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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】第7師団創設56周年記念行事(10)99式自走榴弾砲の第7特科連隊と装甲の第7施設大隊(2011-10-09)

2022-05-29 20:11:53 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■野戦特科と装甲施設の威容
 本日は東千歳駐屯地にて部内及び報道限定での第7師団創設記念行事が行われたところでして、この2011年の師団祭写真にて雰囲気を思い浮かべてくればと思います。

 155mm榴弾砲の射程はどんどん延伸していまして、遠くない将来に100km時代が到来しましょう。100kmの射程、こうなりますと可能となる任務は多い、まず100kmあれば一個大隊10門で2個射撃中隊を分散運用することで先島諸島全域を防衛可能となります。

 99式自走榴弾砲は長砲身の52口径155mm榴弾砲を採用していまして、ここまで砲身の長い火砲は砲身加工に相当な技術が必要なのですが、日本の倍は日本製鋼が連綿と技術を継承してくれましたので維持できています、火砲のほかに艦砲も製造しているのですからね。

 75式自走榴弾砲が30口径砲身を採用した時点でM-109自走砲が22口径でしたので、当時としては長砲身と云われたものでした、が当時のソ連軍火砲よりも射程で劣っており、欧州共同開発にて39口径のFH-70榴弾砲が開発、39口径が西側の標準砲となっています。

 FH-70の39口径、FH-70は自走も可能なのですが重く、米軍は独自にM-198榴弾砲としてV-107ヘリコプターにより空輸可能な火砲を開発しまして採用、逆に野砲王国スウェーデンは3発の自動装填装置を備えたより大型のFH-77榴弾砲を開発、自衛隊も検討した。

 FH-77などはクレーンに三発を釣り上げて装填装置に装填し13秒間で3発を撃ち切ってしまう素早い効力射を発揮します、この39口径砲の後継に南アフリカが45口径のGC45を、スペインも45口径砲を開発し新しい潮流か、ともわれたのですが実はそうは参りません。

 M-777,イギリスなどはUFH超軽量砲としましてアメリカが採用するM-777を開発しますが世界が45口径を迷っている時代に敢えて39口径で、しかし重量をFH-70の半分程度に抑えた牽引砲を開発します、要するに牽引砲は牽引が必要、長すぎると牽引が難しくなる。

 PzH-2000自走榴弾砲、ドイツが52口径の自走砲を開発しますが52口径火砲というのは全長が長くなりすぎますのでどうしても牽引するのは難しく、自走榴弾砲にしなければトラックの中砲牽引車とした場合に道路上でも錯綜地形でも無理な長さになったためという。

 カエサル装輪自走榴弾砲、52口径という火砲はフランスのGIATが逆転の発想としまして、トラックで曳くのが難しいならばトラックに載せるという発想を試しました。これは当時としては非常識ともいえる発想です、何故ならば何故FH-70は自走できるのか、という。

 中砲牽引車は要するにトラックですから遠方からは発見されやすい、だからこそ射撃陣地に進級しますと牽引車は素早く待機位置へ移動します、ただ、カエサルは、39口径火砲の25kmから30km射程は最早古く40km以遠を狙う為、もう大丈夫だろう、という発想へ。

 火砲は52口径が限界なのか。52口径火砲は50km以遠を狙うものとなります、射程延伸弾を用いれば60kmの射程も見えてくるのですが、例えば中国の52口径155mm自走榴弾砲である05式自走榴弾砲は射程延伸弾は39kmですがWS-35砲弾は射程100kmで叩く。

 05式自走榴弾砲のWS-35砲弾が100kmを飛翔したのは2013年でした、驚いたのですがWS-35砲弾の輸出仕様改良型が試験により達成したものといい、詳しく調べるとこの砲弾は滑空砲弾として翼を持ち、ロケット補助推進と併用している、不思議な弾薬なのでした。

