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【防衛情報】イタリアF-35B戦闘機30機の海空軍管轄問題とドイツ空軍インフレ下でのF-35A戦闘機導入計画

2023-01-24 20:11:41 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 F-35Bを艦載機として運用する場合は空軍と海軍どちらが所管するのか、この厳しいインフレ状況でもF-35を買うべきなのか等日本にも当てはまる話題が欧州で繰り広げられました。

 イタリアはF-35B戦闘機を空軍と海軍が同数を導入する事で暫定的な合意に至りました。イタリア空軍は戦闘機としてF-35B戦闘機15機を導入するとともにイタリア海軍もF-35B戦闘機15機を導入します、しかしイタリア国防省では空軍と海軍の縦割り行政により、統合運用も共同運用も為されず、別々の組織として運用されるという合意となっています。

 カブール、イタリア海軍では空母カブールでのF-35B戦闘機運用を計画していて、これは満載排水量27100tの航空母艦として2008年に竣工しました。この搭載能力は12機で15機のF-35Bでは稼働率を考えれば妥当な数ですが、海軍が2023年にも満載排水量38000tで全通飛行甲板を持つ強襲揚陸艦トリエステを竣工させる為、艦載機15機ではたりません。

 F-35Bについて空軍は南部のアメンドーラ空軍基地に配備し、海軍は南西部のグロッターリエ基地へ配備されるとのこと。空軍と海軍がF-35B戦闘機を運用しているイギリスでは共同飛行隊の方式での配備が行われていますが、イタリアでは長らく1937年空軍法により1992年まで海軍が戦闘機を運用出来なかったという歴史があり、まだ影響しています。

 イタリア空軍とイタリア海軍は別々のF-35B戦闘機運用体系を構築しますが、これが非効率ではないかとの議論があるようです。イタリア海軍は15機を配備するF-35B戦闘機を空母カブール艦載機として運用します、しかし、空軍もF-35Bを配備しますが、現在のところ海軍の指揮下に入る予定も、空母艦載機として艦上へ展開する計画もありません。

 F-35Bについて、イタリア空軍はC-130輸送機と共に空軍遠征群を構成する計画であり、簡易滑走路と移動式施設で構成されるALARP航空機発着給油拠点へC-130輸送機と共に展開させる方針です。ただ、空軍長官のルカゴレッティ大将は統合任務として海軍が総合指揮官を務める場合、空軍の保有するF-35Bも海軍の指揮下に入るとも発言がありました。

 イギリスの統合運用に対して、イタリアの状況、イタリア海軍はかつて空軍が運用していたハリアー攻撃機を海軍へ法改正により移管したという歴史がありますが、海軍の戦闘機運用と空軍の戦闘機運用の違いによる同床異夢というべき状況は、例えば海上自衛隊護衛艦と航空自衛隊離島飛行場という、日本のF-35B運用にも参考点となるのかもしれません。

 ドイツ空軍は記録的なインフレ下でも計画されたF-35戦闘機は予定通り導入すると発表しました。これは空軍総監のゲルハルツ中将が10月24日の記者会見において述べたもので、ロシア軍ウクライナ侵攻にともなうエネルギー価格の高騰により9月には前月比では10%、燃料費に限れば40%もの増大という記録的なインフレに見舞われているためです。

 F-35戦闘機について、ドイツ空軍は35機を84億ドルで取得する計画であり、インフレの影響が危惧されていたところですが、ゲルハルツ総監によれば、現在のところF-35戦闘機の取得費用はインフレの影響を受けていないとしたうえで、仮に受けた場合でも、ドイツ空軍にとりF-35戦闘機の導入はほかの計画のいずれよりも優先度が高いと強調しました。

 ドイツ空軍にとり、F-35戦闘機は今後導入計画のある戦闘機の中で唯一の核爆弾運用能力があります。これはNATOに前方展開されているアメリカのB-61核爆弾ニュークリアシェアリングに用いるもので、現在この任務はトーネード攻撃機が担っていますが、これらは2030年までに退役するため、これまでにF-35戦闘機の初度作戦能力を整備します。

 ドイツ空軍はトーネード攻撃機後継機について困難な立場にあります、トーネード攻撃機は35機のF-35戦闘機により置き換えられる計画ですが、トーネード攻撃機は93機あり、35機で93機分の作戦空域へ展開できるわけではありません、ドイツ空軍はユーロファイター戦闘機15機を追加する計画ですが、総数は減る事となり抑止力に問題が生じるという。

 戦闘機は最低でも200機が必要である、ドイツ空軍の立場はこのようになっていますが、ユーロファイター戦闘機の耐用年数も長いものではなく、このままでは戦闘機が40機以上縮小されることとなります。ドイツはフランスとの間で第六世代戦闘機の国際共同開発を決定していますが、こちらの完成はもちろんどんな機体かの概要さえ目処が立ちません。

 フランスとの共同開発計画はここ2年間まったく進展しておらず、この背景にはフランスのラファール戦闘機を製造するダッソー社と欧州最大規模の防衛企業であるエアバス社の主導権争いが機体の形状さえも不確定とさせているためで、少なくとも2030年のトーネード攻撃機退役までに間に合わないことは確かで、空軍にとり悩ましい問題となっています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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