
今回の美術展では使用用途を思わせるのに用途がない作品、使用用途をなくして作品にしてしまった作品など境界の不明瞭な作品が展示されています。
境界線を引くわけではないけど、ボーダーレスアートの名にふさわしく、出品者はアールブリュット作家が4人、美術家が2人、企画デザイン会社1社の内訳となる。
ボーダレスは境界がないこと、ジャンルに分けられないことの意味で、ボーダーラインを曖昧にしてカテゴリーに当てはめることができないものが並べられる。

昭和初期の町屋をリノベーションしたNO-MA美術館の前庭では、山田浩之さんの陶芸作品「壁を取りはずして向こうを見る」という大きな作品が出迎えてくれます。
山田浩之さんは、信楽の陶芸作家で陶歴は約30年。数々の陶芸展で受賞歴のある作家さんのようです。

山田浩之さんの作品を検索すると、酒器やぐい呑や皿、急須や花器などオーソドックスな陶器から個性的で独創的な作品まで幅広いようです。
展示されていた「CAVE340 コメット」は得体の知れない生き物のような作品で、「CAVE340 BIG FOOT」の方はデフォルメされた足。
作品は全て陶器にスピーカーが埋め込まれており、BIG FOOTは実際に音楽を聴くことが出来るようになっていた。


現在67歳になるという山ノ内芳彦さんは、鳥取で生まれて「田舎で死にたくない」という気持ちで東京に出て15年暮らしたといいます。
田舎で暮らしたくないという18の頃の気持ちはよく理解できる話で、同じ思いで都会へ出て行ったのは当方も同じでした。

その後、30歳を過ぎた頃に帰郷されて、そこで木の中に生命の形を感じ取り、木の仕事をするようになったといいます。
材料はその辺にある伐られた庭の木や捨てられた木などを使い、声がかかればもらったり伐りに行ったりするそうです。

上は「クスノキの椅子」で下は「イチョウの寝台椅子」。
イチョウの椅子には腰かけてみると、何とも言えない落ち着いた気分が味わえて木の優しさに包まれます。
作品は元あった木の形が想像できない姿に彫り出しており、樹齢の長い木の持つ生命感のようなものを際立たせています。

下田賢宗さんは、15歳の時にイクラの柄のポスターが欲しくなったけど、探してもそんな柄のパジャマは売っていなかった。
そこで、白い服をマジックや絵の具と一緒に下田さんに渡すと、彼はあっという間にイクラの絵を描き上げて欲しかったパジャマを手に入れたといいます。
下田さんは「自分が大好きなものに包まれて眠りたい」という思いを叶えるため、オリジナルのパシャマを制作されてきたといいます。
作品は「イクラのパジャマ」「かぼちゃのてんぷらのパジャマ」「はだいろおちんちんのパジャマ」。

山崎菜邦さんは、カラフルな糸を繰り返し縫って一点物の服を仕立てていきます。
今年2月に滋賀大学で開催された「やまなみ工房」のアールブリュット展では全身が縫物のヒトガタになっていましたが、今回は「Yシャツ」が出品されています。

吊るされたYシャツは空調の風でゆっくりとゆらゆら動いている。
机の上に置かれたYシャツは機能を失った何者でもないものに変化していっています。

少しいびつな形をしたかわいらしい箱は、臼井明夫さんの「臼井BOXシリーズ」です。
臼井さんは箱を作っては周りの人にあげていたといい、箱はいびつですが工夫を凝らして丁寧に作られた作品です。

高丸誠さんは眼鏡を作り、ほぼ毎日自分で作った眼鏡をかけているそうです。
レンズはなく眼鏡としての機能は果たしていませんが、“形状は使用用途を思わせるのにその用途がない作品”ということになります。
展示は、眼鏡屋さんの商品が並べてある棚のように見えます。

geodesign〈ジオデザイン〉は株式会社ジオが企画・デザインした商品で、面白ろアイデア文具を商品化したもの。
レタスだけどメモパッドになる、食卓にあるねり梅やわさびやしょうがのチューブはカラーマーカー、割り箸がボールペン、豆腐パックが付箋紙。
鯛の形をした醤油のタレビンは、醤油の香りがするペンで、<ケチャップ香る>醤油鯛ペンなんてものまである。
どこまでから雑貨であり,どこからが雑貨ではないかという範囲設定が分からない不思議な製品カテゴリーにある文化・雑貨の世界です。

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