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中東危機と自衛隊アラビア海派遣【3】護衛艦たかなみ,二月八日に横須賀出航!アラビア海へ

2020-01-20 20:18:59 | 国際・政治
■政府,緊急時には海上警備行動
 イラン情勢は緊張と鎮静化を経てイラン国内の不穏情勢が続く中、アラビア海への自衛隊派遣が具体化しました。

 海上自衛隊は護衛艦たかなみ、を2月8日、アラビア海へ派遣します。派遣部隊はタンカーが攻撃されたホルムズ海峡やペルシャ湾までは展開せず、アラビア海を遊弋し一年間調査研究と情報収集にあたるとのこと。従来はこの種の任務は特別措置法を制定し派遣していましたが、今回は特措法ではなく、自衛隊法にもとづく調査研究名目での派遣という。

 政府はタンカーへの具体的脅威が顕在化した場合には自衛隊法にもとづく海上警備行動命令を発令し、近傍の護衛艦を急行させる方針を示していまして、また、護衛艦に加え那覇基地よりP-3C哨戒機を2機派遣、ソマリア沖海賊対処任務に参加しているP-3C哨戒機1機を転用し、アフリカ東部のジブチ航空拠点を基点に情報収集任務にあたる、とのこと。

 たかなみ、増派によりソマリア沖海賊対処任務にあたる護衛艦と合わせ2隻体制が確立するのですが、2隻の護衛艦に対応できる任務、これは意外と多いのです。護衛艦にはSH-60K哨戒ヘリコプターを常用1機搭載可能で、予備機を搭載する事も可能です。また、長時間の滞空が可能であるスキャンイーグル無人機を運用する事も可能で航空監視を補完します。

 むらさめ型、たかなみ型、ソマリア沖海賊対処任務に派遣される護衛艦は第二世代の汎用護衛艦であり、FCS-2射撃管制システムとESSM発展型シースパロー短距離艦対空ミサイルにより50km圏内の航空脅威へ対処する事が出来ます。P-3C哨戒機とのデータリンクは可能であり、またNATO諸国のペルシャ湾船団護衛有志連合とのデータリンクも可能です。

 タンカーへの攻撃切迫等、緊急時に際して、護衛艦は30ノットで航行でき、高速航行の際には燃料消費が急激に悪化しますが、共に満載排水量6000t規模の大型水上戦闘艦にあたり、航続距離には冗長性が担保されています。コクカカレイジャス号攻撃のような事態が発生した場合は、タンカーへの攻撃は今のところ対艦ミサイル等は使用されていません。

 リンペット機雷を小型舟艇に積載し航行中に装着し爆破する、携帯型規模の小型無人機による体当たり攻撃を行う、タンカーへの攻撃はこうしたものであるため、哨戒ヘリコプターにより十分制圧可能です。SH-60K哨戒ヘリコプターにはヘルファイア空対艦ミサイル搭載可能、国籍不明の小型舟艇に搭載可能である防空火器に対し破滅的な威力を発揮します。

 ただ、イラン軍は革命防衛隊を含め強力な地対空ミサイル部隊を有しており、この場合は超低空まで降下し海面近くの高度でやり過ごさねばなりません、しかし、SH-60Kは大きな威力を発揮する事となるでしょう。この存在感が抑止力という。P-3C哨戒機は海上自衛隊では最新鋭のP-1哨戒機に順次置き換わりつつありますが、世界屈指の最新鋭機でもある。

 P-8A哨戒機とP-1哨戒機を除けば、P-3Cは広範囲を哨戒飛行する世界有数の性能を有する哨戒機です。海上自衛隊は100機を導入、順次P-1に置き換わっていますが、総数ではP-3Cがまだ主力で有ると共にP-1哨戒機予算不足による調達の遅れから延命が進む。超長距離の監視手段を有しており、この性能の哨戒機を保有する国はそれほど多くありません。

 コクカカレイジャス号襲撃事件、ホルムズ海峡周辺での脅威は、イランイラク戦争においてイラン軍によるタンカー無差別攻撃が実際に発生しており、イランイラク戦争での船舶攻撃はペルシャ湾とホルムズ海峡という限られた海域であったにもかかわらず、被害が増大、日本タンカーであるケミカルベンチャー号を筆頭に日本関連船舶の被害も大きかった。

 タンカー戦争とも言われたイランイラク戦争での船舶損害、修復不能な損害船舶トン数は第二次世界大戦における太平洋と大西洋や地中海とインド洋に南シナ海などでの損害の四分の一近くに上る、極めて深刻な船舶被害が生じています。アメリカ海軍やソ連海軍による船団護衛、ソ連は自国向けクウェートタンカーへ早い時期から護衛を派遣しています。

 アーネストウィル作戦としましてアメリカ海軍も1987年から原子力空母エンタープライズを中心にミサイル巡洋艦、そして駆逐艦3隻とフリゲイト4隻を派遣する船団護衛を実施しています。もっとも、この際にミサイルフリゲイトスタークがイラク空軍のミラージュF1による誤爆でエクゾセミサイルが命中、という椿事もありましたが、成果はありました。

 海上自衛隊の派遣する二隻の護衛艦と哨戒機で何処までの事が出来るのか、という視点に対しては、少なくとも同時並行して複数のタンカーに、駆け付け警護、というべき任務は実施できます。また、情報収集し、武装勢力の正体を監視し、不測の事態に備えている点を誇示するだけでも、日本タンカーに対する攻撃を抑制し紛争拡大を阻止できるでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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