と違い、木を使って木を仕上げとして見せることは、欧米では少ない。アジアでは、躯体としても仕上げとしても見せている。
日本の窯業系のサイディングで覆い、室内に石膏ボードクロスの建物は、出来上がった時から劣化が始まる。木を仕上げに用いると、時間の経過と共に美しさが積み上がっていく。都市型の木造は、水平と垂直を際立たせている。
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柱や梁が、垂直や水平で施工しなければならないと、誰が決めただろうか。講師の腰原氏は、国際なかなか遺産(ちょっと笑って貰える建物文化財)の取り組みに、現在邁進中だそうである。そこまで達しない建物は、国際まだまだ遺産と、これも面白い。
講演はもう少し続くのだが、メモした紙の文字が(自分で書いたのに)汚くて読めないので、この辺で。
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さて、次の講師は京都造形芸術大学の通信大学院教授を2014年まで務められた三澤文子氏である。岐阜県立森林文化アカデミー教授を兼任されているが、スクラップビルドの時代は終わり、中古住宅をいかにリノベーションするか、ヘリテージマネージャーの養成が叫ばれている中で、一歩先を行く住宅医の育成を手がけている。
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その先駆けは、ロンドンにあった。この建築病理学を学ぶことにより、特に木造の弱点を克服し、病気になりにくい木造建築が出来上がるのである。
それと、持続可能な社会、循環する住宅を造る為に、3つのポイントがある。
①求められる地域型住宅・地元の木材を使う。
②省エネ、住宅の断熱性能の向上、高齢者への健康配慮
③長寿型住宅、簡単に壊れない住宅。こまめにメンテナンスを行う。
等が上げられる。中古住宅改造の折には、建物の現状調査として20人程度を1日がかりで1件の家に集中させると言う。これは、随分な人数だなと思う。我々の地元の人間は気が短いのか、中古住宅を直して住むより手っ取り早く解体して新たに建てる事を好む。中古住宅は、屋根や壁、天井床を壊して下地を見ないと新築以上に工事費がかさむ場合が往々にしてある。それでも彼女は直す方を薦める、多分、工事費単価が東北と関西では違うからなのだと思う。
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それでも、今回の講演の「目玉」があった。石建て基礎などの民家の柱脚の補修と、新たな基礎の作成に於いて、揚げ屋をせずに工事を行う方法だそうだ。柱をかき込み土台を大入れにする。柱の足下は切るか、鋼製束で浮かせておいて、布基礎を施工するのだそうだ。この束は基礎に埋めたままでも大丈夫かと思う。
話は変わるが、建物を新築する場合は、地鎮祭や上棟式を行う。改築や補修の場合は行わないが、けじめとして「清祓式」を地鎮祭と同様に行う事を薦められた。なるほどと思う。
この後、東北各県の会員から事例を紹介される。皆さん、良い仕事を行っていらっしゃる。
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大会も無事に済んで、宿泊のホテルへと移動する。場所はつなぎ温泉と盛岡からは少し離れている。公会堂を出て、盛岡城のお堀に白い蓮華の花を見つける。
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辺り一面、白い蓮だった。
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しかも、花の大きさがとても大きい。白い蓮を見るのは、初めてである。
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駐車場へ行くまでに見つけた神社でお参りをする。
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車はひた走り。
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ホテルに着いて、懇親会が始まった。
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東北ブロック会長のご挨拶
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久しぶりの友人にも出逢えた。今度古き会員達(女性委員会を創ったメンバー)で同窓会を行うことにした。
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各県からの持ち寄りは、年ごとに豪華になっていく。全部を並べて撮そうとしたのだが、もう各々のテーブルに一升瓶が出張しているのだ。
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ワインもあった。さんさ踊りも踊ったし、もうお腹がいっぱいだ。
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