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2019年02月09日 | 症状関連記事

脳脊髄液減少症、診療ガイドライン改定へ 「事故で発症」理解されず2019年2月7日18:55産経新聞/正論

 交通事故の外傷などをきっかけに激しい頭痛やめまいを引き起こす「脳脊髄液減少症」の診断基準を明確化しようと、日本頭痛学会の医師らが、頭痛の診療ガイドラインの改定を検討していることが7日、分かった。脳脊髄液減少症は国の研究班による診断基準などがあるものの、一部の症例に対応していない。ガイドラインが改定されれば、これまで確定診断できなかった患者の治療や補償に影響する可能性もあり、救済の一助として期待がかかる。

 脳脊髄液減少症は、15年ほど前に一部医師が外傷で発症すると指摘して注目されたが、否定的な医師も多く診断がばらついた。脳神経外科医中心の厚生労働省の研究班が平成23年、外傷による髄液漏れを認めた診断基準を公表。同省は28年、漏れを自分の血液で止める治療法「ブラッドパッチ」の保険適用を認めた。

 この基準は画像で明確に漏れを確認できたものを陽性としているが、外傷後に症状が出ても漏れが写らない患者もみられ、漏れ以外の理由で髄液が減少する可能性が指摘されていた。

 28年度から学会の神経内科医らも臨床を本格化。研究チーム代表の荒木信夫・埼玉医科大教授によると、外傷が自律神経に作用して髄液をつくる力が低下するケースがあると分かってきた。これら症例はブラッドパッチで完治しないこともあり、多くの保険会社は事故後の賠償をめぐる交渉で発症を否定する。

 同チームの光藤尚(たかし)同大助教は「『漏れていないから同症ではない』という誤解が診断や裁判で混乱を招いている」という。

 学会の診療ガイドラインは25年のものが最新。改定版は来年中の完成を目指す。荒木教授は「最新の知見を盛り込むことで専門外の医師らにも病態を理解してほしい」と話している。

■「理解されない苦しさ」

 認知度が低い脳脊髄液減少症の症状を知ってもらおうと、支援団体は15日、東京都千代田区の衆議院第1議員会館でシンポジウムを開く。登壇する患者の女性は「理解されず苦しむ人はたくさんいる」と訴える。

 愛知県碧南市の宮田和子さん(67)は、平成22年3月、軽乗用車で信号待ちをしていたところ、乗用車に追突された。大きな外傷はなかったが、3~4週間後から視界がギラギラと光って見え、冷や汗や頭痛など全身に異変を感じるように。整形外科で診察を受けたが異常は見つからない。症状を訴えても「更年期だ」「あなたは気にしすぎる」などといわれた。

 事故から3カ月後、雑誌で脳脊髄液減少症の存在を知り「これだ」と直感。詳しい医師がいる総合病院で検査を受けると同症とわかり、治療を受ければ「つぶれた豆腐が角まで整っていく感覚」があった。

 しかし当時、治療は保険適用外で、3回のブラッドパッチでかかった約90万円は自費に。加害者の保険会社に治療費を求めたが発症を否定され、逆に債務不存在確認を求める調停を起こされ訴訟にも発展した。

 訴訟で加害者側は、症状の改善は医学的効果ではなく、治療を有効だと思うことで回復する「偽薬効果」などと指摘。「命がけで治療しているのに」と涙が出るほど悔しかった。昨年6月に和解したが、裁判所は発症を認めなかった。

 目のギラギラや倦怠感(けんたいかん)は今も残る。それでも講演を引き受けたのはほかの患者や熱意ある医師らに出会ったから。「ここまで治していただいた私が、人ごとにしてはいけないと思う」

 シンポジウムは午後3時から。問い合わせは脳脊髄液減少症患者・家族支援協会東京事務所(042・325・8225)

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