独り暮らしを始める前までは性欲に対して抑制的だった。家族の留守を見計らって自慰しなければならない煩わしさに加え、受験勉強や運動に時間と精力が分散化されていたからだ。それでも、同年代の女性に対して性的興味を持ち、性欲を満たしてくれる素材を探していた。写真集など買う金銭的余裕はなく、家族に見つかるのを極端に恐れていたので、素材はすぐに処分できる雑誌にかぎられた。その中で、英知出版の月刊誌「すッぴん」は僕の高校時代の性欲を支えてくれた一冊だ。
「すッぴん」はメジャーアイドルを目指すモデルたちのグラビアで構成され、表紙にはモデルの名前だけでなく年齢が必ず記載されていた。十八歳未満がほとんどで、AVとのメディアミックスによるヌードもあった。この雑誌でのデビューを機に、タレントや女優にのし上がったモデルもいるほど誌面のクオリティは高かったが、このような雑誌は二〇一四年に改正された児童ポルノ法では3号に該当し、今日では所持すら禁じられている。
僕は高校三年間、不定期で「すッぴん」を購入した。千葉麗子や三井ゆり、桜珠緒(現・さとう珠緒)、吉野公佳が巻頭の号を買った記憶があるが、彼女たちを素材に自慰した覚えはない。オナペットとして使わせてもらった中で、はっきり名前を覚えているのは高橋夏樹と小堺忍の二人だけで、あとはほとんど印象に残っていない。当時のバックナンバーを見返せば思い出せるかもしれないが、それらを今から集めたら刑事罰の対象になってしまう。
「すッぴん」は成人誌ではなかったので、高校生の僕でも書店で買えた。大手出版社が刊行していた純粋なアイドル雑誌と明確に異なるのは、表紙にモデルの年齢が記されていたことで、十五歳から十八歳までが大多数を占めていた。高校生世代の少女を自慰の対象にしたい消費者に訴求する点においては効果的である一方、年齢を強調しなければ売れないというマイナー誌の露骨な販売戦略に、僕はますます所持が発覚するのを恐れた。
自宅に持ち帰って家族に見つかるのを避けるために、書店で「すッぴん」を買い、帰宅途中に自慰してすぐに捨てた記憶がある。高校二年の五月か六月頃だったと思う。午後八時頃に母校である小学校に侵入し、常夜灯が一基だけある校舎の玄関で横寝の姿勢になってペニスをしごき、靴底の土砂を払い落す人工芝に射精した。人工芝の感覚とは対照的に、誰を素材にしたのかは今でも覚えていないし、今後も思い出すことはないだろう。
僕は母校の敷地内で二回自慰をしたことになるが、もしかしたらあと何回かあるかもしれない。当時、この学校は校庭と接している門に人一人分通れる隙間があり、僕もそこから入った。夜間とはいえ公共施設内で下半身を露出していたのだから、公然わいせつ罪と器物損壊罪に問われそうだが、性欲が先立って罪の意識を感じていなかった。また、六年生の頃に複数の教師から罵倒されるなど母校を快く思っていなかったので、汚してやろうという気持ちもあった。
大学生になってからも「すッぴん」を自慰の素材に用い、麻生久美子や三橋加奈子が巻頭の号も所持していたが、同級生はAVや「デラべっぴん」などのアダルト雑誌を素材としていたため、僕は彼らに自分の性的趣味を打ち明けるのを憚った。この頃になると、素材は自分より年下なので、それらを素材にするのを軽蔑する同級生もいた。しかし、僕はこの時点でオナペットの対象範囲が十五歳から十八歳までの水着姿の女性にほぼ固定されてしまったので、「すッぴん」が僕の平成期の自慰遍歴に多大な影響を与えたことになる。
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