■賀正二〇二四
改めまして新年を迎えました、ここで北大路機関では毎年恒例となっています防衛政策等に関する荒削りの論点を書初めの様にまとめた新年防衛論集を掲載したいと思います。
新年防衛論集。国家防衛戦略画定より一年を超えまして、中距離ミサイル、これは中距離とはいうものの中距離多目的誘導弾や中距離空対空誘導弾の区分ではなく、戦域ミサイルよりも長いという従来よりも大きな尺度という意味なのですが、従来の防衛力整備の枠外に飛び出た防衛力整備が大車輪で進められています。
2000年代初頭、つまり北大路機関創設当時、このころに自衛隊が国産でトマホークミサイルを凌駕する射程のミサイルを整備し、その上で暫定的に数百発のトマホークミサイルを導入するという2020年代は、あり得るかもしれない可能性の分野では考えたものの、実際の防衛力整備という視座では説得力がなかったでしょう。
周辺情勢。しかしながら上記防衛力整備は、つまるところ周辺情勢の緊迫化をうけて整備されたもので、自衛隊の防衛力整備もさることながら、2000年代初頭には中国軍に台湾海峡をわたる能力はなく、西太平洋地域においてアメリカのポテンシャルを脅かす存在になるとは、やはり同じように説得力がなかったといえる。
防衛力のグランドデザインを真剣に考えなければ、抑止力の均衡が破綻した場合にはほんとうに"有事"というものが顕在化する緊張感があります。考えすぎ、と2000年代初頭には通った議論なのかもしれませんが2020年代には、それならば何故中国はあの規模の国防拡大を継続しているのか、説得力ある説明が成り立ちません。
重型合成旅団という、戦車を主体としました機甲旅団の数はアメリカ軍を凌駕し、特に砲兵火力はアメリカよりも、また砲兵重視とされた最盛期のロシアをも凌駕していますし、アフリカ地域へ派遣される軽型合成旅団、小型装甲車中心の基幹部隊、近年は航空旅団の編成が進んでおり、両棲合成旅団という両用部隊拡大も著しい。
第五世代戦闘機J-20Bの量産を筆頭に空軍近代化も著しく、特に2000年代には定説として示された早期警戒管制機の不足は、いまや保有機数でアメリカ空軍と海軍に次いでおり、そして航空機の性能も、輸出型とされるJF-17戦闘機を見る限り費用対効果は非常に高く、JF-17も改良を重ね今ではAESAレーダーさえ積んでいます。
福建を筆頭とした空母建造と空母機動部隊の整備、2020年代半ばにはほぼ管制に至ったようで、巨大な055型防空駆逐艦は量産が続いているものの一段落し、一時停滞していた054型フリゲイト、所謂江凱型の改良型、単体で哨戒任務や水上打撃に当たるフリゲイトの改良型、054B型フリゲイトの建造が本格化しました。
053型コルベット、かつて短期間で実に72隻と大量建造されたことで記憶に新しい056型コルベットは、VLS垂直発射装置の搭載など、より打撃力を高めた改良型の建造が開始され、これもどの程度の数が量産されるのかは未知数なのですが、これとて中小海軍が近年採用するシグマ級コルベットなどを凌駕する性能という。
南シナ海と東シナ海においてポテンシャルを高め、例えば戦略ミサイル原潜の聖域を確保する動きなのかもしれませんし、一帯一路政策を突き詰めて海のシルクロードを整備し、ここを領域阻止接近拒否の域内に含めようとしているのかもしれません。仮定論を示すのは、軍事とは能力の有無で脅威を計る必要があるゆえ。
防衛力強化は、例えばシーレーン寸断、例えば台湾海峡有事、こうしたものが現実のこととなれば我が国の国家は存続が、少なくとも憲法上の権利を国民が享受することさえ厳しくなることは否めません。そのために必要ではあるのですが、忘れてはならないのは、装備品と防衛戦略を長期的視野で整合化しなければならない。
防衛力整備の方向性、上記の点は方向性というものが定められるべきで、これを見誤ることがあってはならないということです。もっとも、これらの政策を出力する際、そもそも政策は憲法との整合性を考える大前提があって、憲法九条第二項を逸脱しない防衛力整備を考えるのか、憲法改正が必要なのかも論点だが。
憲法九条第二項、ここに許容される防衛力を考えた場合、第一項では解釈次第で自衛権の可能性を示すことができるのですが、トマホークを含めた中距離ミサイルが第二項と整合性があるのか、政治の問題として、専門風に言えば統治行為論、裁量の範疇に含まれるのか、無理ならば憲法改正という選択肢も考えねばなりません。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
