春のワルツ 第6話 「謎の小箱」
あらすじを読まないでドラマを楽しむ人間ですが、まずはいつも通りNHKのガイドから
チェハは生存確認を依頼していた病院から、幼いウニョンの死亡を告げられた。あまりのショックにオーストリアに帰りたいと言い出すチェハ。ようやくウニョンとの再会を果たしたものの、ショックの反動でまたもや冷たくあたってしまう。イナはなんとかチェハをつなぎ止めようと、一緒に通ったララ小学校へとチェハを連れ出した。校庭を走り回り、何かを吹っ切ったらしいチェハは、イナにある提案をする・・・。
一方フィリップは、ウニョンに会えて喜び全開。ウニョンの出店にまで押しかけ、女性客の呼び込みに一役買う。フィリップの強引さに戸惑いながらも、徐々に心が癒されていくのを感じるウニョン。そんなウニョンに、フィリップはついに、胸のうちを打ち明ける決意をする・・・。
●貝殻オブジェを作ったのは・・・?
幼いウニョンがスホ(チェハ)に渡した貝殻。そしてオーストリアでウニョンがフィリップにお礼のつもりで渡した貝殻細工。今回のエピソードでも、この貝殻が大きなポイントとなっていましたね。幼いウニョンが作った貝殻細工は、ユン監督がチョンサン(青山)島へロケ地下見に行った際泊まった民宿の女主人がたまたま作っていたのを見て気に入り、小道具に採用!ところがその後、大人になってからのシーンをオーストリアで撮影する際には、チョンサン(青山)島まで行って作ってもらう時間がなく、別のデザイナーに作ってもらったものを持っていったそうです。子供のウニョンと大人のウニョンで、テイストがちょっと変わってきたのかな?と思いきや、別の人の作品だったんですね!
●オレンジジュースの謎!?
前から韓国ドラマを見ながら疑問に思っていたのが、会議シーンに必ず出てくるオレンジジュース!今回もグリーン・ミュージックでの会議シーンで、オレンジジュースが登場しているのに気づきましたか?実は「オールイン」でも「美しき日々」でも、なぜか会議の飲み物はオレンジジュース。日本だとコーヒーやお茶が定番ですよね。「コーヒーよりオレンジジュースのほうが健康的なイメージだから」という説もありますが、とにかく、「ジュース好き」なお国柄であるのは間違いないようです。
先日、韓国へ出張に行った際、現地のコーディネーターさんが打ち合わせ先を訪問する前に「おみやげをもって行きましょう!」と、近くのお店に入って買って来たのが、オレンジジュース!最初はびっくりしましたが、どうやらビジネスの場でも手土産は「ジュース」が定番。そしてそれを受け取った側は冷蔵庫で冷やして次のお客さんが来たときに出す、とか。(つまり、私が出されたジュースは前のお客さんが持ってきたものらしい) ちなみに、病院でのお見舞いもジュースが一般的。それも入院している病人のため、というよりも、他の見舞い客にふるまってもらうためだそうです。今後、このドラマでも、病院にジュースを持っていくシーンが登場しますので、ご注目を~。
ドラマ好きは登場人物たちの心理を時に深読みし過ぎてしまう。あるいは見当違いの読みをしてしまう。
前回、僕はその見当違いをやってしまった(全部見終わっている人の中には、僕の文章を読んで吹き出した方もいることだろう…(^^;)。
第5話、湖の町でウニョンの作った貝殻細工を見て、彼女の消息を尋ねようと決心したチェハの思いは、彼女があのウニョンである、との強い確信(現実の彼女への関心も含めて。それもないと決断のリアリティーは乏しくなる)から始まっていたはずだった。何せ、トラウマの地、絶対行きたくない、と思っていた韓国行きをその一途で決めたくらいなのだから。
そうして、いろんな場所を尋ね歩き、チェハは彼女の家族が営む食堂にたどり着く。しかしそこには違う母親に見たことのない父親がいる。兄妹もいる。どうやら姓も違う。
あのウニョンではないのか?
