珠子は、月の光が薄明るく照らす理恵子の部屋で、誰にも話したこともない自分の性的経験とその苦悩を説明したが、それは、理恵子を充分に説得するものであった。 珠子の説明によれば、断片的ではあるが
彼女は、高校3年に進級した春。 以前から、なんとなく温和で勉強のできる同級生の男子に親近感を覚えて自然とほとばしる感情で交際していた。
或る秋の日の午後。 帰校時に 彼の自宅に誘われて遊びに行ったとき、無理やりに求められて身体を許してしまったが、勿論、そのときは、恋とか愛とかでなく、以前の親密な友情と言うのかしら、強いて言へば互いにその場の雰囲気に飲み込まれ初体験をしたわ。 その後も、たまに誘われれば彼の家で興味半分のsexに戯れていたが、私達の場合、卒業すれば家庭環境から卒業後は別れることになるので、深い恋愛感情も芽生えず、ただ、お互いに好感を抱いているだけの交際で今でも続いているわ。
丁度、そのころ、母親の携帯を偶然見たとき、耳にしたことも無い男性からのそれらしきメールを見てしまい、凄くショックだったけれども、母親が宿直だと言って普段とは違った服装で出かけて行くのを見たとき、最初はこれは怪しいなと思ったが、日がたつに従い、自分も親に内緒でsexしており、一人身の母なれば仕方ないと言うか、精神的にも肉体的にも、大人としてやむを得ないことかな。と、考える様になり、再婚だけは嫌だけれども、そうでなければ許せると考える様になったわ。
こんなことも重なり、寂しさを紛らわせることからも、彼とのsexをたまにだが継続している理由かも知れないわ。
と、正直に告白した。
珠子は、更に話を続けて
そんな私に比べれば、理恵子さんは織田君との交際は両親も認めている間柄で、なにより本当にお互いに愛し合っている恋愛であり、将来の目的もはっきりしているので凄く羨ましいですわ。
今日、たまたま、織田君と深い関係になったからといっても、それは年齢的にも自然の成り行きで恥ずべきことでないし、むしろ遅すぎたくらいと思うわ。
わたしの同級生の半数以上の女性徒は、多分、経験者と思いますが、これは一寸行き過ぎとしても、中には中学生のときに経験したとゆう勇敢な友達もいますわ。
良しあしは判りませんが、なんかsexも本で学んだことと異なり、今ではそれほど特別なことでも無くなったように思いますが、これって、世の中の価値観の変遷に従い女性の性に対する考えが変化してしまったのかしら。よく判りませんが・・
だから、理恵子さんも、余り意識せずに普段通りにしていれば、誰も気にとめることはないと思いますわ。
けれども、わたし時々考えるんですが、女性はある峠を越えると、それを契機に心も身体も変わると言うか、視野が広がると言うのか、確かに現実を見る目が冷静になり、少しずつ大人になって行く様に思いますわ。
と、思いもよらず、珠子を取り巻く若い人達の性と感情の複雑さを素直に話してくれたが、月明かりのためか、昼間見る強気な彼女の表情に哀愁を漂わせている様に、理恵子の目には映り
「珠子さん、貴女、大人だゎ」 「わたし、お話を聞いていて、自分が幼いと言うか、やっぱり田舎者だと、つくずく思い知らされたゎ」
と返事をするのが精一杯だった。
珠子は、一通り話終えると、「オヤスミナサイ」と言って部屋を出て行ったが、階下の食堂が明るく母親と大助の話し声が聞こえたので、キッチンのガラス戸越に中を覗いたところ、大助は鉢巻をして鮭の焼き身をご飯に乗せてお茶をかけて夢中になって食べており、母親は、時々、団扇で大助を仰ぎながら冷えた麦茶を飲んでいた。
彼女は入り口に立ち止まり、耳を澄まして二人の会話を聞いていたら、母親が大助に対し
「お姉ちゃんは、好きな人でもいるんだろうか、お前、なんか知っているんじゃないの?」
と聞くと、大助はご飯を口に運ぶのが忙しく、顔をも上げずに
「全然、ワンカンナイョ。 僕から見ても友達に自慢出来る程の美人でもないが、まぁ~まぁ~の器量だし、僕に比べれば頭は抜群に良いし、一人位いるんでないかなぁ。いても当たり前だと思うよ」
「八百屋の昭ちゃんなんか、お姉ちゃんに熱を上げているみたいで、僕も健ちゃんに言われて提灯持ちで一生懸命に中を取り持ってやっているんだが、姉ちゃんは、全然、関心を示さないところをみると、やっぱり、ほかにいるんでないかなぁ~」
「母ちゃんも、親なんだから、遠慮しないで直接聞いてみたらどうなんだい?」
と素っ気無い返事をしていた。
すると話のついでか、今度は母親が大助に対し
「ところで、お前は、どうなんだい。 好きで付き合っている人でもいるのかネ?」「靴屋のタマコちゃんは別にして・・」
と聞くと、彼はご飯を食べ終えて麦茶を飲みながら、真面目くさって
「僕のことを好きになるオンナノコなんている訳ないじゃないか」 「ヤボなことを聞くなよ」
と、にべも無く答えたが、母親の孝子がなおも執拗に聞くので、大助はひと呼吸おいて、過ぎし日を懐かしく回想しながら
「僕が、一方的に好きとゆうだけなら、その人は東京にはいないわ。遥か遠くの北の空の下にいることはいるわ。
だけれども、相手は僕をどう思っているかは、判んないや。おそらく僕のことなんて眼中にないだろうなぁ。
去年の夏、偶然、逢っただけなので。悲しき片思いの大助サ。と、言ったところだなぁ。
それでも、一人で頑張っている母さんの子にしては上出来だろうな」
と返事をしたので、母親は興味ありそうに尚も聞き出そうとすると、彼は ニヤット 笑って
「母さん、僕のこと、そんなに気になるんかい」
「どうしても知りたいとゆうんなら、別に隠すことも無いんで話してもいいよ」
と勿体をつけて、渋々ながら過ぎし日の出来事を回想しながら
「その子は、ブルーの水晶の様に澄んだ瞳の人だよ。
僕と同じ学年で、背丈も高くスレンダーで、金髪に少し銀色の髪が混ざっていて、まるで映画で見る様な綺麗な女優さんみたいだよ。
「外人さんて、色が白いと思っていたが、少し赤茶けているんだね」
「何時か風呂場でうっかり見てしまった珠子姉ちゃんのほうが、よっぽど肌が白いわ。その子の肌はすべすべして柔らかい感じだったなぁ」
「日本人も馬鹿にしたもんではないわ」 「勿論、理恵姉ちゃんの方が、姉ちゃんやその子より綺麗だけれどもね」
と言い終えるや、孝子は予期もしない話しに言葉を失い絶句してたところえ、突然、珠子が入って来て
「こんな夜遅く、二人で何をくだらないことを話しているの!」
と怒りの表情で言うや、大助は不意の出来事にビックリして「シマッタ!」と叫んで、冷えた番茶の入ったコップを落としてしまった。
大助は初めて見る姉の妖艶なネグリジェ姿に目を奪われていたが、彼女はそんなことに気付かずに
「大体、母さんも悪いわ」「だから、大助が甘えて仕舞い、頼りがいのない子になるのょ。大助も、わたしのことなんか心配しないでも結講だわ」
「青い目の人ってダレョ」 「おかしなことをして、後で大問題をおこさないでョ」 「お前は、本当に心配の種だゎ」
「きちんとと説明しなければ、夏休みに田舎に連れて行かないからネ」 「母さん、そうしましょう」
と言うと、母親の孝子が大助を応援するかの様に
「珠子も、そんなネグリジエ姿でいきなり入って来ては、思春期の大助には目の毒だゎ」
と注意したところ、彼女は慌てて両手を胸にあて隠くす様にして、自分の部屋に戻ってしまった。