2012年6月17日(日)
お目当ての映画の上映時間が近づいて来ました。海に近い映画館に到着。そこは、まさに昭和の映画館。古びたガラスケースの中には近日上映作品のポスターが。適度に薄暗いエントランスに懐かしさを感じます。とは言え中は清潔でかつ前後のシートの間隔が広く、都会のシネコンに快適さでは負けてはいません・・・。ホール内にピアノが置いてあるのが印象的ではありました。
『幕末太陽傳』
話は今年の2月。職場の飲み会であまり話した事がない職場の上席が、突然映画について語り出します。昭和30年代から40年代にかけての日本映画について熱く熱く語るのです。その知識量にも圧倒されましたが、映画に対する愛情の深さに驚きました。その中で特に熱く私に説いたのは、『幕末太陽傳』を見たか?見てないなら、見るべきだ!絶対!と・・・。ちょうど昨年末から日活100周年としてデジタル修復版が各地で順次公開されています。どうせならDVDで家で見るよりは映画館で見ようと思いました。そうこうしているうちに、近辺での上映は終わり、この尾道での上映が(今回の)最期の上映となる事を知り、あわてて駆けつけたわけです。
内容にただただ圧倒されました。舞台となる遊郭旅籠<相模屋>の巨大なセットに、その当時の日本映画の勢いを感じました。今ならCGでごまかしてしまうのでしょうが、この巨大感は登場人物が旅籠の中を右往左往駆け回るシーンで大きな効果を上げています。お金掛かっただろうなア。南田洋子と左幸子のつかみ合いのシーンでは、庭で始まった叩きあいが、廊下・階段そして2階へと1カットで収めています。観客も、その場で取り巻居ている様な錯覚をおぼえます。ストーリは、いくつもの古典落語を下敷きにし、それが次のエピソードへと繋がっていきます。フランキー堺の怪熱と脇を固める日活スター達の輝きでぐいぐい観客を引き込んでいきます。気が付けばラストまでフランキー堺演じる佐平治と一緒に駆け足で走っている気分に・・・。当時の風俗や時代背景を知らないと戸惑う事もありますが、2時間弱、監督川島雄三の力技と日活豪華俳優陣の熱演に酔いしれます。見に来て良かった・・・。
映画を観た後は、海沿いの鉄板焼きの店でお好み焼きをいただきます。もちろん広島焼きです、店主とこの街の話しをしているうちに電車の時間が来ました。あたりは夕暮れ。海も空も街もぼんやり朱に染まっていきます・・・。
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