改めまして新年を迎えました、ここで北大路機関では毎年恒例となっています防衛政策等に関する荒削りの論点を書初めの様にまとめた新年防衛論集を掲載したいと思います。
新年防衛論集。国家防衛戦略画定より一年を超えまして、中距離ミサイル、これは中距離とはいうものの中距離多目的誘導弾や中距離空対空誘導弾の区分ではなく、戦域ミサイルよりも長いという従来よりも大きな尺度という意味なのですが、従来の防衛力整備の枠外に飛び出た防衛力整備が大車輪で進められています。
2000年代初頭、つまり北大路機関創設当時、このころに自衛隊が国産でトマホークミサイルを凌駕する射程のミサイルを整備し、その上で暫定的に数百発のトマホークミサイルを導入するという2020年代は、あり得るかもしれない可能性の分野では考えたものの、実際の防衛力整備という視座では説得力がなかったでしょう。
周辺情勢。しかしながら上記防衛力整備は、つまるところ周辺情勢の緊迫化をうけて整備されたもので、自衛隊の防衛力整備もさることながら、2000年代初頭には中国軍に台湾海峡をわたる能力はなく、西太平洋地域においてアメリカのポテンシャルを脅かす存在になるとは、やはり同じように説得力がなかったといえる。
防衛力のグランドデザインを真剣に考えなければ、抑止力の均衡が破綻した場合にはほんとうに"有事"というものが顕在化する緊張感があります。考えすぎ、と2000年代初頭には通った議論なのかもしれませんが2020年代には、それならば何故中国はあの規模の国防拡大を継続しているのか、説得力ある説明が成り立ちません。
重型合成旅団という、戦車を主体としました機甲旅団の数はアメリカ軍を凌駕し、特に砲兵火力はアメリカよりも、また砲兵重視とされた最盛期のロシアをも凌駕していますし、アフリカ地域へ派遣される軽型合成旅団、小型装甲車中心の基幹部隊、近年は航空旅団の編成が進んでおり、両棲合成旅団という両用部隊拡大も著しい。
第五世代戦闘機J-20Bの量産を筆頭に空軍近代化も著しく、特に2000年代には定説として示された早期警戒管制機の不足は、いまや保有機数でアメリカ空軍と海軍に次いでおり、そして航空機の性能も、輸出型とされるJF-17戦闘機を見る限り費用対効果は非常に高く、JF-17も改良を重ね今ではAESAレーダーさえ積んでいます。
福建を筆頭とした空母建造と空母機動部隊の整備、2020年代半ばにはほぼ管制に至ったようで、巨大な055型防空駆逐艦は量産が続いているものの一段落し、一時停滞していた054型フリゲイト、所謂江凱型の改良型、単体で哨戒任務や水上打撃に当たるフリゲイトの改良型、054B型フリゲイトの建造が本格化しました。
053型コルベット、かつて短期間で実に72隻と大量建造されたことで記憶に新しい056型コルベットは、VLS垂直発射装置の搭載など、より打撃力を高めた改良型の建造が開始され、これもどの程度の数が量産されるのかは未知数なのですが、これとて中小海軍が近年採用するシグマ級コルベットなどを凌駕する性能という。
南シナ海と東シナ海においてポテンシャルを高め、例えば戦略ミサイル原潜の聖域を確保する動きなのかもしれませんし、一帯一路政策を突き詰めて海のシルクロードを整備し、ここを領域阻止接近拒否の域内に含めようとしているのかもしれません。仮定論を示すのは、軍事とは能力の有無で脅威を計る必要があるゆえ。
防衛力強化は、例えばシーレーン寸断、例えば台湾海峡有事、こうしたものが現実のこととなれば我が国の国家は存続が、少なくとも憲法上の権利を国民が享受することさえ厳しくなることは否めません。そのために必要ではあるのですが、忘れてはならないのは、装備品と防衛戦略を長期的視野で整合化しなければならない。
防衛力整備の方向性、上記の点は方向性というものが定められるべきで、これを見誤ることがあってはならないということです。もっとも、これらの政策を出力する際、そもそも政策は憲法との整合性を考える大前提があって、憲法九条第二項を逸脱しない防衛力整備を考えるのか、憲法改正が必要なのかも論点だが。
憲法九条第二項、ここに許容される防衛力を考えた場合、第一項では解釈次第で自衛権の可能性を示すことができるのですが、トマホークを含めた中距離ミサイルが第二項と整合性があるのか、政治の問題として、専門風に言えば統治行為論、裁量の範疇に含まれるのか、無理ならば憲法改正という選択肢も考えねばなりません。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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