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CB90/Stridsbåt90H【1】襲撃艇,ニッポンの安全保障/防衛に必要な装備-NATO加盟のスウェーデン製装備

2023-10-05 20:20:41 | 防衛・安全保障
■武装中立国スウェーデン
 武装中立政策を転換しNATO加盟が決定したスウェーデンについて今後日本とも防衛協力が増大する事を背景にスウェーデン製防衛装備品について考えてみましょう。

 スウェーデン製の防衛装備品は日本の防衛力整備にも非常に共通性のある装備品が多く、例えば89式装甲戦闘車が配備開始された当時に同時期に開発されたCV-90装甲戦闘車は日本とスウェーデンどちらの装甲戦闘車が強力なのか35mm機関砲と40mm機関砲で話題となったり、75式自走榴弾砲とバンドカノン自走砲の共通点が挙げられました。

 CV-90装甲戦闘車は開発当時は幅広の履帯により高い軟弱地形の踏破能力とともに各国装甲戦闘車が対戦車ミサイルに対戦車戦闘能力を求める一方、敢えて強力なボフォース40mm機関砲を備えつつしかし対戦車戦闘は乗車する対戦車ミサイル組の下車戦闘に任せるなど割り切った設計であり、今からでも自衛隊はCV-90の取得を考えては、とおもう。

 アーチャー装輪自走榴弾砲はバンドカノン自走榴弾砲の自走装てん装置付砲塔システムにボフォース社製FH-77榴弾砲の52口径長砲身型を合わせたような設計であり、車幅だけは広く装輪車両としては若干速度は遅いのだけれども、トラックに榴弾砲を括り付けた19式装輪自走榴弾砲よりは明日にでもアーチャーのライセンス生産を検討しては、と。

 CB-90襲撃艇、さて今回の視点ですがスウェーデン製装備には注目すべきものがたくさんあるという視座の上でもう一つ、スウェーデンの誇る高速襲撃艇を自衛隊と海上保安庁に導入してはどうか、という視座です。海上保安庁、十年前であればCB-90を海上保安庁へ、という提案はしなかったところですがこの十年間で各国のCB-90運用は変わった。

 哨戒艇としてCB-90を導入している国が少なからず生まれているのですね、例えばマレーシア海軍の17隻や麻薬取締任務に追われるメキシコ海軍の48隻と導入計画を進めているペルー海軍が24隻、それに少数ですがギリシャ沿岸警備隊の3隻、またドイツ警察が過去にG8サミット警備用に若干数をリースした事例もあり、アメリカやイギリスも。

 すずかぜ型巡視艇の後継用に、海上保安庁で大量調達できないか。すずかぜ型巡視艇は197隻も大量建造されていまして、老朽艇を新造艇が置き換えているという点で海上保安庁の標準的な巡視艇となっています。もちろん大量建造される背景には安価、という部分がありますのでCB-90のような普通の値段の船艇を選定するのは簡単ではないのだけれど。

 CB-90,空虚重量15.3tで全長15.9mで全幅3.8m、喫水0.8mで水深は2基のスカニアDSI14-V8エンジン合計出力1250hp、最高速力は40ノットに達し航続距離は20ノットで440㎞、乗員は3名で士官2名と機関士1名、ただ艇内の多目的区画に完全装備の両用戦要員21名を収容でき、スウェーデンでの標準運用では12.7mm機銃3丁となっています。

 すずかぜ型巡視艇、総トン数23t、全長20mtと全幅は4.3m、喫水2.3mでMTU社製8V2000M93ディーゼルエンジン2基により出力1820hpで最高速度は30ノット、航続距離は14ノットで374㎞、乗員は5名で放水銃を搭載、警備力強化型という一部建造艇には防弾装甲が加えられています。公称は20m型巡視艇、海外へも供与されている。

 海上保安庁の巡視艇と比較し、形状は全く異なるのですが大きさと航続距離についてはかなり共通点があることに驚かされます。小さい、と思われるかもしれませんが200TpbS強襲輸送艇という、スウェーデン海軍はCB-90の前型となる艦艇があり、こちらは満載排水量31tで全長21.5mと全幅4.2m、速力は20ノットですが、ほぼ大きさが重なる。

 ジェフ級揚陸艇というスウェーデンのお隣フィンランドに近い大きさの哨戒艇を兼用できる高速艇があり、こちらは一隻283万ユーロで満載排水量32tと最高速力40ノットに全長は20mとほぼほぼ巡視艇すずかぜ型と同程度のものがあるのですがCB-90と比較しますと、揚陸艇の形状をしており巡視艇的ではない、その点でCB-90は多用途性が。

 すずかぜ型は数が必要な巡視船であるから、一万円でも安い方がよい、こう指摘されますと財布事情を無視した場合、数が揃えられないという悪循環を自衛隊装備で痛いほど感じていますので何とも言えないのですが、巡視艇として使う場合は機関銃は必要ありませんし、抑えられる部分は省略し、退役まで実現しないが後日装備として放置する手も。

 CB-90,海上保安庁が配備すべきと考えるのは、船首部分に密閉型扉を有して尖閣警備などで沖縄県警機動隊などを緊急派遣する際に有用であるし、臨検などにも有用である一方、前甲板は密閉構造ですのでグレーゾーン事態における敵対勢力の投石などに対して強い。そして重要な点はスウェーデンは多数の余剰CB-90をリースで貸与している点です。

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1 コメント

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Unknown (成層圏)
2023-10-08 16:53:22
CB90は良い装備ですね。
 自衛隊が本気で離島奪還をするつもりなら、早期に装備するべきだと思います。
非装甲の複合艇や鈍足のAAV7だけでは、上陸が大変でしょう。CB90なら、防弾、高速、火力がある程度あり、同規模のロシアのラプトル型哨戒艇は対戦車ミサイルもオプションで装備してますし。
 船体が小さく荒波に弱いので、南西諸島の与那国島や石垣島への配備が妥当ですね。海保との共用運用でもいいかもしれません。
 個人的には、少し小さいですが、米海軍が装備しているSOC-Rが一番現実的だと思います。8名しか上陸出来ませんが、装甲、速度、火力があり、サイズも11m作業艇と同サイズなので、もがみ型の後部ハッチから排出出来ます。
 尖閣有事に真っ先に急行し、機雷を撒くもがみ型二隻に各二隻搭載出来れば、ちょっとは役に立つかと考えます。
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