しかし、ドラマ好きから見れば、それくらいのことであの状況くらいで、ウニョンがあのウニョンでないとの結論をくだすはずはなかった。チェハの心理も、どうやら違うみたいだな、いや、もう少し突っ込んで家族関係を調べてみるべきかな・・・くらいのものだろう、と僕は推察したのだった。
何せ彼は、ソウルの街を二人でさまよっていた子供の頃、今にも死にそうなウニョンを担ぎ込んだ病院を訪ね彼女の消息について食い下がり、家族関係以外見せられない、と突っ張る病院事務方の態度を、何時間も粘って折れさせたくらいだ(実際問題としては、一二年前ならともかく、十年以上も前のデーターを引っ張り出すのは楽でないでしょう。何人もの手をかけてカルテを探し引っ張り出すとなると、よほどに重要でない限り、家族の依頼でさえ(何だかんだ理由をつけて)取り合ってくれないのが現状でしょうね。病院事務方のヒューマニズムがあふれ出て、ドラマとしてはすごくいいですが)。
ウニョンの家族が経営する食堂にたどり着いたものの、注文した食べ物が届く前にチェハは店を飛び出していってしまう。第5話ではチェハとウニョンは、いやその前からずっとすれ違いが続く。つまり、ここでもチェハとウニョンはすれ違いってわけだった。
この時、チェハが店を飛び出していったのは、家族たちと楽しそうな生活を送っているウニョンと顔を合わせたくないからだ、と僕は思った。まさか、あのウニョンではない、と落胆して飛び出していったとは思わなかった。
しかし、どうも後者だったようである。
話のダメを押したのは、病院事務方の「手術で死んだことになっている」という報告だった。
ここに養父による話のでっち上げ(それなりの地位にある人間なら可能だろう)を僕は読み取った。チェハもそれを感じ取ったと思ったのだったが、ドラマ鑑賞者である僕と現在進行形の世界にいるチェハとを同じに考えたのはじつに甘い見立てだった。僕はスタッフのカメラや帽子が見えているのに、チェハは何ら作意のない世界にいるわけだから。
おかげで僕の思い描いた今後の展開は、自分を養ってくれた父親への恨み節炸裂の流れかと思ったのだった。とんでもなかった。今回の話の展開を見て、ありゃありゃ、と思った。
チェハはオーストリアに帰りたいなどと言い出している。ウニョンの作った貝殻細工を見てあのウニョンだと確信し、イナの申し入れた企画に乗る形で韓国までやってきたのに、それをみんな放り出してチェハはオーストリアに帰ろうと言い出している。同時的にあのウニョンに対する思いの深さを証明してもいるのだが、他人の事情などいっさい顧みない芸術家としてのわがままな部分をチェハは露呈した格好となった。
この後、チェハはウニョンとの思い出を吹っ切ったようである。これまでの自分をすべて清算し、イナとの関係も新しい出会いとして育てようとする。5話のラストのあの激しいピアノ演奏は、どうやらウニョンとの切ない記憶に別れを告げるものだったようだ。チェハとして通った小学校の校庭を狂おしく走ったのも過去を清算しようとしたものだったのだろう。
チェハとイナが新しい関係をスタートさせた頃、フィリップとウニョンも、フィリップの一方的な押しで交際が始まり出す。チェハとイナはチェハのコンサート活動やCD発売についてコンセプトの詰めに余念がない。とりわけイナは張り切っている。フィリップはウニョンの軽トラックでの売り場に押しかけ、小物の売上げを手伝う。フィリップのパフォーマンスで小物は飛ぶように売れ、ウニョンはそのお礼でフィリップとのデートに付き合う。ビーチボールでのバスケットボール。
双方カップルの微笑ましい場面が明るく描かれ、それがくりかわるたび、僕はため息をついた。その明るさは好きだし、楽しいのだが、まちぼうけを食わされている気分も同時に起こってくるからだ。ここが次の感動を大きくする、タメだな、タメだな、ちょっと長いな、そろそろ、どちらかが相手のことに気付くきっかけくらいほしいところだが、まだなのか、この後なのか、といった具合に見続けた。
ウニョンとの楽しい一日に満足したフィリップは、イナがチェハとフィリップのために用意した白い家にウニョンを連れてくる。彼女にプレゼントをあげるためだ。
ここがあのチェハがいることも感じ取っているウニョンは、中で待っていてくれとフィリップがすすめるのに外で待とうとするが、フィリップに押し切られてしまう。部屋にはチェハのピアノが置いてある。懐かしさに駆られ、ポロンポロンとピアノを弾くウニョン。ふと、下に落ち、中身が覗いている小箱を見つける。小箱を拾い上げた彼女は布にくるまれた物が何か見たい思いに駆られるが、ためらいつつ開き見ようとした時、フィリップがプレゼントを持ってやってくる(こういうじれったい演出は韓国ドラマのお家芸だな)。この後のシンデレラの靴みたいな場面も妙に長い。
外にはチェハとイナの姿もあるのだが、これがまた、帰る、帰らない、君に一曲プレゼントする、とかで足止めが続く。
ようやくフィリップがウニョンに靴をはかそうとした時、ピアノの上に置いていた小箱が下に落ちる。中がまたしても飛び出した。それを拾い上げたウニョンのところにチェハたちが現れる。チェハは怒声を発しながらウニョンのそばに詰め寄ってくる。・・・
「謎の小箱」の中身はどうなるのだろう? まさか、四人の前で日の目を見ることになるのか? そんなわけないよなあ・・・