北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】木更津駐屯地創設45周年航空祭【07】痛コブラと銀幕の活躍(2013-05-12)

2017-07-02 20:12:26 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■痛コブラ!ファイナル
 痛コブラの女性自衛官が古賀沼美埜里さん、異世界自衛隊モノの最高傑作“アウトブレイク・カンパニー”のBL好き自衛官さんにしかみえない、今回の日曜特集です。

 ガメラ2レギオン襲来、1996年の作品ですが、特撮映画ながら日本SF大賞を受賞した作品で、ゴジラのような空想兵器や空想組織を敢えて省き、仮に現代日本に巨大生物災害が発生したならば、政府や自衛隊はどのように対処するのか、という壮大な作品でした。

 痛コブラのかわゆいマーキングですが、ガメラ2ではAH-1S対戦車ヘリコプターの編隊が作品最後にも重要な役割を果たします、ちなみにこの痛コブラ、痛オメガ共々大好評だったのですが、偉い人から怒られたので、この木更津航空祭の参加が自衛隊最後の参加です。

 1996年のガメラ2、木更津駐屯地がそのままロケ地として登場します。2016年のシンゴジラ、期せずしてガメラ2の二十年後にシンゴジラが制作されたわけですけれども、テーマとしては重なる部分も。ガメラ2での木更津駐屯地、霞目駐屯地という設定で登場します。

 木更津駐屯地、劇中で仙台市に非常事態が発生し、仙台市中心部から全面退避しなくては成らない状況へ、自力避難が困難な病人や負傷者を第1ヘリコプター団が広域避難輸送をおこなうという展開で木更津駐屯地にてCH-47に乗り込む避難民という描写が出てくる。

 広域避難支援、その瞬間、駐屯地内で激しい局地地震が発生し、駐屯地の外柵付近に地割れが、という迫真の展開をこの木更津駐屯地にて撮影、実は映画ではかなり長時間木更津駐屯地の場面が続き、木更津駐屯地祭にて格納庫や周りの樹木と風景をみますと、分かる。

 ああ、この角度からこの方角へカメラを回したのだなあ、ということがわかる。映画の部隊、いや、映画の舞台を訪問することを聖地巡礼というようですが、平成特撮へ一石を投じたガメラ2をしっかり観ました上で、足を運べば、新しい発見があるかもしれません。

 第1ヘリコプター団が長官直轄部隊であった時代の作品であるガメラ2は、今観てみますと発見というか思わず笑みがこぼれる描写がでまして、冒頭に三陸沖と北海道支笏湖へ隕石が落下し、自衛隊が災害派遣される情景で、第11師団・真駒内駐屯地、出てきます。

 第11師団・真駒内駐屯地と掲げられた営門から第11師団司令部付隊の化学防護小隊が化学防護車を先頭に続々出動する描写、現在は第11師団は第11旅団へ縮小改編されていまして、一方で化学防護小隊は師団司令部付隊から化学防護隊へ増強改編を受けました。

 第11化学防護隊は、さらに特殊武器防護隊へ拡大改編を受けています。化学防護隊は化学兵器への対処装備を中心とした化学科部隊ですが特殊武器防護隊は核兵器や放射性兵器と生物兵器への対処を想定、大都市を隊区に有する師団や旅団へ改編されているのですね。

 ガメラ2の冒頭だけでも、自衛隊の改編史を少しだけ俯瞰できた印象を受けるのですが、真駒内駐屯地の第11師団時代の表札は、そのまま真駒内駐屯地資料館、明治時代の屯田兵時代からの貴重な展示品が並ぶ資料館で、ガメラ2の思い出に浸ることができるかも。

 また、当時第11師団の第11戦車大隊は74式戦車を真駒内駐屯地においていまして、戦車駐車場も劇中にでてきますし、富士駐屯地の毎年駐屯地祭が行われるグラウンドもガメラ2にはしっかりと登場し、当時の面影はしっかり残っていまして、一寸驚かされます。

 ゴジラvsビオランテ、ガメラ大怪獣空中決戦、輸送ヘリコプターの大編隊が印象的な緊迫感を醸し出します、非日常の代名詞といいますか、航空部隊駐屯地の近傍以外では中々、ヘリコプターの大編隊はみられません、京都でも年頭飛行訓練始め以外ではみられません。

