やっと秋めいてきて、朝夕は爽やかな涼しさを感じるようになってきた。
そんな日の朝、早出の出勤で1Fの会社の廊下を歩いて行くと、廊下の中央あたりに
何やら黒っぽい虫のようなものが、常夜灯の薄明かりの中でうずくまっているではないか。
「ゲッゴキブリか」と一瞬緊張したが、屈んでよく見るとコオロギである。
どうやら生きているようだ。わたしの勤める会社は食品を扱っているので、
虫は何であれ天敵とみなされ、見つけ次第処刑されるのは必至だ。
もし、これがゴキブリであったなら、間違いなく我が靴底はイヤな感触を朝一から
味あわなければならなかったろう。しかし、コオロギである。しかも発見者が
虫に対しての殺傷能力に甚だしく劣るわたしであったことが、コオロギの命運を
分けたに違いない。
両手で包もうと差し出すと、ピョンと跳ねたではないか。けっこう元気である。
もう一度跳ねたところを両手で空中キャッチ。キャッチされた両手の中で飛び跳ねている。
コオロギはそうそう噛まないし、毒針などで刺される恐れもないことは知っているので、暴れるに
まかせて玄関まで持っていき、ドアを肩で開けると両手を開きながら放り投げた。
「後は自分で生きていけ!」と、まだ薄暗かった外に向かって心中でつぶやくと、
社内へと踵を返した。
やれやれ…これで朝一からの殺生という不快きわまりないスタートを切らずにすんだことに
胸をなでおろしたのだった。
しかし…と、ふと思った。コオロギとゴキブリ、どちらも同じ昆虫である。なのに…ウ~ム。
そういえば、こんな句を作っていたのを思い出した。
見え隠る ゴキブリの背の 罪と罰
もう一つ
ゴキブリよ 厨(くりや)の秋を 鳴いてみたまえ
issei
そんな日の朝、早出の出勤で1Fの会社の廊下を歩いて行くと、廊下の中央あたりに
何やら黒っぽい虫のようなものが、常夜灯の薄明かりの中でうずくまっているではないか。
「ゲッゴキブリか」と一瞬緊張したが、屈んでよく見るとコオロギである。
どうやら生きているようだ。わたしの勤める会社は食品を扱っているので、
虫は何であれ天敵とみなされ、見つけ次第処刑されるのは必至だ。
もし、これがゴキブリであったなら、間違いなく我が靴底はイヤな感触を朝一から
味あわなければならなかったろう。しかし、コオロギである。しかも発見者が
虫に対しての殺傷能力に甚だしく劣るわたしであったことが、コオロギの命運を
分けたに違いない。
両手で包もうと差し出すと、ピョンと跳ねたではないか。けっこう元気である。
もう一度跳ねたところを両手で空中キャッチ。キャッチされた両手の中で飛び跳ねている。
コオロギはそうそう噛まないし、毒針などで刺される恐れもないことは知っているので、暴れるに
まかせて玄関まで持っていき、ドアを肩で開けると両手を開きながら放り投げた。
「後は自分で生きていけ!」と、まだ薄暗かった外に向かって心中でつぶやくと、
社内へと踵を返した。
やれやれ…これで朝一からの殺生という不快きわまりないスタートを切らずにすんだことに
胸をなでおろしたのだった。
しかし…と、ふと思った。コオロギとゴキブリ、どちらも同じ昆虫である。なのに…ウ~ム。
そういえば、こんな句を作っていたのを思い出した。
見え隠る ゴキブリの背の 罪と罰
もう一つ
ゴキブリよ 厨(くりや)の秋を 鳴いてみたまえ
issei