北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】防衛装備庁技術シンポジウム,無人機搭載早期警戒機システムと島嶼部防衛用新対艦誘導弾マルチプラットフォーム化

2024-11-26 20:17:08 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 防衛装備庁技術シンポジウムの話題を今回も紹介しましょう。

 防衛装備庁は無人機搭載早期警戒機システムを研究中である、これは防衛装備庁が主催した防衛技術シンポジウムにおいて発表されたもので、センシングシステム研究室が主導、具体的には護衛艦などに搭載する無人機へ装備し、護衛艦のセンサーでは見通し線外にある脅威に対して、母艦から前方へ進出し警戒管制に充てるという。

 小型無人回転翼航空機への搭載を想定し、シースキミング巡航ミサイルや小型無人機、ミサイルや無人航空機の発射プラットフォームなどを警戒監視することは狙い。運用では小型無人機の機首部分に搭載し、護衛艦など母艦から50km程度まえに前進させる、AI人工知能を用いた信号処理をおこない、レーダー情報は無人機が解析することを目指す。

 技術的課題としては、想定では5mから7m級の無人機を想定している上で、この規模の航空機には搭載制約が厳しくシステムの小型化が必要である点、運用でもルックダウン方式のレーダー索敵では大量のシークラッターが発生するためクラッター抑圧処理能力の高性能化が必要、そして無人機が小型であるため探知能力の強化が必要であるとしている。■

 ドローン搭載HPM技術について。防衛装備庁は防衛装備庁技術シンポジウムにおいて、現在開発している高出力マイクロ波による無人機迎撃装置を将来的に小型無人機へ搭載する技術開発の状況を発表しました。これによれば、実用化は令和11年度以降を目指していると好い、そのためのHPM照射装置性能向上が令和6年より開始されているとのこと。

 HPM照射装置の性能向上は、小型化軽量化が課題で有り、このために新たなHPM発生方式の検討、その上で将来的な技術可能性検討をすすめ、これらに依拠して、ドローンに搭載することが可能かと謂う点、そして管制技術の研究、その上でドローン対処能力の実証研究段階に進むとのこと。基本となるHPM技術は既に構築されていることを示す。

 無人機はロシアウクライナ戦争において多用されているものの、短期間で対抗技術が開発されるため、数年単位で備蓄したとしても数年後には陳腐化して使えないという課題が有り、逆の視点から考えれば高出力マイクロ波照射装置は、搭載する無人機ではなく、その対処能力を短期間では陳腐化させないもので固める、ねらいがあるのでしょう。■

 島嶼部防衛用新対艦誘導弾について、防衛装備庁は技術シンポジウムにおいてその概要を解説しました。これは従来の対艦誘導弾では超音速飛行により敵対勢力の艦艇に対して迎撃能力を突破する、超音速飛行を用いて相手の対処能力に時間的制約を加えることが目的であるとされていましたが、技術発展により阻止される可能性が出てきていた。

 ステルス化と高機動化、そして射程延伸がこの解決策として模索されているもよう。ステルス設計についてはこの種のミサイルとしてはコングスベルク社がJSMミサイルとして低RCS構造を採用し既に各国に採用されている点が特筆されますが、島しょ部防衛新対艦誘導弾についてもエッジマネージメント技術や曲がりダクト構造を採用しステルス化へ。

 RCS模型によるレーダー反射面積計測も既に実施されており、継ぎ目や突起物を省くとともに探知されにくいミサイルを開発するという。また機動性については、BANK-TO-TURN技術により近接防空火器や艦対空ミサイルの脅威がある距離においては不規則機動を、敵早期警戒機の覆域内においては欺瞞機動をとることで生存性を高めるといいます。■

 島嶼部防衛用新対艦誘導弾はマルチプラットフォーム化をすすめる。防衛装備庁は防衛技術シンポジウムにおいて、開発が進められている島嶼部防衛用新対艦誘導弾は、地上発射型にくわえて、航空機、これも哨戒機や戦闘機からの発射型に加えて、護衛艦などから、等からと謂うのが重要、海上発射する方式を開発しているとされています。

 地対艦誘導弾として、島しょ部防衛という用途から地上発射型が重視されているこれまでの開発に加えて、必ずしも島嶼部だけの運用に限らないマルチプラットフォーム化を明示したと謂うことは重要です。ただ、海上発射型については、海上と明示されているということは、現段階では潜水艦への搭載は念頭としていない、ということでしょうか。

 海上プラットフォームは、護衛艦のイメージ写真が採用されていましたが、防衛装備庁は今後海上自衛隊が導入する哨戒艦への武装モジュール搭載にかんする研究も並行しているため。射程の長い島しょ部防衛用新対艦誘導弾を哨戒艦へも搭載し、有事の際に安全な後方から哨戒艦による長距離打撃の一端を担わせる構想もあるのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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ウクライナ情勢-ドニプロ攻撃未確認弾道弾”オレシュニク”は2011年開発のRS-26ルベシュ大陸間弾道弾改良型か

2024-11-26 07:00:03 | 先端軍事テクノロジー
■防衛情報-ウクライナ戦争
 1979年東京サミットにおいて西欧地域を直接攻撃できる新兵器として議題となったSS-20ミサイルというものがありましたが。

 ロシア軍が°ドニプロ攻撃に用いたミサイルはRS-26ルベシュ弾道弾改良型か、ISWアメリカ戦争研究11月21日付ウクライナ戦況報告によれば、プーチン大統領はこのミサイル攻撃を新型のオレシュニク弾道弾による攻撃と発言しました、そしてこれの使用はATACMS陸軍戦術ロケット弾によるロシア本土攻撃への報復であるとも発言しています。

 オレシュニク弾道弾はRS-26大陸間弾道弾の派生型であったと分析されていますが、RS-26そのものではありません、何故ならばRS-26に通常弾頭型は開発されておらず、核弾頭かアバンガルド極超音速滑空兵器を暖冬として装備するのみ、後者については通常弾頭型が開発されていますが、今回の着弾映像を見る限り極超音速滑空兵器の特性ではありません。

 RS-26ルベシュはNATOコードネームSS-X-31,モスクワ熱技術研究所により2011年に開発されたミサイルで、射程から一応は大陸間弾道弾に区分されるものです。一応、と明示したのはRS-26が開発された当時は米ロ間においてINF中距離核戦力禁止条約があり、これは射程500kmから5500kmまでの地上発射型ミサイルの開発を禁止するものでした。

 ロシア側はRS-26の射程は5800kmであり、INF全廃条約には違反していないと主張しています、が、RS-26の射撃試験について最初の二回は射程2000kmで試験されており、NATOはじめ、これは事実上、INF禁止条約の範囲内の装備を射程でじゃっかん上回るとして開発しているだけではないかという疑義を招くこととなっています。

 SS-20中距離弾道弾の後継装備ではないか、SS-20は日本でも首相がG7サミットで知らなかったとして政治問題化した中距離弾道弾、ソ連側正式名称RSD-10パイオニアの後継装備とも考えられています、このSS-22の射程は5800kmで1976年から配備されていますが、1987年のINF全廃条約を受けソ連では退役、第三国立会いの下、無力化されている。

 RS-26は射程からSS-20の後継装備に当ると目されていたのは前述の通りですが、2011年当時はまだINF全廃条約が機能していた為、欧米の批判を受け当時のロシア政府は模擬弾頭による試験を終了後、量産や配備にすすめていません。ただ、RS-26派生のミサイルであれば、ロシアウクライナ戦争はICBMが実戦使用された人類史上初の戦争となります。

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