知人の日本舞踊の師匠をしている女性が、行きつけの店で飲食をしていると、隣に座っていた、きちんとした身なりの年配の男性が話しかけてきた。
着ている着物を褒められ、「今度、ホテルで展示会をするので、是非いらして下さい」とホテルの名前と日時を書いたメモを渡された。
彼女は、展示会の日が、たまたま予定が空いており、彼に言われたホテルに、とっておきの着物を着て出かけたらしい。
着物の展示会だと、着物姿の女性が目につくものだけれどホテルのロビーにはそういう姿はない。
少し時間が早すぎたのかと思いつつ、会場に足を踏み入れた途端、彼女はビックリ仰天した。
何と!!そこは着物ではなく仏壇の展示会だったのである。
着物の展示会ならぬ仏壇の展示会というものが存在する事を初めて知った彼女は・・・・
「げげっ」腰が引けたが踵をかえして帰るわけにもいかず、唖然として立ち尽くしているとメモをくれた男性が歩み寄ってきて丁寧に頭を下げた。
「どうしてこんなことに」心の中で何度もつぶやきながら、ゆっくり展示会場を歩き,一礼をしてそそくさと帰ってきたらしい。
彼女は「どうして私に仏壇の展示会なんかに誘ったのかしら?」と私に言うので「きっと、仏壇を買いそうな顔に見えたのよ」っと言ったら「冗談じゃないわ~仏壇を買いそうな顔ってどんな顔よ!!」っと怒られた。
この話を聞いた時、私は実家で無残に引っ越しさせられた仏壇を思い出してしまった。
私の母は、まだ頭はしっかりしているものの、夜中に何度も義姉を起こし、トイレに行くのに困り果て、ケア施設に8年前に入所した。
実家では私の兄である、長男と、その嫁の二人が暮らしている。
口うるさかった母が施設に入ってからは、キチンとしていたリビングも荒れ放題になり、リビング続きにある和室に置かれていた仏壇が無くなっていた。
「あれ??仏壇は?」と聞くと両親が寝室に使っていた部屋に引っ越しをされ、しかもずっと閉じられたまま。
理由を聞くと「今のインテリアには仏壇はねぇ~」と笑いながら、平気な義姉の顔。
私は、実家に来る事は滅多に無いので、常日頃、ここで暮らしてる人達に偉そうな事は言える道理がないので黙っていた。
迷惑がられ、来客の目の届かないところに移動させられた、ご先祖様は多少、ご不満かもしれないが、私は行き場のなかった仏壇にとりあえず置き場が出来て良かったと胸をなで下ろしたのである。
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