明星と重なるように その後ろから 遙(はる)かに幽(かす)かで大いなる 遠い星の渦が
時空を超えて 墜(お)ちて来ていた それは 天の川銀河の 暗黒の中心窩(か)
力の限り泳ぎ 沈んでゆく 鎖(とざ)されながら うっすらと開かれた眸(ひとみ)と
半ば開かれたまま 鎖(とざ)されてゆく唇へ 知られざる名と ともに 胸の奥底に遺された
最期の息を届けたい と 願い 遠ざかる蜃気楼(しんきろう)のように ゆらゆらと立ち昇る
水鏡に封じ込められたように 追いつけず 白々と延ばされ 仄(ほの)光る腕に
淡く瞬(またた)きながら差し延べられた 融けゆく雪白の腕が 届くことは なかった
辺りが 狭まってくる 零(0)は 何乗しても 零(0) そのように 光は 重なる
重さもなく 存在の基点では 次元は 三つ巴(どもえ)の 一つの力 色も消え
それは 次元を吹く 時間の風の 鼓動の始め 光が進む力に曳(ひ)かれ
波立つ空間が 谺(こだま)する その ぶつかり合った三角波 いつまでも どこまでも
光と ともに ゆっくりと進む波 それが すべてを包む時空
光が通った後 その跡が 空間 光が通ることが 時間 光が消えた後 空間を満たし支えるのは 記憶
それが 闇 それは 去った力 それは 重さ 往(ゆ)く力が 留(とど)まる重さ となったもの
光の力は 時間 止められぬ 往(ゆ)く
闇の重さは 記憶 動かぬ 留(とど)まる
留(とど)まる とは 退(ひ)くこと 退(ひ)き続けること
往(ゆ)きながら 退(ひ)く 往(ゆ)きて 還 (かえ) る 廻(めぐ)る
光と闇 時間と空間 振動と反映が 宇宙を作り 広げ 満たしてゆく
そこは 鏡の中 沈黙の凝(こご)る 闇の底へ 光が 降り落ちてゆく
くるくると回る 二つの光が 一つの影に重なる
眸(ひとみ)の奥で 二つの陰が 一つの光に反転するように
すべての色が重なると 眩(まばゆ)く消える
遺されるのは 深い記憶の闇 残像に仄(ほの)暗く彩られ
巾(はば)のない 永(なが)さだけの 途(みち)
絶対零度から光速までの間 どこまでも いつまでも
鏡の面(おもて)に 手を当てる人影 映像に重なる 幽(かす)かな面影
開かれたままの口から洩 (も) れる 吐息の音が 鏡の面(おもて)を揺らめかす
自(みずか) らに遮(さえぎ)られ 届かぬ 不思議な夢 内奥から溯(さかのぼ)る途(みち)
彼方(かなた)を振り仰(あお)ぎ 頬を合せ 鏡に沿って高く 高く手を差し延べる
眠りに 落ちる のは いつも 泳ぎ手が 速かった
見知らぬ面輪が見守っている 眸(ひとみ)の奥へ 波間へ潜(もぐ)るように
瞼(まぶた)が鎖(とざ)され 唇が開いた それを鏡の奥に見て 掲げ手の
瞼(まぶた)は落ちる 唇は微笑(ほほえ)みに開いたまま
水底(みなそこ)深く沈んでいく レアンドロス(ヘーロー)に 竟(つい)に追いつき
手を差し延べる と もはや その人影は 向う側へ往(い)ってしまうところで
融けつつ凍る 壁が あるように 届かない それは また 鏡のようでもあり
ヘーロー(レアンドロス)は 向う側へ往(ゆ)く途(みち)を探して
かの人影と同じで逆の 動きをしている裡(うち)に
息絶え その瞬間に 差し延べていた手が 鏡を突き抜けるように 届く
光が 先に 往(ゆ)く 常に
だが 光の往(い)ってしまった記憶も また常に そこに ある
光は いづこへ向っているのか
それが 闇なら それは 光を 夢見ながら 眠っている
光の記憶は 光の来る前に あり 光は その夢の中から 生まれる
留(とど)まりながら 往(ゆ)く
廻(まわ)り続ければ 落ちることは ない
疾(と)く熱く 光が放たれて 飛び出してゆき
冷たく ゆっくりと 陰が流れ出し 滑るように広がる
すべては 温かく 涼やかに なる
何物にも追いつけぬ速さで 光が進む時 推(お)し分けられた空間は波立ち
淡く照り映える 先へ先へと退(しりぞ)いて 途(みち)を通す
常に 傍らに在るごとく
あなたは 問いとして 出立し 解となって 戻る
汐(しお)の引く 曳(ひ)く 退(ひ)く 波頭に 耀(かがや)く面輪が宿る
憧れるように遠ざかる その姿に魅(み)せられ 突き進む
廻(めぐ)り逢(あ)えぬものを追いながら 竟(つい)に消ゆる時
相手も消えていく 消えながら 後ろから内奥へ そっと重なるように
遙(はる)かな過去からの 遠い風の音が 空(から)になった内側に
灯(とも)り続けていた明かりを 吹き消す
それから 陰が やって来る 永(なが)く凍(こお)りついた 涙の氷晶から
やがて広がる 雪の微笑(ほほえ)みを浮かべ ずっと そこに いた
触れることも 離れることも 叶(かな)わぬ 傍らに
満ちてくる 潮(うしお)のごとく
時空を超えて 墜(お)ちて来ていた それは 天の川銀河の 暗黒の中心窩(か)
力の限り泳ぎ 沈んでゆく 鎖(とざ)されながら うっすらと開かれた眸(ひとみ)と
半ば開かれたまま 鎖(とざ)されてゆく唇へ 知られざる名と ともに 胸の奥底に遺された
