窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

【WBN】お客様は何を買っているのか

2017年11月07日 | WBN情報


  更新が遅くなりましたが、10月25日、WBN(早稲田ビジネスネット横浜稲門会)の分科会に参加してきました。

  今回の講師は、同会設立メンバーの一人でもあるプルデンシャル生命保険株式会社、エグゼクティブライフプランナー プレミアムメンバーの清水隆志さん。大先輩であり、何年も前からいつかお話を伺いたいと思っていた方なので、非常に楽しみにしていました。テーマは、「営業を科学する -論理と感情、お客様は何を買っているのか」。

  プルデンシャル生命の営業ということで言えば、以前YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)で徳澤陵さん、そしてWBNでも小林一光さんのお話を伺ったことがあります。このように営業関連の話というと、現役を含むプルデンシャル生命出身者が多いという印象があります。というのも、同社の営業はフルコミッション(完全歩合制)と言って、入社3年目以降基本給は存在しないという厳しい環境の中で結果を求められる仕事であること。また”Blue Book”という科学的知見に基づいたマニュアルが確立しているといったことから、営業ノウハウのフロントランナーとして講演を求められることが多いようなのです。



  さて、今回も演題にある通り「営業は根性やセンスではなく、習得可能な科学的技能である」というものでした。一言でいうと、不安(不満)→必要→欲求→購入という購買心理プロセスに沿ってお客様の潜在ニーズを明らかにしていくというものです。これだけ書くと、いかにも当たり前のことのように思えます。直感的にもそうでしょうし、巷間は同じようなことを説いた情報で溢れています。しかし、ここからが実際にお話を伺うことの興味深い点で、清水さんの場合、その徹底ぶりが尋常ではないのです。どう尋常でなかったのか?その具体的な内容をご紹介することはできませんが、以下では有名な『孫子』に沿って、今回の重要なポイントと僕が理解したことを述べさせていただこうと思います。

  古代の兵法書『孫子』は、「兵の勝つは、実を避けて虚を撃つ(虚実篇)」と述べています。これを当てはめるなら、「実」とはお客様のニーズに対する顕在レベルか、潜在レベルの浅い掘り下げのことであり、「虚」とは潜在レベルの深い掘り下げということができます。本会に参加され、清水さんを含む3社からの提案を受けたことのある方が、「清水さんの提案は他の二社とは次元が違った」とおっしゃっていましたが、これは他の二社が「実を以て実」を撃ち、清水さんが「実を避けて虚」を撃ったからに外なりません。特に生命保険という一見差別化の難しい商品は、その提案が本当にお客様の望む本質に達した時、まさに「次元が違う」、「虚」となることでしょう。しかも「虚」というものは「実」の世界にいる者の目には映りませんから、「勝ちを見ること、衆人の知る所に過ぎざるは、善の善なる者に非ざるなり(形篇)」つまり、どうして良い成績を挙げ続けることができるのかが、一般の目から分かりにくく、模倣されにくいという事にもなります。



  お客様のニーズを徹底的に掘り起こし、真の問題解決策を提案するために、清水さんは、「自社の商品(サービス)と自分を常に磨くことが重要である」といった趣旨のことをおっしゃっていました。ポイントは提案前や勤務中だけでなく、「常に」であるということです。まさに「勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝ちを求む(形篇)」です。「戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり(謀攻篇)」とは「足で稼ぐ」ことでも「電話をかけまくる」ことでもなく、「やるべきことの本質を理解し、不断の準備を怠らない」ということなのだと思います。言い換えれば、「善く戦う者は、先ず勝つ可からざるを為して、以て敵の勝つ可きを待つ(形篇)」ということです。清水さんも転職した当初はマニュアル通りやっているのに上手くいかない日々が続いていたそうですが、なぜ上手くいかなかったのかと言えば、そもそもお客様はマニュアル通りに動いてくださるわけではないということ、そしてマニュアルは営業の本質を理解し準備した者が、問題解決策を適切に伝えるための手段に過ぎないからということだったのでしょう。このエピソードはまさに「勝つ可からざるは己に在り、勝つ可きは敵に在り(形篇)」という真理を表しています。

  恐らく誰もが知っているであろう『孫子』の名言「彼を知り己を知れば、百戦して殆うからず(謀攻篇)」。知ってはいても実践できている人が少ないのは、いつの時代も「当たり前のこと」を徹底できる人が少数だからなのでしょう。それは2500年前も同じだったようで、だからこそ『孫子』は「凡そ、此の五者は、将として聞かざるは莫し、之を知る者は勝ち、知らざる者は勝たず(計篇)」(勝敗を決する5つの基本要素は、将であれば誰でも聞いたことがあるはずだが、それを不断に実行してきた者が初めて勝利を収めるのであり、実行しなかった者、頭だけで理解した者は敗北するのである)と冒頭で釘を刺したのだと思います。何事にせよ、本質の理解と徹底、この二つが出来る人とそうでない人を分けるようです。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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