関内駅近く、吉田町にあるギリシャ料理の老舗、スパルタにお邪魔してきました。スパルタは創業60年で三代目、かつてはギリシャ人船員が多く集まった曙町にありました。その曙町には現在でも有名な老舗Bar「アポロ」があり、その名残を留めています。
スパルタは日本人向けにアレンジしていない本場のギリシャ料理。ギリシャは三方をイオニア海、地中海、エーゲ海に囲まれ、海の幸が豊富なので、日本人の口によく合う料理だと思いました。しかし、昔は日本人がオリーブオイルに馴染みがなく、少し抵抗があったようです。
現在の「スパルタ」は元々喫茶店だった店を改装。黒壁だった店内を白壁と水色の柱を基調とした色に塗り直し、手作り感のある地中海風(ギリシャの国旗風?)の内装になっています。細長い店の造りが、元々喫茶店であったことを窺わせます。
ギリシャと言えばワイン。以前ご紹介したジョージアと並ぶ世界最古のワイン生産国の一つであり、300以上もの固有のブドウ品種があると言われます。ただ、残念ながらこの日は車だったために飲むことができず、代わりに「マスティクア」という炭酸水を頼みました。マスティクアは、キオス島に自生するマスティハの樹液入りの炭酸水。マスティハの爽やかな香りのする軟水の飲みやすい炭酸水です。マスティハには様々な効能があることが知られていますが、この水に効能があるのかについては不明です。
一緒にお邪魔した友人は、「フィックス」という1864年発売開始のギリシャ最古のビールを。フィックスはかつて国際コンテストでも高い評価を得、高い人気を誇りましたが、外国産ビールに押され1983年に製造中止。その後、他社に売却され、2010年にフィックス・ブランドとして復活したそうです。友人曰く、しっかりとしたラガービールだったとのこと。
さて、料理に移りましょう。まずはタコのマリネ。ギリシャのマリネは酢の代わりに白ワインとレモン汁で作るのだそうです。厚みのあるゆでたタコは食べ応えあり。
野菜たっぷりのギリシャ・サラダもドレッシングは使わず、野菜から出る汁とオリーブオイルで仕上げているのだそう。Sサイズを頼みましたが、かなりボリュームがあります。
ハルミチーズ。山羊乳と羊乳から作られる、キプロス島の非熟成塩漬けチーズを焼いたもの。ハルミは溶けにくいので焼いてもとろけず、チーズの塩味と旨味に焼いた香ばしい香りが加わり、肉を食べているかのような食感です。白ワインにとても良く合いそうです。
メリジャノサラダ。茄子のペースト、アラブ系料理の「フムス」のようなものです。東ローマ帝国滅亡後、ギリシャは19世紀までオスマン帝国の支配下にありましたから、当然トルコからの食文化の影響も受けています。バケットにつけてさっぱりと食べようと頼んだのですが、そのバケットも注文が入ってから焼くそうで、とても柔らかく、熱々で美味しかったです。
ガリデス。予想外に大きな、大ぶりのむきエビの唐揚げは、シンプルですが食べ応えと、噛むほどに口の中に旨味(昔、国語の教科書でこういうのを岩手方言で「くるみ味」というと習ったような…)が広がります。これはお勧めです。
コトプロ・コキニスト。コトプロは鶏肉、コキニストとは赤くしたもの、つまりチキンのトマト煮のことです。地中海料理に共通することですが、ギリシャでも新大陸から伝わったトマトを多用します。チキンはとても柔らかく、赤ワインで楽しめればさらに美味しさが増したことでしょう。こちらもとてもお勧めです。
ムサカ。ジャガイモと茄子とひき肉の上にホワイトソースをのせ焼いたもの。東地中海に広く分布する伝統料理ですが、ラザニアのように層にするのは、ギリシャのムサカの特徴のようです。これも大きくてかなりの食べ応え。頼むならはじめの方が良いかもしれません。
最後は濃いギリシャコーヒーとバクラバのデザート。バクラバは砕いたクルミやアーモンドの入ったパイに染み出すほどたっぷりの蜂蜜(シロップ?)をかけたもの。こちらもトルコを経由して伝わったものと思われます。見るからに甘そうで、覚悟して臨みましたが、意外にもあっさりとした甘さで、一気に食べられました。ギリシャコーヒーはトルコと同じく、コーヒーの粉ごと煮だしたもので、粉を沈めて上澄みだけを飲みます。濃いコーヒーが好きな僕としては嬉しいです。
気がつけば、二人で随分と色々食べました。しかし、初めてのギリシャ料理は珍しく、それだけでも楽しかったです。今回はとある会の忘年会の下見としてお邪魔したのですが、次回はギリシャのワインもしっかりと楽しみたいと思います。
スパルタ
神奈川県横浜市中区吉田町3-7
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした