雨の記号(rain symbol)

血圧と睡眠に苦しんだ4ヶ月(3)

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 それからの数日はほんとに苦しかった。血圧が低いのは朝だけ。車で40分かけて職場についたらもう血圧は上昇を始めている。
 念のためズボンのポケットには降圧薬が入っている。一日のうち、何度もポケットに手がいった。しかし、手にしても取り出すことは我慢した。
 朝から夕方まで血圧の高い日々が幾日も続いた。
 その間に今しがたやった行動をすっかり忘れてしまう現象が二度ほどあった。
 手元にあるはずのペットボトルのお茶がない。どこにいったか探し回っているうち冷蔵庫の中で見つけた。ファイルケースの鍵を見失ったこともあった。どっちも移動させた時の記憶が別の行動を挟んだため飛んでしまったのだった。
 
 この何日かの苦しさは忘れようとしても思い出せない→(昔、漫才で聞いて笑い転げた矛盾言語だ)。
 (あわてて付け加えるが、今はそれほどひどい物忘れ現象はない。年齢相応の物忘れを時々する程度だ。血圧が140くらいに下がって落ち着いてくれたせいかもしれない)
 

 その後、何日かして家族的な不幸も襲ってきたため、僕の体調は最悪になった。しかし、それでも血圧の薬を飲まなかった。ひたすら我慢した。
 兄弟の家に泊まった数日、睡眠薬を飲んで僕は寝た。兄弟の話によると先に寝た僕は毎晩ものすごいいびきをかいて寝ていたようである。
 むろん自分はそれを覚えていない。生きてはいるが死んだように眠っていたのだ。
 こういう自分も怖い、と僕は思った。しかし、これを飲まないと自分は寝ることも出来ない。
 自分は恐ろしい状況の中にある。いまさらながら僕はそれを思い知らされたのだった。
 自分が飲んでいる最後の一粒を見せると、一番下の妹は言った。
「ずいぶん、強い薬を飲んでいるね。これ、ハルシオンの入っているやつだよ。お兄ちゃん、眠れない、というのをよっぽど強くMさんに訴えたんじゃない?」
「強い睡眠障害に悩まされてる、睡眠がまるで取れない、とは言ったよ」
「ほら、だから処方してくれたんだよ。自分で決めつけないで、お医者さんの前では具体的なこといっぱいしゃべった方がいいんだよ。お医者さんはたくさんの患者を見てきている。情報を出せば出すほど先生は患者に見合った処方がしやすくなるんだから」
「なるほど・・・今度行った時はそうするよ。睡眠薬はもうこれしかないんだ。明日は千葉に帰る日だけどどうしようかなあ・・・Mさんとこ、確か明日はやってないもんな。病院勤務の方だろ。明日、どうしようかなあ・・・たぶん、また一睡も出来なくなる」
「だったら、私の持ってる薬あげようか? 私は病院に行くたび、よく処方されるけどあまり飲まない薬がある。デパスだけど、安定剤として評判のいい薬だよ。もちろん不眠にも効果があるとされてる。それ、飲んでみる? 飲むなら千葉に帰った後、すぐ届けてあげる」 
 
 翌日、僕は妹たちと共に東京に戻った。



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