 ERCA拡張型火砲、アメリカは58口径の将来火砲を開発していますが、ERCAはM-982A1エクスカリバー誘導砲弾を用いまして70kmを達成します。これは空軍第一で野砲冷遇の米軍ではかなり驚くべき成果といえたのですが、車体がM-109なので砲塔が余りに巨大だ。

 ラインメタルHX-3-155HSP,本命といえる怪物のような自走砲は2021年に構想が発表されました、MAN社製戦車輸送車である新型のHX-3トラックに、ドイツの技師たちは60口径砲を搭載する事を思いついたのですね、60口径砲身は50t級のPzH-2000でさえ長い。

 HX-3-155HSPというのは、要するにPzH-2000を輸送する為の大型トラックに直接砲塔を搭載するならば、52口径火砲よりも遥かに長い60口径砲でも搭載できる、という。巨大な自走砲でも搭載出来ないものをその輸送車ならば搭載できるというまさかの逆転発想です。

 エクスカリバー誘導砲弾、GPS誘導砲弾が開発されています。これは射程延伸弾を兼ねていまして、これにより長い射程と命中精度を両立できる構図です、しかし一発あたりは携帯対戦車ミサイルと同程度の費用、従来の砲弾と比較し格段に高価であることは否めない。

 L-60砲という60口径155mm砲は通常榴弾でも80kmの射程を叩き出しエクスカリバー誘導砲弾を用いれば100kmに達するという。エクスカリバーはM-982は効果でしたが量産型のM-982A1は安価となり、オランダは199発を2000万ドルで購入、10万ドル弱だ。

 100kmの射程というのは、沖縄本島北部と奄美大島、そして鹿児島県大隅半島に配置するだけで、南西諸島を火砲だけで防衛することも不可能ではありません。その上で砲弾にはミサイルにはできない大きな意味と可能性を備えているのですね、その可能性とは。

 ミサイルは射撃してしまえば、命中しなかったとしても不手際はこちらにあり弁解はできません、それは開戦の口実となり、なにしろ誘導弾ですので警告射撃には使えない、相手に開戦の口実を与えてしまうのです。しかし、野砲であればわざと外すことが可能だ。

 警告射撃、これは今後想定しなければならないグレーゾーン事態に際して必要な手段です。ただ、FH-70榴弾砲の射程を考えますと、39km、これでは南西諸島には各離島に配置しなければなりませんし、海峡には火砲が中央部に届かない海域も出てくるわけです。

 火砲の射程が100kmに達するという意味合いは大きいのですね。もちろん、100km先となりますと地球の自転影響等を受けますので、30km先を狙うように誤差40mという精度を維持するのは難しくなるのかもしれません、すると誘導砲弾の時代が来るのでしょうか。

 野砲、地域制圧の時代はすると誘導砲弾の費用というものが終わりをもたらすのでしょうか。一方で、地域制圧なんてものは専守防衛の我が国としましては、制圧する地域に逃げ遅れた非戦闘員、そして国民の財産が並んでいますので好ましい選択肢とはいえません。

 野砲、もちろん日本に侵攻する側に立てば、そこまでの精度を考慮する必要性は必ずしもありません、しかし、迎え撃つ側に立つならば、射程の大きな野砲というものは相手に口実を与えない、過度に民生被害を助長しないという意味で、理想的なのかもしれませんね。

 現実の戦場を見ますと、現在この瞬間も激戦が続くウクライナでは砲兵が威力を発揮しています、ロシア製クラスノポール誘導砲弾のレーザー誘導による正確な照準に対して、アメリカ始め西欧各国が供与したエクスカリバー誘導砲弾が更に正確な照準を長射程で叩く。

 自衛隊も99式自走榴弾砲を元に、先ず必要なのはエクスカリバーの採用か国産GPS誘導砲弾の開発、そして60口径砲という次世代火砲の開発、巨大となりますが今後は本土師団特科は方面特科へ移管される為に運用は可能でしょう、こうした研究は必要と考えます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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