昨年、プータローをこじらせてヒマだった時期に読んだ本が、文庫版『“宇宙戦艦ヤマト”をつくった男/西崎義展の狂気』なんだけど、これがメチャクチャ面白かったです。
『宇宙戦艦ヤマト』シリーズは松本零士さんの作品だと思ってる方が多いでしょうけど、松本さんはキャラクターとメカのデザイナーとして雇われ、メディアミックス宣伝の一環としてコミックを描かれたに過ぎず、実質的な作者はプロデューサーの西崎義展氏。
だから間違いなく凄い人なんだけど、残念なことに『ヤマト』シリーズは続編が創られるたび迷走の色を濃くし、その原因は我々素人の眼から見ても明らかに「西崎氏が作品を私物化してるから」でした。
ことに西崎氏が自ら監督を務めた劇場版『宇宙戦艦ヤマト 完結篇』と『同 復活篇』は本当にトホホな出来栄えで、商売のセンスと芸術のセンスは(当たり前だけど)相反するもんだってことを実に判りやすく証明してくれました。
ゆえに、西崎義展って人が一体どういう性格で、なぜ『宇宙戦艦ヤマト』というBIGタイトルをあそこまでオモチャに出来たのか、なぜ彼の暴走を誰も止められなかったのか、以前からすごく興味があったワケです。
ビジネスマンとしては本当に凄い人だけどクリエイターとしての才能は皆無。優秀なスタッフのお陰で『ヤマト』は一世を風靡したけど、それを全部自分ひとりの手柄にしちゃう傲慢さが転落を招き、挙げ句に覚醒剤所持で逮捕されるって顛末が角川春樹氏そっくりだなと思ってたら、実際この2人は互いに気の合う数少ない友達だったみたいです。
そりゃそうでしょう。よほど強欲な人でないとショウビジネスであれだけの成功は掴めないし、掴んだ後はもう“裸の王様”への道しかない。その孤独さを理解し合える相手が1人いただけでもラッキーかも知れない。
世間にはプロデューサー(製作)とディレクター(監督)の違いが判らない人も多いらしいけど、お金と人員を調達する代償として作品の所有権を得るのがプロデューサー、そして実際に現場で作品創りを指揮するのがディレクターの仕事。
だから前者はビジネスマン、後者はクリエイターで持つべき才能が正反対。オオタニサンみたいに二刀流で成功するには、それこそオオタニサン並みの才能とストイックさが必要でしょう。いかにもギャンブルが好きそうな西崎氏も角川氏もプロデュースのみに徹するべきでした。
西崎氏は2010年11月に海難事故で亡くなった(とされてる)けど、それが『ヤマト』の実写映画版とリブートアニメ版の企画が、西崎氏のエゴ(全部自分に監督させろと言い張って譲らなかった)のせいで暗礁に乗り上げつつあった時期なもんで、本当に事故死だったの?って思わずにいられません。なにせどえらいマネーが動くBIGビジネスですから。
それほど初期『ヤマト』大ヒットの栄光にしがみつき、周りの人々をないがしろにした挙げ句の転落人生。まったく同情しないワケじゃないけど、私自身も後期『ヤマト』の迷走ぶりにガッカリしたファンの1人ですから、“因果応報”の見本みたいな末路をちょっと面白がっても罰は当たらないかと思います。
今回もイメージビデオの内容とまったく関係ないこと書きましたが、『宇宙戦艦ヤマト』をつくった男は決して“天使なんかじゃない”って、強引にまとめられなくもありません。
鈴原りこさんは介護士を務めながらグラビアアイドルも兼任されてる元·地下アイドルで、趣味は散歩とライブ鑑賞、料理、そしてラーメン店巡りなんだそうです。