韓国ドラマ(ガンバレクムスン)から(149)
シワンの横でソンランが言った。
「食事の用意して待っててくれたのね。まだ食べてないの?」
「はい。連絡がなかったもので。それなら――みんなおすみですよね」
「私たちは食べたわ。電話すればよかったのに。悪いわね」
「・・・お義父さま――何度も電話したんですよ」
ピルトはクムスンと目も合わさず部屋に向かう。
「フィソン、こっちよ」
フィソンの手を取ってジョンシムも続く。
「お義母さん」
クムスンが呼び止める。ジョンシムは足を止める。
「フィソンは私が着替えさせます」
「いいわよ」
「かまわないでいい」とピルト。「俺たちが面倒を見る」
「・・・」
「それとさっきも言ったが、早く家を探して――ここから出なさい」
「・・・お義母さん、フィソンは私が」
クムスンはフィソンを連れて行こうとする。
「何を言ってるのよ」
ジョンシムはフィソンの手を引っ張る。
「私に」
クムスンも引かない。フィソンを連れて行こうとする
ピルトが怒鳴った。
「何するんだ。手を離せ」
一瞬、クムスンは萎縮した。だが、引くわけにいかない。
「なぜですか? フィソンは私の息子なんですよ」
「フィソンはジョンワンの息子だ」
「いいえ、私の息子です――お二人には孫ですが、私が産んだ子です」
「・・・」
「なのに面倒を見るなと? どうして置いていくんです?」
「・・・」
「私を本当の娘のようだと――おっしゃったわ。そうですよね、お義母さん。でも、嘘だったんですね」
「・・・」
「私は本当に――本当の両親だと思って申し訳なかったのに――でもみんな、私の片思いだったんですね」
「・・・」
「怒ってるんだと思いました。今日の昼間――息子を置いて出ろと言われても、本心じゃないと思いました。でも本心だったんですね。本当にフィソンを――放棄させるつもりですね」
ピルトはクムスンを見た。
「繰り返して言ったのを冗談だとでも思ったのか? そんな風に考えたのか? それにお前――その態度は何だ? 結婚するから、もう何でもいいのか?」
「お義父さま・・・」
「何だ? 苗字を変えるだ?」
ピルトは背を返した。部屋に入りピシャッと戸を閉めた。
「分かったわね」とジョンシム。「早く家を探すの。母親に言えばいいわよね――フィソン、ママとお風呂に入ってらっしゃい」
ジョンシムはフィソンをクムスンに任せ部屋に入っていった。
クムスンはフィソンを抱きしめた。
「フィソン・・・フィソン・・・」
息子の名を呼びながら泣いた。
ジェヒを呼び出しヨンオクは言った。
「遅い時間に悪いわね。早く聞きたくて」
「そんなことはないです、お義母さん」
「・・・」
「これからはお義母さんと呼びます。いいですよね」
「私にそんな資格があるのか・・・話してください」
「まずは楽にお話してください」
「ありがとう。そうね、クムスンのことなの?」
「嫁ぎ先で子供を手放せと・・・フィソンを置いて行けというので――クムスンが困っています。想像もしなかったことです。血筋にこだわって子供を争うなんて・・・子供に母親は必要です」
「まさかと思ったけど・・・」
「すみません。腹が立ち、私の気分だけで言うなら――フィソンを連れて早く出てくるべきだと思います」
「でもそれは無理よ。フィソンの祖父母よ」
「はい。どうしたら・・・」
「まずは最善を尽くして説得してみないと」
「それなんです。どうやって説得します? そう思って――昼間に伺ったんです。戸籍の話をしたら逆効果でした」
「・・・」
「お義母さん・・・クムスンはまず出るべきでは?」
「そうね。私もそう思って家を探しているわ」
「ああ・・・はい・・・」
「本当にありがとう。心から感謝するわ。難しかっただろうに・・・私も夫も――できなかったから・・・どうやって感謝していいのか」
「・・・」
フィソンを抱いて寝かしつけ、おでこにキスする。部屋がノックされ、ソンランが食膳を運んでくる。
