立原道造の詩が好きで、詩編「優しき歌」はこれまで何度も読み返していた。
「夢みたものは・・・」は序の歌の第Ⅹ編であって、
作曲家の木下牧子さんが親しい方の結婚式お祝いのため、この小曲を選んだわけだ。
立原道造は24歳で急逝する。彼の恋人が水戸部アサイさん。
堀多恵子(堀辰雄の妻)は”優しき歌の世界”の序文にこう述べている。
私はその夏の日、初めてアサイさんに出会った。
立原と同じ事務所に働く女性と聞いていたが、
いかにも立原さんの好きそうな楚々とした高原に咲く花のような感じを受けた記憶がある。
立原さんの没後、立原さんの周囲にいた友人たちはアサイさんの悲しみを汲み、
静かにそっとしておくのが一番だと思っていたようだ。
・・・
十年ほど前、追分にわざわざ訪ねて来られた時も私は留守をしていて会えなかった。
そのことをずっと残念に思っている。
アサイさんも今はもういない
「夢みたものは…」は、道造が恋人アサイにプロポーズした日の幸せを描いた詩であった。
夢みたものは ひとつの幸福
ねがつたものは ひとつの愛
山なみのあちらにも しづかな村がある
明るい日曜日の 青い空がある
日傘をさした 田舎の娘らが
着かざつて 唄をうたつてゐる
大きなまるい輪をかいて
田舎の娘らが 踊りををどつてゐる
告げて うたつてゐるのは
青い翼の一羽の小鳥
低い枝で うたつてゐる
夢みたものは ひとつの愛
ねがつたものは ひとつの幸福
それらはすべてここに ある と