劇場版の大ヒットがその人気を決定づけた刑事ドラマと言えば『あぶない刑事』と『踊る大捜査線』、そしてこの『相棒』も代表格の1つでしょう。
(どうでもいいけど連ドラを映画化するとフジテレビは“◯◯THE MOVIE”、テレビ朝日は“◯◯劇場版”、TBSは“映画◯◯”と表記する慣わしがあるみたい)
私は『相棒』という番組を「日本の警察ドラマを全て“刑事がただ突っ立って謎解きするだけの紙芝居”にしてしまったA級戦犯」としてずっと揶揄して来ましたけど、実は2008年に公開された劇場版第1作『相棒 -劇場版-/絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン』は映画館で観てたりします。
当時はまだ両親が元気で休日はフリーだったし、隣町にシネコンがあったし(現在は閉鎖)、愛読してた年1回発行のムック「刑事マガジン」で猛プッシュされてた影響もあり、どこがそんなに面白いのか確かめたくなったんですよね。
今思えば「刑事マガジン」は東映の息がかかったムック(元はと言えばテレ朝&東映制作による特撮ヒーロー番組を特集した本のバリエーション)だから、同じテレ朝&東映の勝負作をプッシュするのは当たり前なんだけど。
観たら面白かったですw (脚本は『つばさ』『スペシャリスト』等の戸田山雅司さん)
そりゃ当時すでにTVシリーズがシーズン6まで数えてた人気作の、満を持しての映画化だからつまんない筈がないし、その確信が無ければいくらヒマでも観に行ったりはしません。
でも正直、あんなにヒットするとは思いませんでした。PR面で圧倒的に有利なテレビ局映画とはいえ、『あぶない刑事』や『踊る大捜査線』に比べると地味ですから。
明らかに客層が違うんですよね。つまり「大人の鑑賞に耐えうる作品」であり、それがちゃんと商売に繋がることを証明してくれた点が『相棒』の偉大さかも知れません。
警視庁内で“陸の孤島”と呼ばれる2人だけの特命係=杉下右京(水谷 豊)& 亀山 薫(寺脇康文)をはじめ、川原和久、六角精児、高樹沙耶、鈴木砂羽、木村佳乃、津川雅彦、そして岸部一徳ら当時のレギュラー&セミレギュラーキャスト陣が勢揃い。
東京ビッグシティマラソン大会が爆弾テロに狙われるストーリーってことで、有森裕子選手もゲスト出演。
そして内閣総理大臣を『はぐれ刑事』の平幹二朗さんが演じ……
もう16年も前の映画だからネタをバラすけど、爆弾テロの黒幕を演じたメインゲストが『特捜最前線』の西田敏行さん。それまで水谷豊さんとの共演はありそうで無かったかも?
映画が製作される数年前に起きた、紛争国に出向いた若い日本人ジャーナリストをゲリラ集団が拉致し、国に身代金を要求してきた事件をモチーフにした内容で、あのとき「自己責任だろ!」と被害者やその家族をさんざんバッシングした社会、そしてそれを放置した政府に対する復讐が西田さん(拉致されて殺されたジャーナリストの父親)の犯行動機でした。
練りに練ったミステリーの面白さだけじゃなく、そうした時事ネタを巧みに取り入れ、さりげなく作者の主張を滲ませる作劇にも『相棒』を「大人の鑑賞に耐えうる作品」たらしめた秘訣がありそうです。
ただし! ラスト近いシーンにおける長ったらしい“手紙の朗読”にはシラケました。それまで泣いてたのに「まだあるんかいっ!?」「しつこいぞ!」って思いました。
あれが私の言う「製作委員会システムの落とし穴」なんですよね、きっと。映画やドラマの本質をまるで解ってない素人(スポンサー企業の偉いさん)が「ここにもうひと押し“泣けるシーン”を入れろ」とでも注文したんでしょう。最後の最後に、つくづく残念です。
セクシーショットは西田さんの娘(つまり殺されたジャーナリストの妹)役で出演された、ゲストヒロインの本仮屋ユイカさん。劇中では初々しく見えたけど、すでに3年前にNHKの朝ドラ『ファイト』で主役を張っておられます。