「寝たわね――夕食よ。お腹すいたでしょ?」
「ありがとうございます」
「ごめんね。あなたの味方をしたいけど、私もお二人の機嫌をうかがわないと・・・ウジュのことで何も言えない立場だわ」
「お義姉さんも・・・ウジュを放棄して出たんですか?」
「そうね・・・私には養育権も親権もなかったから――何も出来なかった」
「・・・」
「でもあなたは違う。フィソンの唯一の親だし――子供は親が育てるべきよ。母親が育てないと」
「そうですとも・・・お二人が本気なら――自分でフィソンを守ります。3年前に夫が死んで――私だけ残された時、お二人は――フィソンを産むなと言いました。でも――お腹の子を守りました。最後まで守ります。この子の母親だから」
そう言ってクムスンはご飯を口にかきこみだす。
そんなクムスンをソンランは笑みを浮かべながら眺めた。
ピルトたちの部屋でテワンが言った。
「父さん、母さん――弟嫁を嫁に出そう」
「いつ出さないと言ったの?」とジョンシム。
「フィソンと一緒にだよ。あの男もよさそうな人だし、5年間、子供を作らないのは簡単な決心じゃない」
「もういい。黙るんだ」
「フィソンを受け入れること自体だって違うよ。ウジュのことで兄さんはどうだった?」
「もうやめなさい。黙らないか」
「父さん――知ってますよね? 法的に何の権利もないことを」
ジョンシムはびっくりして顔を上げた。
「どういうこと?」
「親権はクムスンにある。明日にでもクムスンがフィソンと――出ていったらそれで終わりなんだよ。すべての親権はクムスンにあるんだ。父さんと母さんには何の権限もないんだよ」
ジョンシムは訊ね返した。
「それは本当なの? シワン、どうなの?」
「はい。親権は基本的に親にあるんだ。ジョンワンがいないので親権はクムスンさんに・・・」
「なぜ俺の話を信じない?」
ジョンシムはピルトを見た。
「あなたも知ってたの?」
ピルトは怒鳴った。
「それがどうした?」
「父さん、怒っても解決しないんだ。戸籍もなくなる時勢なのに」
「黙らないか」
「・・・」
「こいつは言わせておけば――お前は弟の唯一の血筋を人の家に渡したいのか? ジョンワンが残した唯一の証拠を――まったく知らない赤の他人の姓に変えて、他人の息子として育てたいのか?」
「・・・」
「ジョンワンはどうなる? お前の弟のジョンワンは」
クムスンは眠るフィソンをじっと見つめた。いくら考えてもフィソンと別れて暮らすことはかんがえられなかった。
ジョムスンもクムスンが心配で眠れない。
クムスンがフィソンを幼稚園に送っていった。
戻ってきたクムスンをジョンシムが呼んだ。家族はみんな円卓の前に揃っていた。
ジョンシムの横にクムスンは腰をおろした。
するとピルトから封筒が差し出される。
「受け取れ」
「これは・・・」
「5千万ウォンだ。叔母さんが返してきたお金だ」
「なぜこれを私に?」
「もともとお前にやったんだ。結婚にも費用がかかるし、部屋を借りるのにも必要となるだろう。俺たちも空手で送り出すことはできない。誠意だと思って受け取れ」
「・・・私たちの誠意なのよ。もらいなさい」とジョンシム。
クムスンは黙っている。
「それから――1週間でいいか? その前ならもっといいし、どうであれ1週間のうちにまずは家を探してみなさい」
「ではフィソンは?」
「何度言ったら分かる?」
「何度でなく――何百回言われても今回はお義父さまに従えません。フィソンと一緒にここから出ます。一歩も譲れません」
「結婚したいんでしょ? 出ないでどうするの?」
「お義母さん・・・」
「だからフィソンを任せ、結婚して幸せになるの。子供も産んで・・・」
「お義母さん・・・フィソンと離れて私は幸せになれません」
「どうしてよ? できないことはないわ。あなたの母親も――あなたを捨てて再婚したわ」
「母さん」とテワン。「言っていいことがあるだろ」
「いいえ。その通りだと思います。私は祖母と暮らしたわ。だからこそ母親が必要だと分かります。子供には母親が必要です。祖母が努力しても、母親にはなれません。母親が恋しくても母の懐が恋しくても、母親の料理を私も食べたくて友達と喧嘩したら――私も友達みたいに自分の味方の母親がほしくて・・・学校から帰ったら、1度でいいから母親が私を迎えてほしかった」
「・・・」
「お義母さん・・・お義父さま・・・フィソンの立場で考えれば――母親と離れるのは無理です。フィソンには私が必要なんです」
「・・・」
「お義母さん、ご存知ですよね? あの子は私がいないと不安で眠れません」
「最初は大変でも徐々に慣れてくるわよ。だから子供なのよ。1ヶ月間、会わなければ――フィソンはあなたの顔を忘れるわ」
クムスンは涙声になる。
「お義母さん・・・」
「だから結婚して幸せに暮らしてよ。他人の家でフィソンを育てるなんて・・・あなたもフィソンの立場を考えてあげないと」
「母さん」
「お前は黙ってろ」
ピルトはクムスンをちらと見る。
「もう話すことはない。お前が何と言おうとフィソンはやらん。だから諦めなさい。諦めて、お金を受け取って」
「いいえ――お義父さま・・・私も譲れません。今回だけはお二人に従えません。フィソンはダメです」
クムスンはきっぱり言い切った.
「それならどうする? 結婚を諦めるか? それなら仕方ない。ここで住まないと――結婚しないんだな?」
控え目のシワンもさすがに口に出す。
「と、父さん・・・」
後に続いてソンランが言った。
「お義父さま、それは少しひどいですよ」
「お前たちは黙ってろ」
「・・・」
「俺たちは――それならいいぞ。そうさ、母親と一緒にいるのが一番いい」
クムスンの目から涙が溢れ出す。
「そうしたいなら結婚しなくてもいい。ずっとここにいてフィソンを育てろ」
「・・・」
「な、結婚はせずに」
ジョンシムは悲痛な表情でピルトを見る。
「お義父さま・・・」クムスンは泣きだす。「お義父さま・・・どうして、そんなことを・・・」
「なぜだ? 結婚もして、俺たちからフィソンも奪い、自分だけ幸せになろうと?」
「・・・」
「フィソンを諦めるか結婚しないか――どちらか一方にしろ。フィソンは譲らない」
「お義父さま・・・」とソンラン。
「何だ?」
ピルトに睨み返されるとソンランはあとの言葉が出ない。
ピルトの威圧と威厳にシワンもテワンも、ジョンシムさえも押し黙った。
クムスンは下を向いて泣き続けた。
クムスンは悔しさと悲しさで部屋に泣き戻った。鏡を見て自分を励まし部屋を出た。
部屋に戻ったピルトをジョンシムはいさめる。
「”結婚するな”だなんて――あなた、少し言いすぎですよ」
「結論を出すのにわざと言った」
「それでクムスンが踏み切ったらどうするの?」
「踏み切る?」
「テワンによると私たちには何の権限もないのよ。もしも法律のことを持ち出されたら、私たちは何も言えないのよ」
「まさか・・・クムスンはそこまでは言わないよ」
「だけど、あまりにひどいことを言うし・・・お金も、あとで渡せばいいのに」
「あの親不孝が・・・」
「だけど、なぜ祖父母には何の権限もないの?」
ピルトは大きくため息をついた。
「シワンの卑怯者」
ソンランは言った。
「いつまで両親の前で二面性を隠すの? あなたもフィソンを手放せないの?」
「そんなことない」
「なら、なぜ黙っているの? さっきの状況でも――この家で唯一発言できる立場でしょ」
「あの状況で発言するのは――火に油を注ぐようなものだ。なぜ分からない?」
「弁明しないで。あなたも同じだと認めたらどう?」
「お前の問題は――いつも自分が正しいと思ってる。両親の立場もあるんだ」
「今、一番考慮すべきは誰だと? 幼いフィソンの立場よ。誰に育てられるのが一番いいのか――大人は自己欲を捨てて考えないと・・・子供はどんな時でも保護されるべきで、どんな場合でも親から離すべきじゃないわ」
