老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

97;親切をいただいた夢老人

2017-05-14 01:08:44 | 老いの光影
空き地に咲いていた一輪のたんぽぽ
元気よく咲いている姿に感動!

ご訪問いただき、ありがとうございます 

南陸奥では しばらくぶりの雨 
カラカラに土が乾いた畑にとっては 恵の雨
土に染みとるような雨
心に染みとるような言葉の雨に触れると
生き返ります


私も老いたときは
白髪になりたいがものだと夢見ている。
(残念ながら後頭部に剥げが
(正面から見ると髪の毛は十分にあるのだが・・・)

86歳になる木村まつさんは、
白髪のきれいな女性である。
女性に年齢を尋ねるのは大変失礼なのだが、
彼女は「今年で50歳になったところです」と
真顔で答える。

まつさんは、小脳梗塞を発症し
寝たきりになりる(要介護5)。
物忘れも進んできた。
心優しい女性で、
彼女と話をしていると
認知症老人であることすら忘れてしまう。

先日、私が掃除をしていたとき、
傍にいた彼女は「とてもきれいになったよ」と褒めてくれたので、
私は「(褒めて頂いても)何もあげる物がないなぁ~」と言うと
「いつも親切を頂いているから、何もいらないです」と笑顔で答えてくれた。
「どんな親切を頂いたの?」と尋ねると
「車いすからずり落ちたとき助けてもらったり、
それからトイレでおむつを取り替えてもらったり、
たくさんの親切を頂いたから・・・・」
とさりげなく話す。

「親切を頂いた」という
まつさんの言葉を聴いたとき、
なんて素敵な表現をするのだろうと、
人間味のある
そして、温もりのある言葉に
しみじみと感じいった。
まつさんに限らず
認知症老人から
人間がもつ優しさというものを
何気なく教えられることが多い。

まつさんとは、こんなエピソードもあった。
ある夕暮れ時の一コマ。
彼女に「一緒にベッドに寝てもよろしいですか」
と ふざけて話しかけたところ
「夢がふたつになっちゃうから、けんかしてしまうと困る」
と笑顔であっさり振られてしまった。
一つの枕に寝ても、
まつさんの見る夢と
私の見る夢は違う。
違う夢同士がけんかをしたら困るから寝ない、
という意味でだった。
私を傷つけずに、
優しく美しく私を振った素敵な言葉である。

まつさんは、この先自分自身がどうなるかも臆せず、
そのまつさんは私に語りかける。
「こんなふうに(車いす生活で)苦労する、
寂しい思いをするとは予想していなかった。
これから、長生きしていって、
どうしたらいいだろう?
ひとりで切ない。
死んだら眠ったままになるのかなぁ。
だったらその方がいい。
人の幸福(しあわせ)はわからない」。

まつさんの呟きを、
どんな思いで私は受けとめねばならないのか。
家族から離れ、
ひとりで生きていくことの切なさ、寂しさ。
「人の幸福はわからない」
とのまつさんの呟きが耳朶に残る。

まつさんは、人間の温もりを求めているのかもしれない。
彼女の心を少しでも癒すこと
それは介護員のケアにかかっている。

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