最期の息を届けたい と 願い 遠ざかる蜃気楼(しんきろう)のように ゆらゆらと立ち昇る
水鏡に封じ込められたように 追いつけず 白々と延ばされ 仄(ほの)光る腕に
淡く瞬(またた)きながら差し延べられた 融けゆく雪白の腕が 届くことは なかった
辺りが 狭まってくる 零(0)は 何乗しても 零(0) そのように 光は 重なる
重さもなく 存在の基点では 次元は 三つ巴(どもえ)の 一つの力 色も消え
それは 次元を吹く 時間の風の 鼓動の始め 光が進む力に曳(ひ)かれ
波立つ空間が 谺(こだま)する その ぶつかり合った三角波 いつまでも どこまでも
光と ともに ゆっくりと進む波 それが すべてを包む時空
光が通った後 その跡が 空間 光が通ることが 時間 光が消えた後 空間を満たし支えるのは 記憶
それが 闇 それは 去った力 それは 重さ 往(ゆ)く力が 留(とど)まる重さ となったもの
光の力は 時間 止められぬ 往(ゆ)く
闇の重さは 記憶 動かぬ 留(とど)まる
留(とど)まる とは 退(ひ)くこと 退(ひ)き続けること
往(ゆ)きながら 退(ひ)く 往(ゆ)きて 還 (かえ) る 廻(めぐ)る
光と闇 時間と空間 振動と反映が 宇宙を作り 広げ 満たしてゆく
そこは 鏡の中 沈黙の凝(こご)る 闇の底へ 光が 降り落ちてゆく
くるくると回る 二つの光が 一つの影に重なる
眸(ひとみ)の奥で 二つの陰が 一つの光に反転するように
すべての色が重なると 眩(まばゆ)く消える
遺されるのは 深い記憶の闇 残像に仄(ほの)暗く彩られ
巾(はば)のない 永(なが)さだけの 途(みち)
絶対零度から光速までの間 どこまでも いつまでも
鏡の面(おもて)に 手を当てる人影 映像に重なる 幽(かす)かな面影
開かれたままの口から洩 (も) れる 吐息の音が 鏡の面(おもて)を揺らめかす
自(みずか) らに遮(さえぎ)られ 届かぬ 不思議な夢 内奥から溯(さかのぼ)る途(みち)
彼方(かなた)を振り仰(あお)ぎ 頬を合せ 鏡に沿って高く 高く手を差し延べる
眠りに 落ちる のは いつも 泳ぎ手が 速かった
見知らぬ面輪が見守っている 眸(ひとみ)の奥へ 波間へ潜(もぐ)るように
瞼(まぶた)が鎖(とざ)され 唇が開いた それを鏡の奥に見て 掲げ手の
瞼(まぶた)は落ちる 唇は微笑(ほほえ)みに開いたまま
水底(みなそこ)深く沈んでいく レアンドロス(ヘーロー)に 竟(つい)に追いつき
手を差し延べる と もはや その人影は 向う側へ往(い)ってしまうところで
融けつつ凍る 壁が あるように 届かない それは また 鏡のようでもあり
ヘーロー(レアンドロス)は 向う側へ往(ゆ)く途(みち)を探して
かの人影と同じで逆の 動きをしている裡(うち)に
息絶え その瞬間に 差し延べていた手が 鏡を突き抜けるように 届く
光が 先に 往(ゆ)く 常に
だが 光の往(い)ってしまった記憶も また常に そこに ある
光は いづこへ向っているのか
それが 闇なら それは 光を 夢見ながら 眠っている
光の記憶は 光の来る前に あり 光は その夢の中から 生まれる
留(とど)まりながら 往(ゆ)く
廻(まわ)り続ければ 落ちることは ない
疾(と)く熱く 光が放たれて 飛び出してゆき
冷たく ゆっくりと 陰が流れ出し 滑るように広がる
すべては 温かく 涼やかに なる
何物にも追いつけぬ速さで 光が進む時 推(お)し分けられた空間は波立ち
淡く照り映える 先へ先へと退(しりぞ)いて 途(みち)を通す
常に 傍らに在るごとく
あなたは 問いとして 出立し 解となって 戻る
汐(しお)の引く 曳(ひ)く 退(ひ)く 波頭に 耀(かがや)く面輪が宿る
憧れるように遠ざかる その姿に魅(み)せられ 突き進む
廻(めぐ)り逢(あ)えぬものを追いながら 竟(つい)に消ゆる時
相手も消えていく 消えながら 後ろから内奥へ そっと重なるように
遙(はる)かな過去からの 遠い風の音が 空(から)になった内側に
灯(とも)り続けていた明かりを 吹き消す
それから 陰が やって来る 永(なが)く凍(こお)りついた 涙の氷晶から
やがて広がる 雪の微笑(ほほえ)みを浮かべ ずっと そこに いた
触れることも 離れることも 叶(かな)わぬ 傍らに
満ちてくる 潮(うしお)のごとく
お恥ずかしいですが「承前」知りませんでした。
勉強になります(笑)
ところで、「三つ巴の一つの力」は
キリスト教の「三位一体」と関連があるのでしょうか。
それはともかく
現代物理学では、どうやら宇宙は
「無」のゆらぎから始まったそうで
ますます神話的になっているようですね。
神話的というと「ヘーローとレアンドロス」のギリシャ神話をうっすら思い出して
懐かしいです。
古代より悲恋のテーマはあったんですね。
後、
「廻 (めぐ) り逢 (あ) えぬものを追いながら竟 (つい) に消える時相手も消えていく」
という一節に
私が昔描いたマンガのネームに
「人生における真実は現れては消え
現れては消え
そして、二度と現れない」とあったのを
思い出しました。