北大路機関

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VADS機関砲システム167基の廃止完了,射程は短くともウクライナへの自爆無人機攻撃を考えれば必要な装備

2022-11-13 07:00:44 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 C-RAM自動迎撃システム等を代替装備として導入するならば別ですが自衛隊は非常に勿体ないと云いますか使える相違と必要な装備の廃止という納税者視点でも無駄な廃棄を行いました。

 航空自衛隊は2022年3月までにVADS機関砲システムを廃止しました、20mm機関砲を管制射撃するシステムは近年の誘導爆弾全盛の時代にあって、基地防空地対空ミサイルなどに用途を譲り不要となった、こうした認識とのことですが、廃止した総数は167セットと非常に多く、これをこの時期に廃止することは妥当なのか、とも考えてしまうのです。

 VADSは20mm機関砲を用いる為、射程は1.8km程度しか無いことが弱点です、配備が開始されたのは1987年でありこのころは基地を狙う攻撃機の低空侵攻に対抗するには地対空ミサイルよりも機関砲が有利であったという事情があるのですが、2020年代に入り基地攻撃は滑空爆弾や巡航ミサイル、機関砲の射程外から攻撃するというのが基本となりました。

 しかし、機関砲の利点は最低射程距離が無い、そして弾丸は電子妨害に影響される直進するというミサイルにない使い勝手の良さがあります、更にVADSを廃止させるには懸念があるのは、自爆型無人機という新しい脅威です。現代の戦闘を実証するウクライナ戦争、これが10月半ばになりますとイラン製自爆型無人機の長距離都市攻撃が多発しています。

 ロシア軍によるイラン製無人航空機シャハド136によるキエフ攻撃、無人機の形状はイスラエル製ハーピーを模倣しているのですが、精密誘導の徘徊式弾薬であるハーピーに対してイラン製無人機の精度は滅茶苦茶で、どこを狙っているのかが不明というほどに適当な目標を破壊しています、一部は発電施設を狙っているようですが。これは重大な脅威だ。

 シャハド136は安価な無人機であるため、多数を同時運用することでウクライナの防空システムを飽和させる用途でも用いられています。イラン製無人機の長距離攻撃は、2010年代からイエメン内戦においてサウジアラビアやアラブ首長国連邦への攻撃に多用されており、その危険性は指摘されてはいたのですが、改めて脅威の大きさ突きつけられたかたち。

 基地防空を考える場合、特に安価な無人機は数十機単位で毎日投入されます、すると数日間で一つの基地あたり数百の地対空ミサイルが必要となり、とてもではないが飽和状態となってしまいます。もちろん電子妨害装置など幾つかの対抗策はあるのですが、もっとも確実な方法は機関砲で撃って物理的に壊し撃墜してしまうことに勝る手段はありません。

 VADSはバースト射撃、少量の弾薬のみを区切って射撃することが可能であり、無人航空機の接近経路などに配置する、これはもともとVADSが導入された当時の攻撃機の進路と重なるのですが、古典的な配置で迎撃効果は充分得られるでしょう、なにより相手は無人機、機関砲弾に対して回避行動をとることはなくまっすぐに進むのですから、落としやすい。

 C-RAM自動迎撃システム、アメリカ軍などは艦載兵器であるバルカンファランクスを車載型とした自動迎撃装置を空港などの重要施設へロケット断行劇や無人機攻撃に用いる装備として利用しています。こうした選択しもあるにはあるのですが、何しろあいては数で来ます、すると、予備自衛官用装備としてでも良いので、VADSを維持する必要はあります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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2 コメント

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Unknown (DEN)
2023-08-12 14:39:39
今の御時世ドローン対策が必須になってきたので、同じく退役見込の74式の車体に載っけて自走式にするとか何かしないもんですかね…
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Unknown (成層圏)
2022-11-13 13:14:33
ドローンの脅威が増加している昨今、確かにもったいないですね。
VADS機関砲と短SAM、ジャミング装置をセットにした防空システムが必要だと思います。
陸海空兼用のセットができればいいのですが、出来ないものでしょうか。装甲車や艦艇や基地等にポンと置けると便利ですね。機関砲は30mmでもいいですが。
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