リンゴを塩水に浸けると栄養に変化はある?
3つの疑問を栄養士に聞いた
アダムとイブの神話に出てくるなど、人類が食した「最古の果物」ともいわれているリンゴ。
日本には、平安時代に中国から持ち込まれたという説があります。
本格的な栽培が始まったのは明治初期の頃で、現在は栽培や保存方法の進歩から
ほぼ通年で店頭に並び、好きなフルーツとして挙げる人も多いでしょう。
ただし、本来の収穫時期は秋。また栄養価が高く、
欧州では「1日1個のリンゴは医者を遠ざける」といわれるほどです。
リンゴの栄養にまつわる3つの疑問について、和漢歩実さんにお話を伺いました。
【画像】好きなフルーツは? 一番人気はリンゴではなく…1万人の答えとは
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リンゴの注目すべき栄養素とは
リンゴは食物繊維やカリウムが豊富です。食物繊維には腸の働きを整えてくれる作用が、
カリウムには余分な水分やナトリウムを体外へ排出する作用が期待できます。
そのためリンゴは、高血圧などの生活習慣病や便秘、むくみの予防効果が注目される果物です。
また近年は、疲労回復効果が期待できるクエン酸やリンゴ酸といった
リンゴの有機酸も話題になっています。さらに、強い抗酸化作用のある
ポリフェノールのプロシアニジンも豊富。
健やかな毎日のために適量を取り入れたいところです。
リンゴに含まれる有機酸には肉の繊維をやわらかくする作用も。
肉を焼く時に、すりおろしたリンゴを加えたタレに漬け込んでから
焼くとやわらかく仕上がるでしょう。
また、消臭効果があることでも知られ、臭いが気になる料理を
食べた後にリンゴを食べると良いといわれています。
疑問1:品種によって栄養に違いはあるの?
――赤色の「紅玉」や「ふじ」、青色の「王林」などさまざま品種があります。
食感や栄養面で違いはあるのでしょうか?
和漢さん:一般的にはシャキシャキしているのが「ふじ」、硬めが「王林」など、
食感に違いはあります。「紅玉」は香りが強く加熱しても風味が残り、
また形が崩れにくいためアップルパイなど製菓用にも多く使われます。
一方で青リンゴは、すっきりとした味わいが多いですね。
栄養面に関しては、リンゴの果肉部分に基本的な違いはないでしょう。
しかし、皮の部分に違いがあります。赤いリンゴの皮には
ポリフェノールのアントシアニンが多く含まれているのです。
アントシアニンは抗酸化作用がある天然色素で、
目の働きのサポートや眼精疲労の予防が期待できます。
疑問2:リンゴを皮ごと食べる栄養メリットは?
――栄養メリットを考えると、リンゴは皮ごといただく方が良いでしょうか?
和漢さん:食物繊維をはじめ、βカロテンやビタミンCなどの栄養素や
ポリフェノールといった成分は、皮付きで食べた時の方が多く摂取できます。
しかし、農薬という点で考えると、皮付きで食べるのはあまりおすすめできません。
その場合はしっかり洗いましょう。輸入のリンゴは、
収穫後に農薬を散布するポストハーベストを考えると、
皮をむいてから食べる方が良いでしょう。
疑問3:変色防止で塩水に浸けると栄養素はどうなるの?
――変色を防ぐのに塩水に浸けたり、加熱したりしていただくこともありますが、
それによってなくなる栄養素はありますか? やはり生食が良いでしょうか?
和漢さん:変色はポリフェノール成分が空気に触れたために起こります。
栄養価や味に変わりはありませんが、
褐色したリンゴを食べるとあまりおいしく感じられないでしょう。
皮をむいてすぐにいただかない場合は、塩水に一瞬浸けることをおすすめします。
ナトリウムがポリフェノールをガードすることで、酸化を防いでくれるのです。
ただし長時間浸ける必要はありません。
ビタミンCなど水溶性の成分が流出し、味も落ちてしまうからです。
ハチミツ水や砂糖水、レモン水も同様に酸化を防ぎます。
また、リンゴは熱に強いため、他の果物とは異なり、
栄養価の損失は少ないとされています。
そのため、焼きリンゴやアップルパイなどの加熱した料理も人気なのでしょう。