 シンゴジラでは第4対戦車ヘリコプター隊のAH-1S対戦車ヘリコプターが印象的な役割を果たしました、20mm機関砲を搭載したAH-1S対戦車ヘリコプター、20mm機関砲だけならば実際北海道で害獣の海獣駆除へ掃海艇搭載のものが使用された実例があるのですよね。

 AH-1S対戦車ヘリコプターは、木更津駐屯地の駐屯地記念式典や飛行展示が行われましたこの場所にて、出動する状況などのロケが行われていまして、映画ではさり気なくAH-1S対戦車ヘリコプターのAH-64D戦闘ヘリコプターへの更新が完了しない状況もでています。

 AH-64D戦闘ヘリコプター、富士重工と国の製造中断を契機としての訴訟事案により、AH-1S対戦車ヘリコプター後継機調達そのものが宙に浮いてしまった状況ですが、特撮映画などですと見栄えを重視して例えばゴジラvsデストロイア等のように新装備で全て更新されているよう描かれる事が実際、多い。

 痛コブラ、しかし、痛コブラの状態のまま応急出動の必要が生じた際には痛コブラのまま航空打撃を展開しなければならないのですよね、実際、2004年の新潟中越地震では航空自衛隊のCH-47が航空自衛隊50周年記念塗装のまま災害派遣へ出動した事例もありました。

 防衛出動命令への痛コブラ応急出動、敵もTOWに20mm機関砲に70mmロケットを撃ちまくり襲いかかる痛コブラを見上げながら、流石は、俺の妹がこんなに可愛いわけがない、やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。、あっちこっち、きんいろモザイク、の聖地、千葉は木更津の部隊だ、と恐れおののく状況、ちょっとないですか。

 シンゴジラでの自衛隊描写は、東部方面隊幕僚長が陸将補なのはおかしい、第1普通科連隊長ヘルメットバンドしっかり装着しないと、会議の時に軽食かじらなければ何時ご飯食べるのだ、という現場からの厳しい指摘がありましたが、概ね良い作品だった、とのこと。

 巨大怪獣出現には第1ヘリコプター団のCH-47というよりは、ミサイルを搭載し航空打撃力の大きな第4対戦車ヘリコプター隊のAH-1Sしか出番がないよう思われるかもしれませんが、第1ヘリコプター団のCH-47輸送ヘリコプター32機は極めて重要な役割を担います。

 実際に膨大な火力と物量で巨大生物へ挑む場合にはそれは後方の弾薬集積所などから師団段列地区へたとえばミサイルや砲弾などをかき集めて輸送しなければならず、このために輸送ヘリコプターの迅速な輸送能力は不可欠ですし、優先度の高い資材は意外とおおい。

 CH-47の空輸能力はミサイルシステムやレーダーなどはもちろん、装甲車両などを敵接近経路などに展開させ、集合と分散を阻害し、我はかくする、敵にかくしむる、という原則、相手の選択肢を制限してゆく任務も重要な一つというよりも勝利への要諦といえましょう。

 このCH-47ですが、先頃川崎重工からライセンス生産100機目のCH-47がロールアウトしたとのことです。老朽機の一部は用途廃止されてしまいましたが、一部は勢力維持改修として延命が為されていまして、米陸軍などでも実施されている延命改修の日本版です。

 航空自衛隊と陸上自衛隊の機体をあわせて100機、という規模になりましたが、これだけの多数の輸送ヘリコプターを装備するのは自衛隊の他、アメリカ陸軍とアメリカ海兵隊くらいのもので、もう少し中型の機体を加えればロシア軍等とともにならぶ状況、です。

 この多数のCH-47は自衛隊の、というよりも、日本の至宝というべき装備で、島嶼部防衛はもちろん災害派遣にも輸送ヘリコプターの輸送力はきわめて大きな意味を持ちまして、これだけの部隊がしっかり整備維持されているのは意義が大きい、と考えつつ帰路に就き、アクアラインで富士へ帰る96式装輪装甲車と一緒に渋滞に巻き込まれました。これにて【日曜特集】木更津駐屯地創設45周年航空祭、全七回は完結です。最後までありがとうございました。

北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする