北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

BV-206全地形車両、豪雪災害・津波災害を想定すればやはり本部管理中隊に必要だ

2014-02-25 23:55:05 | 防災・災害派遣

◆資材運搬車・雪上車を補完する装備

 やはりBV-206は自衛隊にとって必要な装備ではないのか、という話題を、四度目になりますが改めて。

Img_2529 自衛隊平成26年2月大雪災害派遣では、普段積雪量が少ない地域が突如の豪雪に見舞われ、交通インフラが機能不随に陥り、被害が拡大しました。自衛隊災害派遣に際しても、積雪量が一定以上の北関東信越地方を防衛警備管区とする第12旅団はともかくとして、首都圏を防衛警備管区とする第1師団には雪上車は装備されておらず、空中機動を重視することとなりました。

Img_4816 北部方面隊の雪中訓練等を視ますと、戦車や装甲戦闘車であれば圧雪されていない地域においても89式装甲戦闘車や73式装甲車のような装軌式装甲車であれば一定程度の機動は可能のようですし、スウェーデン軍のCV-90装甲戦闘車等は履帯幅を積雪地を想定したものとしていますので、この種の車両であっても対応できる部分はあるのかもしれませんが、やはりこの種の装備は広く装備することが難しく、現実的ではありません。

Gimg_5548 雪害を想定し78式雪上車をより広い管区に配備する、という選択肢はあるかもしれませんが、78式雪上車は冬季以外に運用出来ず、こうした装備を雪害の通常想定されない地域に配備することは現実的ではありません。今回は大宮の第32普通科連隊も出動していますが、常識で考えれば、大宮駐屯地に一定数の雪上車を常備しておく、というのは合理的ではないでしょう。

Gimg_9378  BV-206を普通科連隊などの本部管理中隊、その施設作業小隊に3~4両配備する。提案は、こうしたものです。BV-206であれば舗装道路上も機動できますし、夏季においては全地形車両として不整地や湖沼地帯など通常の装甲車両でも通行が困難な地域に進出できますので、例えば資材運搬や重装備の防御拠点への輸送に、応急陣地構築などに威力を発揮します。

Aimg_0625 水陸両用ですので、もちろん沖合の輸送艦から海岸まで、ということは性能上不可能ですけれども、津波などで進水した地形において輸送能力を発揮できます。78式雪上車は湖沼地帯に面すれば迂回するしかありませんし、そもそも夏季に用途は無い車両ですが、BV-206であれば、通年運用可能で、その中に冬季の積雪期が入っています、そして大規模災害時にも対応する、というもの。

Simg_5419 今回は雪害でしたが、全国の普通科連隊などの本部管理中隊施設作業小隊へ装備しておけば、津波災害における初動の情報収集と輸送に大きな威力を発揮することは間違いありません。履帯駆動方式で水上を移動しますので、速度は大きくありませんが津波災害において使用すれば、スクリューなどの推進器ががれきで破壊されることもありません。

Bimg_6028 こうした装備は少数分散配備するのではなく、集中配備し、必要に応じて空輸などで展開させるべき、という視点はあるかもしれませんが、集中配備したとして有事の際、災害に含むのですがあらゆる輸送能力が不足する状況下で、限られた全地形車両を空輸する余裕は無い訳ですし、それは今回の災害派遣においても雪上車の管理替えによる第1師団管区への展開は行われていないことで端的に見ることが出来ます。

Img_0739  本部管理中隊施設作業小隊への装備を提示したBV-206ですが、用途としては資材運搬車の後継という位置づけで、積雪地域においては10式雪上車の補完的位置づけ、という運用を想定します。資材運搬車は最高速度20km/h、3tを搭載という局地輸送向けの装備で、対してBV-206は輸送能力で2.2tとかなり制限されるものの最高速度は55km/hと資材運搬車よりも大きいため、局地輸送では時間当たり輸送力は大きいといえるでしょう。

Img_6006  ただ、全長が6.9m、全幅は1.87mですので、資材運搬車の全幅2.15mよりも幅の面では小型ですが資材運搬車の全長4.3mよりも長くなっていますので、車両輸送を考えた場合には一考の余地が残るかもしれません。戦略展開では資材運搬車が、戦術能力ではBV-206,というところでしょうか。

G12img_1250  もっとも、最高速度が55km/hあり、車幅も道路交通法の範囲内にありますので、BV-206は96式装輪装甲車や軽装甲機動車のように自走展開する事も可能でしょう。自走展開ですが、南極観測隊の雪上車は内陸部の観測施設へ長距離自走展開していますし、管区内の災害派遣であれば無理は少ない。

Nimg_0704  このほか、78式雪上車と比較した場合、最高速度は45km/hですのでBV-206のほうが有利で、搭載能力も1tですのでBV-206のほうが多くを搭載できます。ただ、取得費用についてや平坦支援の負担水準などについては総合的に判断するひつようはありますが。

Fimg_6639 一方、防衛出動に際しては重装備を山間部において輸送する際、人力搬送が不可能であった重迫撃砲や多目的誘導弾発射装置等を運ぶことが出来ます。このBV-206の導入提案は災害派遣能力の強化という部分に加え、防衛という自衛隊の最重要任務への対応能力も強化になる案、と考える次第です。

北大路機関:はるな

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コメント (7)
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