自分の楽しいのため

何者かになりたかった。
けど、何物にもなれなかった。
今さら何者かになれるとも思っていないし、なれたとして、自分のこれまでのよいことも悪いことも自分を知る人から噴き出して追いつめられるのではないかと恐れたりする。
単なる妄想だと知っている。
けど、唐突に何度も同じ状況に陥り、不安になり恐れ、怒り絶望する。
その繰り返しからいい加減抜け出さねばと心をすり減らす。
うすぼんやりと、まだ何者かになりたいと思っているゆえの妄想。

誰かの役に立ちたいとか、そんなことじゃなく、自分が楽しいと感じたことや好きなことを書いたり声にしたりすればいい。
こうして書かなくとも、それを自分の内に秘めればそれでいい。
自分の頭の中の言葉を日記に書くと後からそれを読んで絶望したり思い出して不安になったりとあまりいい効果が得られないのでできるだけ書かないようにする。
それが果たして効果を生み出しているのか？

心と体がバラバラになっている感じがする。
つながりが細くちぎれそうな頼りなさ。
イライラの矛先が内へ向く。
外から向けられる不可抗力と暴力じみた声が、無意識下に無遠慮に届く。

暴力な声を遮断する。
静寂に身を沈める。
穏やかな気候の向こう側に自分を見る。
ちぎれそうな心の声は遠くに聞こえる。
この声をよく聞くために、緩やかな時間を。