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【京都幕間旅情】六波羅蜜寺,空也上人が疾病を祓い今も安寧願う西国三十三所第十七番札所

2020-02-26 20:16:37 | 写真
■洛陽三十三所観音霊場札所
 清水寺に建仁寺と京都駅から東は世界に知られた寺院が並びますが皆様、急ぎ過ぎてはいないでしょうか。

 六波羅蜜寺。山号を補陀洛山とする朱色の美しい寺院は京都市東山区松原通大和大路東入に鎮座する真言宗智山派の寺院です。多くの方は五条通を清水寺へ上りますが、鴨川を渡り手前を東山の方へ歩み進めますと、空也上人所縁の寺院が静かにしかし確かに広がる。

 本堂と弁財天堂と宝物収蔵庫。六波羅蜜寺の伽藍は今日でこそそれ程壮大なものではありませんが、仏教美術の多くを中世から今日に継承しました収蔵庫とともに応仁の乱以前の貴重な仏教建築が今日に維持されており、宝物殿以外は日中自由に拝観ができるのです。

 西国三十三所第17番札所として列せられると共に洛陽三十三所観音霊場第15番札所、そして神仏霊場巡拝の道第118番であり都七福神巡り弁財天札所という、格式ある寺院の歴史は千年を遥かに超える祈りの場で、建立当初には都の西にて西光寺と称していました。

 空也上人が造営しましたお寺は、天暦5年の西暦951年に遡り、この頃の京都は疾病病魔を払うべく建立され、空也が佛鉦鳴らし念仏唱えつつに悪疫退散を祈り歩く姿は、木造空也上人立像として日本史や美術教科書に並ぶところですが、この六波羅蜜寺に奉じられる。

 西光寺として建立された当時には、京都に蔓延する疾病の原因が皆目見当つかず、空也上人は僧侶600名と共に十一面観音像を山車に乗せ、念仏を唱えると共に洛中を巡幸し、疾病祓いを願いました。いわば当初、御旅所に近い形での西光寺であったのかもしれません。

 本堂は貞治2年即ち1363年の修営外陣を板敷きとしたもので、応仁の乱を辛うじて生き延びた仏教建築です。この本堂は蔀戸に四半敷土間を組み合わせた所謂天台式建築様式となっていまして、西光寺から六波羅蜜寺となった後の造営様式が如実に見て取れましょう。

 十一面観音を御本尊として奉じる御山ですが、この御本尊木造十一面観音立像は西光寺の時代に御本尊として奉じられたという、平安時代の彫像である秘仏です。1999年に国宝に指定されていますが特別拝観は辰年数日間に執り行われるのみであり、時を待ちましょう。

 木造四天王立像は空也の自からの彫像と伝わりますが、寺には本堂宝物館に数多仏教美術が並びます。前述の木造空也上人立像は鎌倉時代にかの仏師運慶の四男である康勝の作といい、平清盛像木造僧形坐像や木造伝運慶坐像という運慶の肖像彫刻も安置されています。

 六波羅蜜寺となりましたのは空也の没後、法主として貞元年間の西暦977年に比叡山より中信がお寺を天台別院として天台宗寺院へ改めた上で六波羅蜜寺としました。この六波羅蜜寺とは仏典の六波羅蜜に由来したとも、当地の古名“六原”に由来したとも伝わります。

 平清盛はじめこの六波羅の地名は日本史に示される立地ですが、平清盛が今出川の旧邸から改めて造営した六波羅殿、そして鎌倉幕府が朝廷を監視するべく京都に置きました六波羅探題も、この六波羅蜜寺の当たりと云います。そしてお寺は最盛期非常に広かった、と。

 江戸時代には五条通が現在ほど広くは無かった事は当然としても、清水寺や大谷本廟に隣接する程の大伽藍が広がっていたとされますが、明治維新とともに始まった廃仏毀釈による寺域売却が進んだことで狭くなっており、周辺は町家や学校に囲まれる立地となります。

 学校に囲まれた事は実のところ残念な結果をもたらしまして、2009年に近所の学校校舎建て替え工事を実施した際に振動により宝物殿収蔵品が損傷する事態となり、京都市との間で係争がありました。校舎解体は他にも残っており、今後予断を許さない状況があります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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