はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

(21)旅するジーンズと19歳の旅立ち(2008年、米)

2008年08月08日 | 映画(2007-08年公開)
16歳のあの夏から3年… 

   この夏、”彼女たち”が帰って来た! 

なんと言っても、4人の個性の輝きが素晴らしい!!

急遽世界上映が決まったとのことで、きちんとしたプロモーションもなし(TVのスポットCMがたまに流れる位で、公式サイトにも情報が殆どない)、プログラム冊子もなし、上映館数もごく僅か、と言うナイナイ尽くしの中、”彼女たち”が3年ぶりに私たちのもとへ帰って来た。前作もそうだったけれど、どうして、このような素敵な作品を映画会社はもっと宣伝しないのかなあ?これは良質な映画を求める映画ファンにとっても残念なことだと思う。

久しぶりに見る彼女たちはチョッピリ大人びた姿で登場。高校を卒業し、それぞれの道を歩み始めていた。ティビーは映画制作を学びにニューヨーク大へ、ブリジットはスポーツ活動と学業の両立が認められブラウン大へ、リーナは奨学金を得てロードアイランド美大へ、そしてカルメンは演劇専攻?でイェール大へ。皆、優秀なんだなあ~。

今回は離ればなれになった4人が、夏休みに故郷で一旦再会を果たすも、また、それぞれの目的に向かって散り散りになる。ティビーはニューヨークに戻るが、相変わらずバイト生活(今度はレンタルビデオ店だ)。ブリジットは遺跡発掘プログラムに参加の為トルコへ。リーナも大学の夏季特別講習でヌードデッサンに挑む。カルメンは当初の予定とは違うけれど、大学の友人の誘いに乗って、バーモントで開かれる演劇の夏季セミナーへ参加。かくして、3年経ってかなりくたびれた感のある、あの不思議なジーンズも、再び4人の間を旅することになる。そして、4人はそれぞれの場所で、それぞれの課題(そう、1人の人間として成長する為に乗り越えなければならない壁のようなもの)に直面するのである。

前作に引き続き、4人の個性が輝いている。前作との違いは、それぞれが確実に自立の道を歩み始めたことだろうか?一歩、また一歩と、それぞれに、さまざまな経験を重ねて大人へと近づいて行く4人。その過程で、どうしても起きてしまう気持ちのスレ違い。果たして旅するジーンズは4人の友情を繋ぎ止めることができるのか、と内心ハラハラしながら、その展開を見守った。実は前作とはビミョーに変化した”ジーンズ”の存在感が、この作品の”肝”だったりする。



こんなに爽やかな余韻の残る佳作には滅多に巡り会えないもの。現役少女も、元少女も必見のガールズ・ムービーと言えるだろう(もちろん、男性でも十分に楽しめると思う!)。

【ブログ内関連記事】
映画『旅するジーンズと16歳の夏』の感想

【邦題】
本作の原題は"Sisterhood of the Traveling Pants 2"。邦題『旅するジーンズと19歳の旅立ち』は、前作の邦題『旅するジーンズと16歳の夏』に引き続き、なかなか好感度の高い邦題だと思う。原題を直訳すると「旅するパンツがとりもつ女性同士の友情」あるいは「…仲間」とでもなるだろうか?(私の翻訳センスが悪いだけかもしれないけれど)一連の邦題は、内容的に的を射ているし、単に1,2とするより、歳月の流れを感じさせて特に前作ファンの懐旧を誘うと思う。

【メルティング・ポットからサラダボウルへ】
私は米国に住んだことはないし、(叔母家族が住んでいるけれど、私自身は久しく音信不通で)親しい友人がいるわけでもないので、米国の最新事情には疎いところがある。以前、掲示板で、米国在住者から、認識の古さを指摘されたこともあった。その一例がメルティング・スポットだ。”人種のるつぼ”なんて認識は既に時代遅れ、今や米国社会は”サラダボウル”なんだそうだ。”るつぼで溶け合わなければアメリカ人になれない”ではなく、キュウリはキュウリ、トマトはトマトとして存在するサラダボウルの種々の野菜の如く、それぞれの民族性を尊重しつつ、「米国の精神」というエキス(ドレッシング)をかけられて、ひとつのまとまった国家を形成するのが今の米国。ことさら人種間の違いを言い立てるのはダサイ。それを体現するかのように、この作品内のカップルの人種構成はとても自由だったのが印象的(米国の”今”を知る好著が最近出版された。尾崎哲夫著『英単語500でわかる現代アメリカ』(朝日新書、2008)と言う本だ。up-to-dateなボキャブラリー500語で現代米国を読み解くというもの)。

【映画の中の少女たちの成長物語は、そのまま出演女優の成長物語でもある】
エーゲ海の青さを映し出したかのような青い瞳が印象的なリーナを演じるアレクシス・ブレーデルは、前作「旅するジーンズと16歳の夏」公開直後の映画「シン・シティ」で全く違った一面を見せてくれて、女優としてのキャパシティの広さを感じさせた。同様にプエルトリコ系の褐色の肌のカルメン役を演じたアメリカ・フィレーラには「CSI」にゲスト出演という形で再会した。現在、彼女はテレビドラマ「アグリー・ベティ」の主演で、エミー賞に堂々ノミネートされている。また、前作撮影当時本格的な女優になるかどうかは未定だったブリジット役のブレイク・ライブリーは、現在主演を務めるテレビドラマ「ゴシップ・ガール」が、ティーンズ・チョイス・アワードに14部門もノミネートされるなど、確実に女優としての道を歩んでいるようだ。そして一見強面ながら、実は繊細な内面を持つティビー役を演じたアンバー・タンブリンも、人気ホラー映画「呪怨」に出演、その続編への出演も決定している。それぞれの今後の活躍が期待される。この映画への出演が、4人に女優としての自信をもたらしたのは想像に難くないし、同時に、この映画の成功は、彼女たちの確かな演技力に因るところが大きいと言えるのではないだろうか。

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