2013、12、17
セビラーのK-5カヤックを背負い
急な崖の
暗く せまい急斜面を
しばらく下っていくと
美しく
しずかな砂浜と出会った
そこは 地元の方も
あまり 知る人もいないという
エビカの浜と言われる場所だった
三浦半島 西岸 カヤック野営キャンプ
前回 僕は
行きたい場所があったが
カヤックのエアー漏れ等から 断念した
小網代の森
奇跡の様に
開発からまぬがれた
源流域の森林から 湿原 河口まで
昔の状態を保っている森
関東 東海地方では こうした環境を
唯一 残している森という
その森を 一度 見てみたかった
K-5カヤックを広げ
ポンプで空気を入れていく
前回のエアー漏れは
内側に 二つの穴が空いていて
一つは 接合部分の難しい場所だったが
自転車用のパッチと ビニール系の接着剤で
どうやら 修理はうまくいった様だ
久しぶりの カヤック
しばらく エビカの浜で
感覚を取り戻すため 操艇テストを行う
エビカの浜から 小網代湾に入ると
ヨットハーバーがあり
多くのヨットと しゃれた家々の風景が広がる
はじめて
カヤックに乗った人とすれ違い
挨拶を交わす
停泊するヨットの横を過ぎ
さらに湾の奥へ進んでいくと
辺りの様子は変化し 小網代の森に出会う
満潮の刻
小網代の森の奥まで
カヤックは侵入できる
アシの原が群生する
森の遊歩道の小さな橋
そこをくぐると 終着地だった
誰もいない 静寂の中
風が 美しいさざなみを伴い
挨拶をするかの様に 僕とカヤックを包む
パドルを置き
潮の流れに 身をまかせる
こんな静寂の中でも
潮の流れは 生き物の様に
しずかに 早く
しかも 複雑に 流れていく
撮影に集中していた僕は
いつもまにか 潮の流れに流されて
森の突き出た木の枝に激突
そのまま 潮の流れの力で
もう少しで ひっくり返るところだった
そう この地は 生きている
近くの陸地に上陸し
しばし 休憩をとる
気がつくと 足元の水中に
ヤドカリが・・
こんな冬だというのに
いたるところ
あたり一面 大量に生息していた
まずい・・
僕は 知らずに ヤドカリの生息地を
荒らしていた
ここは 様々な生物を育む干潟なのだ
ヤドカリを 写真に記録すると
早々に帰路についた
岸壁の横の洞窟
前回は近づく余裕もなかったが
今回は 洞窟の近くまで接近
洞窟の奥を確認・・
特に・・ 何も無いが
何やら 怖くなり(笑)
すぐに後退!
その近辺の 海の透明度は高く
水中にペンタックスW90を突っ込んで
海の中を動画撮影してみた
小さな魚たちが かろうじて映っていて
うれしかった
エビカの浜に到着し しばらく休憩すると
キャンプの用意にとりかかる
崖の上の車まで キャンプ用具を取りに往復
最小限度の装備だが
非常に急な坂道の上り下りは とてもしんどかった
テントを張り終えると 体力は無くなり
体にへばりつく
パドルシューズ ロングジョンを
やっとの思いで脱ぎ 着替える
そのまま テントの中で 体力が回復するまで
しばらく泥の様に倒れていた
遠くの海で 雲の合間から
天使の光が 降り注いでいるのが見える
カメラをオリンパスE-1に持ち変え
テントから這い出て しばし撮影
夕焼けは あっと言う間に 夜に落ちて行った
この日の夜
満月が 雲の合間から 時折姿を見せ
暗い大地を 照らし出してくれていた
寒くはあったが
防寒衣とシュラフで
しのぐのには充分だった
この浜は 崖が風をさえぎり
波のしずかな音が 耳に入るばかりだ
突然 ドカドカと
誰かが テントの横を 荒々しく歩いていく
緊張が走り 身を固める
サバイバルナイフの位置を
頭の中で とっさに確認している
どうやら・・
釣り人が帰って行った様だ
野宿につきまとう 恐怖や不安は
いろいろあるが
しずかな波の音の中
いつしか そんな恐怖も
睡眠が 意識と共に 溶かしていった
後になって 気がついたことが
いくつかある
この浜からは 油壺が見える
テントの入口から 正面に見えている陸地と建物が
まさに 油壺だった
今から 500年前
油壺は 新井城という城だった
かつて 源頼朝を助け
鎌倉幕府旗揚げに尽力した名門 三浦一族は
攻め込んできた北条方に対し
新井城にこもり 3年の間戦い 滅亡した
ちょうど ぴったりと 500年前の戦
最後に その海は
三浦一族の死者の血の油で
一帯が満ちたと言う
油壺は 現在は水族館で有名な観光地だが
油壺の名の由来は
三浦一族の 血の海から来ている
僕は
小網代の森の 一部の景色を
数ヶ月前 夢の中で
すでに 見ていたことに
後になって気づいた
ずっと 昔から
この森と 海岸だけは
太古のままという話が 頭を よぎる
500年前の 戦の話(三浦市の悲話と伝説)を聞いていると
自分とも 何らかの関わりが あったのではと
ふと思ってしまう
戦で亡くなった多くの人々の
痛みと恐怖は 癒されただろうか・・
自分自身 そして
この世界に生きる 全ての命の
痛みや恐怖が
こんな しずかな
波の音に 包まれて
溶けていくことを
せつに願う
カヤック 野営 三浦半島
資料:花の家 小網代こあじろの森 (小網代湾)
三浦市の悲話と伝説(神奈川県三浦市)
三浦一族�・油壺周辺の歴史散歩�・