hazar  言の葉の林を抜けて、有明の道  風の音

細々と書きためたまま放置していた散文を、少しずつ書き上げ、楽しみにしてくれていた母に届けたい

天の川

2014年01月07日 | 散文詩
とても暗かったが、少し明るくなった
地平線に沿って、ぼんやりと光が見える
そっとしっかり手を掴んでいる
涼しい風が吹いて、呼ばれているように進む

炎が走る
戸口の奥で、熔け重なっていた影
通りでは、子が母の下になって倒れていた
爆撃は母の背を貫いて、子の背を焦がした
母の顔は眠っているようだった

立ち上がった子は、見知らぬ焼け跡を通り抜け
母の向かっていた親戚の家へ辿り着いた
母がずっと手を握り、背を押していたと思った
今もその背に、炎の痕がある

炎に包まれ、川へ川へと、人々は向かった
そこには、もう川はなかった
いつか、川が帰ってくる
音のない明け方、霧の立ち籠める茎の間へ
ひんやりと脚を浸す鳥
夜明けの薄闇の中で、幽かに反射する嘴

何か、夜空に谺している
追いつけない程遠くで、あんなにも若く
生まれたばかりのあなたを思い出して
笑っている
息で煌めく雲となって浮かび上がり
螢のように低く野に散っていく

星々が渦巻く下、草をかき分け
傍らに続く道へ出ると
待っていて、手を繋いでくれる
全てを忘れ、帰り着ける

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