スンジャの食事をサンドが運んでくる。
「私がやるわ」
「ダメだって。お前はそこに座ってろ。お腹の子を考えていつも気をつけないと」
スンジャはじっと座り、クマとジョムスンが食事をつくり、それをサンドが飯台まで運ぶ。今までとは逆のてんやわんやの光景だ。
「母さん、大変でしたね。クマもな――お前の料理の腕前ならもう嫁に出せるぞ」
「もちろんよ」とスンジャ。「クマは何でもできるわ。お義母さん、それでですね。以前からお聞きしたかったんですが・・・」
「何が言いたくてそんな甘い声を出すの?」
「あの・・・ジェヒなんですけど」
「ジェヒ? 何て言い方なの? ク君と言いなさい」
「ええ、ク君ですが――周りに未婚の医師の友達も多いのではないかしら?」
「まだ30歳だし、そりゃいるだろう」
「そうですよね。それで――ク君に友達をクマに紹介してもらえないかしら?」
「ママ」
クマがびっくりして抗議の声をあげる。
「なーに?」
「テワンさんがいるのをママも知ってるでしょ」
スンジャも声を荒げる。
「あなた、まだあの失業者と?」
「ママ、失業者とは何よ。最近は仕事も多いのよ」
「そんなに多くても・・・どうせスターの後ろで立ってる仕事ばかりでしょうが」
「そうじゃないって」
「そうだとしても・・・」
「うるさい!」とジョムスン。「朝から大声を出さないで」
「すみません」とサンド以下一同。
「こっちはクムスンが心配で眠れなかったというのに・・・」
「どうしたの、おばあちゃん・・・何かあったの?」
「フィソンを置いて嫁に行けって」とスンジャ。
「そんなのありえないわ。何の資格があって? クムスンが親なのよ」
「そうなのよ」とジョムスン。
「ほんとにありえない。テワンさんに文句を言うわ」
携帯が鳴った。クムスンは電話に出た。
「先生・・・」
「クムスン・・・声が変だぞ」
歩いていたクムスンは足を止めた。
「泣いてるの?」
「いいえ。泣いてないわ。どうして? 声が変ですか?」
ジェヒは歩き出す。
「ううん、大丈夫。どこ? ネットカフェ? そこで何を? ああ、そうか。俺? それが・・・誰かに会いに行くところだ。午後に時間はある?」
また足が止まる。
「院長? 母さんに会うと? 本当に? 母さんから電話が? 何時に? ああ、そうか・・・なぜ、電話したか知ってるの? そうか。会ったあとに必ず電話して。いいな? 必ず電話しろよ」
その足でジェヒはシワンの職場を訪ねた。
シワンはびっくりしてジェヒを迎えた。
「電話番号を知らないので勤務先の方に――失礼と思いながらも・・・お話があります」
「では、こちらに」
「いいえ。よろしければ少しお時間をいただけますか?」
「・・・」
キジョンがカートを押して歩く。そこにウンジュが品物を投げ込む。
「なぜこんなに?」
「持っていくのよ」
「ロンドンに? あっちにだってあるだろう?」
「先輩にあげるものよ。外国にいると何でも恋しくなるわ」
「なのに行くのか?」
「今さら何よ。ところでパパ。病院をクビに?」
「俺みたいな有能な医師がクビにか?」
「毎日、病院に行かないわ。私は荷物持ちがいて助かるけど、正直、クビになるか心配だわ」
「・・・」
「まだクビはダメよ。パパとママの年齢差もあるし、収入もなく家にいたら邪魔にされるわ」
「何?」
「それが現実よ。退職した夫は肩身が狭くなるの。だから頑張って働いてね。さぼってクビにならないで」
「・・・」
クムスンはミジャの前で緊張した。
「私はジュース。あなたも一緒でいい?」
「はい」
ウエイトレスは注文を取って下がった。
ミジャはクムスンを優しい目で見た。
「最近、どうしてた?」
「はい。元気にしてました」
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